倒すべき相手と守るべき者Ⅵ
「なにが言いたい……」
「足手まといさえなければ、カイト君は命を賭けずに、全てを得られる。違うかな?」
静まりかえる謁見の間にて、俺は一歩、また一歩とフォルティス王へと近づいていく。
「どんなに頼んでも、僕はこのままだよ。なにせ、カイト君は僕のお気に入りなんだから。くだらない人間の為に死んで欲しくない」
ニオがくだらない人間。
俺はそのままフォルティス王の胸倉を掴み、玉座から引きずり落として、地面に叩きつけた。
「ニオがくだらない人間だって? あの子は今を必死に生きているんだ! どんな時だって明るくて、守りたいと思わせてくれる」
「ただの足手まといに何でそこまで熱くなるのかな」
「誰かの為に戦った事のないお前には分からない! 分かるはずがないッ!」
「うーん……カイト君の実力は評価しているけど、こういうところは少し面倒臭いかな」
「俺は評価なんてして欲しくない」
このままではいつものように、なにも変えられずに終わる。
「……なら俺は、この国を抜ける」
「異世界人の君が、外で暮らしていけるかな」
「火の国に亡命するよ。向こうには師匠も、ミネアもいる。それ俺は、向こうの国での身分が保障されているんだ」
俺はそれをいっさい疑わず、大声で自信満々にいってやった。
交渉材料としては弱いが、こちらには手札があるのだと言ってみせるだけでいい。
買い手市場では一方的に条件を悪くさせられるだけ、だからこそここは売り手市場に持っていき、こちらのペースにする必要があった。
「へぇ、それは面白くないね」
「俺はどっちでもいいと思っている。闇の国は全ての国に敵対するんだから、どこの国からでも攻め入れるからね」
フォルティス王はここで初めて、俺を睨みつけてくる。
「仕方ないね、カイト君には水の国の最高権力を与えよう。軍事命令件の途中介入くらいなら認めるよ」
大元帥や元帥レベルが提示額という事か。
だが、俺は初めから狙っていない物を拾う気はない。
「それに追加でニオの助命、生活の保障、俺の独自行動を許可、それらを通してもらおうかな」
「だいぶ無理を言うね。それが通るとで思うのかい?」
「なら火の国に飛ぼうかな。あっちは戦力がこっちほど確立されていないから、各個自由に戦闘できるんだよ。それに、ただ一人の女の子を養うくらいは容易にやってくれる」
無理を無理だと分かった上で、俺は交渉のテーブルからは降りなかった。
日本に戻って漫画を読み、このような交渉方法が乗っていたからこそ出来ているが、もし知識がなければ最初に詰みにされていたに違いない。
「独自行動も認めよう、それで十分な譲歩点だね」
「俺はミネア、火の国の姫から直々にスカウトを受け、一度蹴っている。その上でよおく考えた方がいいと思うけどね」
後一歩、そう確信した時点で俺は締めに入った。
「傲りはないよ。俺がこの国で最高の戦力だという事をしっかりと考えてから、返答を出して欲しい」
「まいったね、カイト君はもう少し頭のいい奴だと思っていたよ」
「これでも最上級に賢くなったつもりだけど」
三回程手を打つと、フォルティス王は立ち上がり、俺の耳元で囁く。
「じゃあ、それで呑もう。カイト君を手放したくはないからね」




