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ドラゴンライフ!!~異世界で龍になりました~  作者: 花旅烏兎
一章 異世界で
12/42

拾弐 獣化

追記

魔法について少し変更しました

 

「ヤバイ急がなきゃ!」


 私はユダの元へ急いでいた。

 夕刻までと言われていたのに破るなんて私としては笑えない。



「…何あれ」


 もうあと少しで着くというところで、ユダの家のある所から煙が上がっていた。焦げた匂いもする。何かあったということは一瞬でわかった。

 一体何があったというのだ。

 急いでユダの家に飛び降りると、ユダの家は半壊しており、焦げ臭いにおいと血の匂いが混じっていた。

 正直言って気持ちが悪い。


「一体何が…」


「おい!そこの魔物!一体何をしている!!」


「!!?」


 家の反対側から、人間族(ヒューマン)がぞろぞろ出てきた。皆武装しており、鎧の中心に何かの紋章が付いていた。

 まさかこいつら、コボルトが言っていた武装兵?

 すると、一人の人間族(ヒューマン)が在らぬことを言ってきた。


「貴様か!貴様が陛下を傷つけたのか!!」

「陛下?誰だそれは!それよりも、ここの住人はどうした!ユダはどこにいる!」

「なっ、貴様!不敬だぞ!貴様ごときが呼び捨てにして言い方ではない!!」

「はぁ!?」


 それはまるで、ユダがその陛下とかいうやつみたいじゃないか。


「ここにいたのは、我が国から長期の休暇のためにいらっしゃった国王陛下とその護衛しか居ないはずだ!」

「……その国王陛下の名前ってのを聞いてもいいか」

「我が国王陛下は、アルマニウスの中で最も栄える国。共生国家レフォルト王国国王ユダ・アニマス・レフォルト陛下だ!」


 ユダはただの貴族ではない……王族だったのか。

 いや、それよりも。


「傷つけたって、どういうことだ。チルティーがいたはずだろう」

「そのチルティー様までもが負傷しておられるのだ!」

「!!」


 チルティーが負傷しただって!?

 ユダはチルティーのことめちゃくちゃ強いって言っていたじゃないか!


「いや、でも待て。私はそんなことはしていない。さっきまでコボルトの巣にいたから、二人を傷つけることなんてできない」

「嘘をつくな!陛下が嘘を言うわけがないだろう!」

「は?嘘?」

「陛下は片言であったが竜と言っていた!ここいらには貴様以外に竜がいるとは思えない!」

「ちょっ、私は竜じゃなくて」

「よって、貴様を殺す!一国の国王に仇なしたこと、後悔するがいい!!」


 こいつら……


「話を聞けえぇぇぇ!!」

「!!!」


 突然の大声に人間族(ヒューマン)達は驚いて止まった。


「さっきから言いたい放題言いやがって!私がそんなことした証拠があるのか!?ないだろう!第一、私はユダやチルティーと少しの間だが共に同じ釜の飯を食った仲だ!傷つける理由がない!それに私はユダが王であることなんて知らなかった!」


 私が思ったことを全て吐き出すと、一番前にいるやつがフルフルと肩を震わせていた。


「……さっきから陛下のことを呼び捨てにしてぇ……!無礼者があぁぁぁぁっ!!」


 …こいつ、話聞かないタイプだ。一番面倒くさいやつだ。

 こういったやつは一度ビシッと黙らせておかないと。

 コボルトキングにやったみたいに……。


「……無礼者はどっちだ、馬鹿者め」

「っ!!」


 うるさいやつがビクッと体を震わせて止まった。周りの人間族(ヒューマン)たちも一緒に止まった。


{能力(スキル)〈威圧〉を獲得しました}

{能力(スキル)〈齎す恐怖〉を獲得しました}


 〈威圧〉はわかるけど〈齎す恐怖〉が納得いかん。まぁいいけど。


「確かめもせず現れたものを疑い、更に目の前の証拠を見逃すなど王に仕える騎士として恥ずかしくはないのか?感情的なのはいいが、それで周りが見えなくなっては意味が無い。優秀な部下もそれで命の危機に晒されることにもなり、失えばそれはただの損だ。宝の持ち腐れも甚だしい」

「な、なんだと!?」

「ホレそこ」


 私は人間族(ヒューマン)の足元にある大きな足跡を指さした。人間族(ヒューマン)が踏みそうになっていたので風で後ろに戻す。


「その足跡、気づかなかったか?よく見てみろ、そして比べろ、私の足とどう見ても違うだろう」


 と言っているが、気づいたのは今さっきである。

 私は人間族(ヒューマン)の前に足跡をつけた。



「私の足は細く爪が食い込む形だが、この足跡は丸く足全体がつく形だ」

「………」

「故に、私ではない他のものの犯行だ」


 まぁ、その犯人?が居なきゃ私の無実は証明できない。

 テル、ここで起きたことがわかるような能力(スキル)あったよね。


[〈風の絶対王者〉の中にある〈風便り〉を推奨します。]


