19話4日目電話回
楽人「もしもし、駿? どうしたの?」
駿「ごめん……寝てた?」
楽人「いや、子供か! まだ9時だぞ」
駿「そっか」
楽人「……」
駿「……」
楽人「どうしたの?」
駿「電話じゃないと長くなりそうで……」
楽人「うん」
駿「今日さ……親父に病院に連れて行かれたんだ」
楽人「!? あの先生の病院?」
駿「うん……あのさぁ……オレどうしたらいいかわからなくなって……」
楽人「えっと……」
駿「オレ、早馬駿なんだよ?」
楽人「いや、わかるよ! わかるって!」
駿「それ、どうやって証明するの?」
楽人「え……?」
駿「オレ、恥ずかしさとコワさで病院から逃げ出したくなったよぉ!」
楽人「あの先生コワイもんな」
駿「違うんだ。先生もコワイけど……診察券……」
楽人「……受付か?」
駿「うん、早馬駿が早馬駿を証明できない。どんどん人が集まってきてさ。泣きそうになっちゃった」
楽人「早馬、泣き虫になったもんな」
駿「か、からかうなよぉ!」
楽人「ごめんごめん」
駿「ただ、北条先生……あのコワイ先生な。あの先生は『由々しき問題だ』って診察してくれたんだ」
楽人「どうだった?」
駿「血液検査してなかったのを悔やんでたよ」
楽人「そっか……」
駿「……すっげー色々調べられた」
楽人「どこを!?」
駿「色々だよ」
楽人「だからどこを!?」
駿「うっさいなー」
楽人「だって気になるじゃん! 早馬のってどんな形なんだ?」
駿「な、なな、なんだよ、それ! もう切るよ!」
楽人「わかった」
駿「わかるなよぉ!」
楽人「あははっ」
駿「もぅ!」
楽人「ははっ」
駿「……親父、感染症のセンターにも電話したんだ」
楽人「感染症?」
駿「うん、『息子が美少女になりまして……はい、美少女です』って言って電話切られてた」
楽人「あはははっ」
駿「ははっ、笑いごとじゃないんだけどね……」
楽人「うつるってこと?」
駿「可能性があるって話」
楽人「でも、そしたら明日――」
駿「明日は行くよ。オレが神社へ行くって言っても、親父は止めなかったしね。北条先生も経過観察だって」
楽人「ふ~ん……」
駿「けど、不安でしょうがないんだ。病院はそもそも『オレが早馬駿だ』っていう証明すらできてない。そんな、お、女の子をだよ? 見ず知らずの子を感染症の疑いがあるからって、入院させ、閉じ込めることができる?」
楽人「できないな」
駿「結局、感染症の疑いがあってもなくても、何もできやしないんだ……親父もそれがわかったから外に出ていい、って言ったんだと思う。何一つ状況は良くなってないんだよ」
楽人「まっ、でも、困った時の神頼みって言うしさ。神様に頼めば何か変わるかもしれないな」
駿「……どうだろう? 祈っても結局、願いは届かなかったじゃん」
楽人「でも、気晴らしにはなるでしょ?」
駿「他人事だよね……」
楽人「……」
駿「……」
楽人「……」
駿「ごめん、言い過ぎた。黙らないでよぉ!」
楽人「いや……明日、神社行かない方がいいかな?」
駿「い、行くよ!」
楽人「未海ちゃんにはなんて言う?」
駿「早馬駿の……姉……とか?」
楽人「名前は?」
駿「早馬……駿子?」
楽人「早馬秋晴」
駿「アキハ?」
楽人「うん。春夏秋冬の秋に晴れって書いて秋晴。秋晴れの秋晴。まだ紅葉の季節じゃないけど、紅葉がすっごく好きな子で、神社で紅葉が見られるか知りたくて一緒についてくる、って設定でいこう」
駿「おまえ、すごいな」
楽人「『美少女&美少女』のキャラなんだけどね」
駿「ちょっと待って。メモる」
楽人「真面目だな」
駿「うっさいなー、いいでしょ別に。……よしっと」
駿「ところで、学校どうだった?」
楽人「……ヤバい」
駿「ヤバい?」
楽人「教室入ったら、いきなり先生に『あえいうえおあお』って言いなさいって言われた」
駿「? なにそれ?」
楽人「佐藤と鈴木だけじゃなかったんだ。高橋と田中、あと綾野も声がおかしいし……『ふぁえ!?』ってた」
駿「えぇーっ!」
楽人「そういや、早馬って『ふぁえ!?』らなくなったな」
駿「そうなんだよぉー。この姿になってから『ふぁえ!?』ってないんだ。ってか、『ふぁえ!?』ってなんだよなぁ、もう。ははっ」
駿「乙守ん家はどうなの? 親父さん、どうなってる?」
楽人「母さんが可愛らしい服をたくさん買ってきた」
駿「……おまえん家おかしいよね」
楽人「母さんがおかしいだけだよ」
駿「乙守も十分おかしいよ?」
楽人「うん?」
駿「親父さん心配じゃないの?」
楽人「『身体が……少し……変わった……だけだ』って言ってたし」
駿「マジか……乙守ん家の家族おかしい」
楽人「おいおい、勝手におかしい家族扱いするなよ」
楽人「……え?」
駿「ん?」
楽人「いや、こっちの話。もうお風呂入らないと。風凛に怒られた」
駿「ああ、ごめん。長話しちゃったね」
楽人「じゃあ、明日」
駿「うん、じゃあね」
楽人「あっ!」
駿「なに?」
楽人「何かあったらまた電話して」
駿「……ありがとう」
楽人「じゃ」




