第七十五話 学術集会
査問会が終わり、その後暫くは穏やかな日々が続いていた。いつものようにヴァイドと一緒に加護の検証や魔道具の開発、BPの作成に励み、時にはクラヴィスやカイン、ティア達とのおやつタイムを楽しむ、そして夜は時々ミリューと一緒に寝る。そんな幸せな毎日を過ごしていたところ、ポラリス学院の学術集会からの招待状が届いた。封を開けてみると差出人はエポロス学長だけど、よく読んでみると私を招待するように推薦したのはグリフィス王子らしい。
前回私が講義をしたのは薬学科と医学科だけだったけれど、今回の集会は全学科の教授から学生まで幅広い分野で沢山の研究発表が為されるそうだ。勿論私は招待される側なので特に用意することもなくただ見に来てくれればいいらしい。そういうことであれば私も興味があるし、ヴァイドも当然招待されていたということで一緒に行くことにした。
学術集会は三日に渡り開催されるそうで、学院は学院内外の人で溢れかえっていた。正面玄関へと続く通りの脇には沢山のポスター発表用の掲示板が建てられ、所狭しとポスターがびっしり貼られていた。パッと見た感じではこれらは学生の発表のようだけどなかなか斬新な目線で書かれているものも多く、私もヴァイドも思わず何度も立ち止まり、読み入ってしまった。レイナとミリューはそんな私達に少し呆れながらも適当な所で声をかけて先を促してくれる。
「ヴァイド様、そろそろ行かないと日が暮れちゃいますよ」
「ああいや、レイナ君。これはなかなか興味深い考察が書かれていてね……あの魔道具にあんな使い道があったとは……」
「まだあと二日ありますし、それは後回しにしましょう」
「ええ!?レイナ君、もう少しだけ、あと少しだけ読ませて貰えないかな」
「駄目です。さぁ行きましょう」
「リファ、もう少しで講義が始まる」
「うーん、この治療法はちょっと間違ってるかな……え?あっ!忘れてた!もうこんな時間だ、ごめんねミリュー、会場に急ごう」
「ん」
こんな感じでレイナとミリューに引っ張られる形でようやく学内に入った私達を真っ先に出迎えてくれたのは学長とグリフィス王子だった。
「おお、リファ君にヴァイド君、よく来てくれたね。4年に一度の学術集会だ、ぜひ楽しんでいってほしい」
「御招待ありがとうございます、エポロス学長。ここに来るまでのポスター発表だけでもとても興味深い内容ばかりでした。この後の口頭発表も非常に楽しみです」
「この学術集会はグランマミエの粋を極めた研究発表の場ですからね!魔道具開発の雄であるヴァイドさんと天神の巫女たるリファさんにとっても色々学ぶことは多いと思うのです」
「今回の招待にはグリフィス王子が学長に口添えして頂いたそうですね。薬師としても憧れの集会ですのでとても嬉しいです。ありがとうございます」
「僕も4年ぶりに参加するけど、学者としては興味の尽きないお祭りみたいなものだよね」
「今日はこれから医学科と魔術科の口頭発表があるんです。よければ一緒に聞きませんか?」
うーん、あまり王族の方と行動を共にしたくはないんだけど、口添えして貰ったわけだしここで断る訳にもいかないよね。
「あ、はい。王子さえ良ければ」
「ではこれから医学科の発表がありますので早速行きましょう!」
「……えっ!?あっ」
返事をした直後に嬉しそうな顔をしたグリフィスが私の右手を取り、先導し始める。突然手を取られて吃驚したけど、物凄く楽しそうにしてるから何となく文句も言い辛く、されるがままに付いていく。レイナとミリューが繋いでる私達の手を見て唸ってるけど、多分彼は研究発表が楽しみすぎて浮かれてるだけだから気にしなくてもいいよ。そんな感じで二人には手を振っておいたけど、渋い顔してる所を見ると納得していないような気がする。相手は王族だからね、下手に手出しちゃだめだよ!
そんなこんなでまず最初の医学科の口頭発表が開かれる会場に到着する。ここでようやくグリフィスが手を放してくれたのでミリュー達の表情が和らいだ。私もほっとしたのでプログラムを確認すると、この会場でこれから4つの発表が行われるみたいだ。グリフィス、私、ヴァイド、レイナにミリューの5人が並んで座り、最初の発表が始まるのを待つことにした。何故私の隣にグリフィスが座っているのかはあまり考えないことにした。手を引いて連れてきた関係上そうなったんでしょう、きっと。
ちなみに私が学生の時はこの学術集会は参加していない。4年に一度と言っていたから多分学院に在籍していた時はタイミング悪く開催されなかったんだろうね。色々学ぶことも多そうだし、今日から三日間楽しみたいな。
これから数話程度豆知識的なお話を挟んだ後は30話程度で王都編の終わりと共に完結予定です。
予定より早い完結になりますが宜しくお願いします。