 あぁ、なんかよくわかんなかったアレね。

 確かに使えそう。


 〈風の絶対王者〉─〈風便り〉


 能力(スキル)を発動させた瞬間、頭の中にたくさんの情報が流れてきた。この場所で起きたことが、全て情報として風の中から流れてきているのである。

 古代から今に至るまで全てが流れてきている訳だが、今必要なのは私が戻る前に起きたことだ。古代の情報は今必要ではない。


 夕方前に起きたことを教えてくれ


 そう願うと、一つの赤黒い情報が頭の中に流れた。

 それは、夕刻前のユダたちに起きた出来事だった。




 ──────────




 ヴェニウェルが出てから、ユダは家の中で読書などをしていた。

 正午過ぎに久しぶりに一人で昼食を食べた。最近はヴェニウェルと二人で食べていたからだ。

 もうそろそろ日が沈み始める頃に、チルティーは帰ってきた。


「ユダーたっだいまーにゃー」

「おお、チルティー帰ったか」

「見てにゃ、今日はオーガを狩ったにゃ」

「オーガということは、かなり奥まで潜ったんじゃないのか?」

「そうにゃー、嵐風龍様にあたしの凄さを見てもらいたかったのにゃ」

「そうか、だがなチルティー、今ここに嵐風龍は居ないんだ」

「えぇ!?何でにゃ!?」

「森散策だと言っていた」

「むー。この前よりかは上手く殺れていたのににゃ」


 見ると、オーガの首を切断したようだった。無駄に肉が削がれておらず、綺麗な太刀筋だったんだろう。


「確かに、前よりは腕を上げたな。最初はかなり手荒かったもんな」

「それはもう前の話にゃー!……っ!?」


 チルティーが緊迫した表情で後ろを振り返った。ユダも何かを感じ取ったらしく、何か驚いたようだった。


「何、この魔力」

「強くて黒いな」

「……ユダ様はここにいてください、私が見てきます」


 そう言うと、チルティーは腕につけていたリングを外した。すると体はみるみると大きくなり、子供サイズだったチルティーの体は大人の女性のそれとなんら変わりのない大きさにまでになった。


「この姿も久しぶりですね。しっかりと慣らさなければ。もう一度言いますが、この家から出ないようお願いします、絶対にここにいてください」

「わかった、くれぐれも無理はしないように」

「了解致しました」


 扉を開けてから、チルティーはぼそっと言った。


「あなたを守るのに、無理をしないわけがないでしょう」


 チルティーは強大な魔力がした方に向かって歩き出した。そこまで距離は離れてはいないが、あまり家に近づかれると困るので、少し早歩きで行った。すると、それは突然やってきた。

 水弾だった。


「っ!!」


 後ろにあった岩を破壊して水は弾けた。すんでのところで躱したが、もしこれが正面にきていたら家が危なかったかもしれない。


「ちっ、当∂∃な¥かっ⊥か」

「誰だ!」


 この声、男っぽいけど人じゃない!所々聞こえない部分があるから、これは動物系の魔物!!


「ん?お*!こりゃ¥らし∃な!獣族(ビースター)#っ€か?しかд猫ちゃん。嵐¿]りゅ?はいな✿ったが、∃りゃツ♯てるねぇ!」


 木々の中からの声が、少しずつ近くなる。


「嵐風龍、Юな☾ったか?」

「っ!!」


 チルティーは体から溢れ出る汗を止められなかった。ゆっくりと歩いて現れたのは、ゼネヲアリゲイツというゼネヲルト洞窟にしか生息しないAランク魔物だった。

 ゼネヲアリゲイツは何体か狩ったことはあるけど、ここまで大きな個体に会ったことない…!!

