悪の組織Ⅳ
前日は重複内容をUPしていたので、振替配信とさせていただきます。
お昼に城下町を散策していると、件の場所に呼び出したおばさんが歩いていた。
「あっ、おーい! 俺だよ俺」
大きめな声で読んでみたところ、おばさんは青ざめたような顔でこちらに近づいてくる。
「な、なんでしょうか」
「えっ、いや……この前、結構待っていたけど来なくて」
「ほ、報告を間違えたみたいです。不審者が出るので、良く出没する場所をお教えしたのですが――発見できましたか?」
遭遇し、その上で逃がしたなど言いづらい。
「会ったけど、退けるのが限界だったね」
「そうですか。では、改めて冒険者ギルドに――」
「この件、俺に任せてほしい。今度は絶対に倒すからさ」
それからしばらく話したが、おばさんは以前のような活気を見せず、終始連絡事項をッ伝えるような態度だった。
「情報ありがとう。おばさんも襲われないように気を付けてね」
「は、はい。気をつけます……」
去っておくおばさんから目線を外すと、俺は改めて考えだす。
情報によると夜にしか出現せず、裏路地のような闇に紛れているとの事。
「この情報じゃ、さすがに見つけ切らないかな」
シアンを頼ろうとも思ったが、おそらく今は城内警備申請でそれどころではないはずだ。
翌日の夕方頃、配置されている兵士の数が増えた事で、俺の警告は無事に聞き届けられたのだと理解する。
その上でシアンの部屋へ訪れ、事件についての助言を頼もうとした。
「入るよ」
「どうぞ」
気の弱そうな敬語を聞き、俺はなぜか安心感を覚える。やはり、この世界で一番最初に出会っただけあり、俺の心の寄り処でもあるのだろう。
扉を開けて入ると、そこにはシアン一人だけが眠そうな顔でベッドに座っていた。
「起しちゃったかな」
「いえ、まだ寝ていませんよ。ちょっとだけ眠かっただけです」
うつらうつらするシアンの愛らしさはいつも以上に際立っている。この場では彼女の頭脳を頼りにしているが、やはりこういう愛玩動物的な癒しも欲しくなってしまうのだ。
「は、はい」
「えっ? どうしたの?」
「あっこれは……なんでもありません」
もしかして、ではなくシアンは夢の世界に飛び立ちつつあるのではないか。
だとすれば、その眠りのせいで聞こえない声に反応したのかもしれない。
「また今度にするね」
「あっ、大丈夫ですよ。言ってください」
頑張るシアンに感極まり、一度は隠そうとした情報を伝えた。
「不審者は夜、それも裏路地に現れるらしいんだ。どこに来るかは予測できるかな」
「あ、はい。できますよ。できますよ」
どうも口調がおかしい。やはり寝不足なのだろうか。
「本当に大丈夫?」
「だ、だいじょうぶれす……」
そう言い、シアンは倒れた。
咄嗟に掛け寄り、額同士を合わせて見るが、熱などはない。単純な睡眠不足だけと思われるが、この年の女の子がそうなってしまうのはかなりまずい気がするのだ。
机の上に置かれていたお菓子が完食されている辺り、満腹も相なって眠くなってしまったのだろうか。
ベッドの上に置かれていた毛布をシアンに掛けると、俺は深呼吸をしてから部屋出る。
今回の戦い、もう一度運否天賦の賭けをしなくてはならない。今度は狂魂槌を使いこなせてはいるが、戦うフィールドが不利なだけに条件はさほど変わらないだろう。
俺の脳味噌を全速力で回転させ、解決策を考える。言うまでもないが、そう簡単に見つかるわけではなかった。
そうこうしている間に空は藍色へと変わりゆき、俺は城下町へと出陣する。




