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酔仙楼詩話  作者: 吉野川泥舟
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むすび

 さて、お聴きになって下さった皆さま、今宵のお話はいかがでしたでしょうか。まさに人生いろいろ、山あり谷ありといったところでございますが、帰るべき場所があるのはそれだけで幸せなことだと言えましょう。


 やはり人は生きてこそ。生きてこそ、得られるものがたくさんございます。例えば人と人との繋がりが挙げられましょう。これを疎かにしてはいけません。子柳も最後はそれによって救われるのですから。


 え? それは確かにそうだが、いい感じにまとめる前に、説明して欲しいことがある? はい、何でございましょう。


 仙人の存在ですか? ふむ、現実には仙人など存在しない、よって仙人専用とかいうあの妙な言葉も根拠がない、とそう仰るわけでございますな。


 さて、それはどうでありましょう。ご自身の目で、実際に目の当たりにすれば、否応なく信じるほかはないのでしょうが……あいにくなことに、この私には仙人の知り合いはおりませんので、ご紹介できないのが残念で仕方がありません。


 ただ仙人の存在につきましては、古今の書物に膨大な記録がございますので、嘘偽りだと言い切れるものでもないでしょう。


 そうですな、仙人専用だという言葉につきましては……不老長生の仙人は、摩訶不思議な仙術を行使する存在です。きっと、時空を超え、過去や未来、果てはどんな外国へでも遊びに行くことが出来るのでしょう。そういった旅路の中で、身につけたのやもしれません。それに、今回ご紹介しましたのは文学史上に燦然と輝く大詩人たちのお話、となれば彼女たちがあらゆる言葉に対して鋭敏であり、かつその語彙力も膨大であろうことは想像するに難くないと言えましょう。


 こっそりお教えいたしますが、どうにもあの「太白遺風」の扁額が彼女たちとの縁を結ぶ契機になっておるようす。ですので、もし彼女たちと一献傾けたいとお思いならば、あの扁額を掲げた酒楼をお探しになるのがよいかと。はい、詳しい事情までは存じませんが、ええ、ここだけのお話ということでお願いいたします。


 それではそろそろお開きの時間でございます。お決まりではありますが、閉幕にも詩がつきものですので、もうしばらくお付き合い頂けましたら幸いに存じます。



 実に羨ましきは李太白

 飲めばたちまち三百杯

 酔いに任せて筆執れば

 言葉すらすら綾となる

 詩聖杜甫は苦言を呈し

 詩仏王維は笑顔を送る

 ただ哀しきは流謫の身

 天帝の裁きに逆らえぬ

 今は虚しき酒仙の誉れ

 幼い姿で飲酒はできぬ

 古今東西異郷といえど

 扁額に縁を結び現れる

 隔たる時があろうとも

 詩友を連れて降臨せん

 太白の風を遺せし華筵はなむしろ

 塞いだ心をくつろげん

                               (おしまい)


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