 ゼネヲアリゲイツの通常の体長は六メートル。しかし、チルティーの前に現れたものは、十メートルはいくであろう大型個体だった。


「よく見└ば、た☾<猫じゃДいな。戦闘猫(ワーキャット)か?」

「……えぇ、そうですが何か?」

「こりАあ手厳*いな。モцねぇぜ、ねЮちゃんよ」

「結構です」


 だんだん耳が慣れてきた。

 このゼネヲアリゲイツの声も少しずつ聞き取れる。

 問題は、こんなにも大きな個体を相手取ることだわ。

 万が一勝てなかったとして、そんなことが起きればユダ様の命に関わるかもしれない。

 それは、王国騎士団王直轄部隊の者として絶対にあってはいけない。


「なあ、もう一度聞⊂が、嵐風龍知ら∂ぇか?」

「知りませんよ。第一、私みたいな獣族(ビースター)が会えると思っているの?」


 そうチルティーが言うと、プッとゼネヲアリゲイツは大笑いして言った。


「おпおい!冗談抜きで頼¥ぜ!」

「は?何を言って」

「お前が嵐風龍と関係を持っているのはわかってんだよ。魔力の残滓とにおいがカビみてえーにこびれついてんだからな。俺はそこらのヤツらとはワケが違うんだ。一緒にすんじゃねぇよ」

「………」


 気づかれていた…!?

 ……確か五年くらいに、こいつに似た盗賊がいたな。

 相手が欲しい情報を持っていたら、半殺しにして情報を聞き出して無惨に殺すクソ野郎が。

 もしかするとこいつも…。


「教えろ、そいつは今どこにいる」

「拒否したら?」

「力ずくで聞くまでだ」


 こいつも同じか。


「俺は強いぜ?中途半端な力で挑めば、俺に勝つことはできねぇよ」

「ご忠告ありがたいですが結構です。私にもそれなりの力がありますし、たとえ勝ち目が無くとも挑んでいますからご心配なく」

「そうかぁ、残念だなぁ。〈ウォーターボム〉」

「くっ!」


 突然の攻撃に反応はできたが、先ほどとは全く違うスピード、しかも速くなっていることにチルティーは驚いていた。なぜなら、能力(スキル)や魔法はこんな短時間で上達するものではないからだ。

 例外は存在するが。ヴェニウェルの〈成長補正〉がそれだ。(彼女の場合(Ex)なので本来の十数倍の効果がある)

 考えられるなら、さっきのは手加減をしていたということになる。


 チルティーは懐の道具袋(アイテムポーチ)から双剣を作り出すと、技能(アビリティ)を使う攻撃態勢に入った。


 チルティーの職業は、双剣騎士(ダブルナイト)という双剣を扱う騎士だ。騎士(ナイト)系職業の中でも上位職で、数も少ないとされている希少職業である。


「【身体強化(ビルドアップ)】!」


 無属性強化魔法を得意とするチルティーは、自身に強化魔法をかけた。それによりチルティーの身体能力は飛躍的に向上し、熟練の者でも見切れないほどにまで上がっていた。


技能(アビリティ)双剣術『百花繚乱』!」


 魔法と技能(アビリティ)の重ね攻撃。それは何度もチルティーが敵を屠ってきたやり方だった。

 しかし、相手が悪かった。

 ガキンッと金属音にも似た音がし、刀が弾き返されてしまったのだ。

 か、硬い!魔法もかけて、しかも『百花繚乱』は私の持つ技能(アビリティ)の中でも上位のやつなのに!


「くくくっ納得いかないって顔してんなぁ」

「……」

「だから言っただろう?俺はそこらの奴らとは違う。俺は強いってな」


 他よりも大きな個体、更にこの強さ……。

 もしかして。


「名前、聞いてもいいですか?」

「……そうだな、特別に答えてやろう。俺の名はリーボンノ。ゼネヲアリゲイツのリーボンノだ」


 自慢気に、胸を張ってリーボンノは言った。まるで、自分は特別なのだということを知らしめるように。

 やはりネームドだったか。

 そうなると。

 チルティーは肩から力を抜き、まっすぐと前を見た。


「やはり本気を出すしかないですね。……あなたのこと、狩らせていただきます」

「本気ということは、さっきまでのは本気じゃなかったってことか。本気だったらどうなってるんだ?え?狩らせていただきます?格下が何ほざいてんだよ。まぁ、どうせ勝てねぇだろうがよ。今思い出したんだが、猫の肉ってのは薄いし固くて美味くはねーが、戦闘猫(ワーキャット)の肉は筋肉質で美味いんだよ。負けたらしっかりと胃の中に収めてやるから、本気出して負けても黒歴史にはならねえぜ?俺がお前を食うんだからよ」


 ケラケラと笑い涎を垂らしながらリーボンノは言った。

 リーボンノは気づいてはいないが、チルティーはとても不機嫌だった。そもそもチルティーはリーボンノのようなキャラが一番苦手なのだ。日頃の鍛錬により、感情を表に出さないように隠す事ができるようになるまでは、その手の相手はとことん避けていたくらいに。

 そして、感情を隠すということは、相手に向ける感情を偽ることができるということだ。それは、心の中から溢れ出る殺気を隠すことも可能とした。


 時に感情とは、人を動かす最大の動力源にもなる。

 たとえどんなに弱くとも、一太刀を浴びせたこともない相手だとしても、もう相手に負けたくないという感情が爆発した時、いつもの自分では出せない力が出せるようになる。

 大切なものが壊された時、その壊した相手を滅さんとする心が自身を強くするのだ。

 それは、自身の本来の力といっても過言ではない。感情が、本来の力を出すためのリミッターを解除しているのだ。

 そしてチルティーは今、それを任意でやろうとしている。


「ここからは、本気でいかせていただきます」


 チルティーは道具袋(アイテムポーチ)に双剣をしまうと、四足歩行の体勢になった。


「我が身に降ろすは獣の姿。血濡れの魂に刻まれし災いと暴虐の限りをこの身に起こせ」


 その途端、チルティーの毛が逆立ち、体が徐々に大きくなっていった。

 それが収まると、チルティーの体は体長二メートル以上、高さを成人女性の平均百六十センチ(ルゼラヘイムの)を越す巨大な戦闘猫(ワーキャット)に変化していた。


 ここで猫と戦闘猫(ワーキャット)の違いについて説明しよう。

 猫とは、簡単に言って本当に普通の猫である。普通に愛玩用だったり野良だったりの猫である。品種は全く異なっているが。

 しかし、戦闘猫(ワーキャット)はその真逆の戦闘に特化した暴猫である。例えるなら、闘牛が近いかもしれない。闘牛も牛と牛を戦わせる競技、またその牛という。戦闘猫(ワーキャット)も、戦闘に特化した巨大な化け猫なのだ。化け猫と称したのは、獣族(ビースター)としての戦闘猫(ワーキャット)の、大昔に存在した先祖の純粋な戦闘猫(ワーキャット)が正にそれだったからだ。気性が荒く、目の前に現れる敵は全て血祭りにあげていたという。そのことから、周囲から化け猫として恐れられていたのだ。

 そして、戦闘猫(ワーキャット)は魔獣の類に属し、その中でも上位ランクに匹敵する力を持っている。

 つまり、戦闘猫(ワーキャット)は強いということだ。



「この姿は、私が獣化…つまり、戦闘猫(ワーキャット)の本来の姿だ」


 しなやかな体つきの赤茶色の毛に、虎に似た紫色の縞が入っている。前足をポキポキと鳴らしながら、チルティーは言った。


「もしこの姿で倒せなくても、追い払うくらいはできましょう。お互い肉食系なんですから、ここは純粋に肉弾戦はいかがでしょうか」

「この俺に肉弾戦か!お前、ますますいいな…、殺すのが勿体無い」


 リーボンノはわざとらしく残念そうに言う。だが、チルティーはずっとタイミングをはかっていた。

 少しでもタイミングがずれれば、リーボンノにダメージを与えられないと思ったからだ。


 そして、二匹の間に木の葉が落ちた瞬間が合図だった。


「ここにおわすは戦神 その名の元に 集え力よ 【闘争者よ、奮迅せよ(ファイターズクイック)】!」


 チルティーとリーボンノの体が、鈍い音を立ててぶつかり合った。そしてすぐに後ろに下がると、チルティーは自慢のスピードで高速移動を始め、その度に体当たりをした。動体視力を持たないリーボンノは目で追うことはできなかった。()()()


「クックックッ」

「?」

「まさか、こんだけか?スピードだけか?」

「まだ」

「俺は洞窟の中で生きてきたんだ!暗闇の中で生きてきたんだ!視覚に頼らずとも魔力感知だけでわかるってだよ!!」

「ぐふっ!」


 突っ込んできたチルティーを、リーボンノは自身の尾で叩き落とした。早い速度に強い力の衝撃が加えられたことで、ダメージは倍増していた。


「あっ…がはっ…!なっあっ…!?」

「これで気ぃ失ってくれれば良かったんだがなぁ」

「ま、だ……ユダ様を……!!」

「ん?ユダ?誰だそれ。嵐風龍じゃねえよな……。ユダってお前が守ろうとしてた小屋にいるやつか。そいつも嵐風龍知ってるだろうし、そいつに聞いてみるか」

「!!」


 だめだ、絶対に……それだけは!!

 ユダ様だけは絶対にだめだ!!


 “くれぐれも無理はしないように”


「………すみません」


 本当に無理はしないようにはできないようです。

 見えないユダにそう言うと、チルティーはゆっくりと立ち上がった。





 誰かを守りたいって心、大事ですよね。

 もし私がそんな状況になった時、身を挺して守れるでしょうか?

 いや、そもそもそんな状況普通に生活してたら起きないですね!

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