お嫁さんにしたい!
「そっか……」
「うん……ごめん」
翌日昼休み叶ちゃんと二人、校舎の中庭にあるベンチに来ていた。
持参したお弁当を食べながら、昨日の妹との話を包み隠さずに全部話した。
まあ、話題が出た時点で僕は何も隠せないんだけどね。
とりあえず、学校の帰りに一緒に帰り途中話したりお茶をするのは大丈夫だけど、あまり長い時間とか、妹に頼まれたり買い物をしなければいけない時は帰りの寄り道も出来ないかもと……そして暫くは休みの日も会えないと伝える。
「良いの、仕方ないもんね……あ、だったら私がご飯を作りに行くってのは?」
「え!」
「それよりも、私が妹さんの相手をした方が良いのかな?」
「いや、えっと……」
「そうよね、遊馬君料理上手だもんね、私の方が負けてるかも……妹さんもお兄ちゃんの手作り料理食べたくて言ったのかもね。いいな~~妹さん、私も遊馬君の手料理食べたい~~~~」
「あ、えっと……これ食べる?」
「良いの?!」
「あ、うん、昨日の残りも入ってるけど、どれでもどうぞ」
僕は作ってきたお弁当を見せながらそう言うと、叶えちゃんは僕に向かって口を大きく開けて言った。
「卵焼きがいい! あーーーーーーーん」
笑顔で口の中を僕に見せる叶ちゃん。虫歯一つ無い綺麗な歯、美しい歯並び、ピンクの舌……この娘は顔だけじゃなく、口の中迄美しいのかと思わされる。
「え! ええええ! じ、自分で取ってよ、恥ずかしいよ」
ボッチ御用達のベンチ、周りには木が生い茂っており、校舎からは見辛いが、渡り廊下からは丸見えなので、変な事は出来ないって……が、学校で変な事なんてしないよ! 変な事って何か聞かないで! 僕全部言っちゃうよ?
「え~~~~あーーーんしてえ、あーーーーん」
「叶えちゃんって……そんなキャラだった?」
「え~~私こんなだよ?」
「初めて見たときは、何か近寄りがたい感じがしたのに」
「ふーーーーん……ツンデレって言いたいの?」
「今はツンが無いよ~~~」
「好きな人の前ではとことん甘えちゃうの~~~~ごろにゃーーん」
「もう、じゃ、じゃあ、あーーん」
「あーーーーーーーーーん! おいしいいいいい!」
「本当?」
「うん! 遊馬君! 私のお嫁さんになって!」
「何でだよ~~」
「あはははははは」
屈託の無い笑顔を僕に見せる叶ちゃん、クラスでは絶対に見せない顔、僕にだけ見せてくれる顔、僕だけの物……
「叶ちゃん……好き」
「えへへへへ、私も~~~~」
「ああああ、また言っちゃった……」
「ううん、嬉しいからもっと言って」
「好き大好き……ううう」
「えへへへ、ありがと」
「もう、聞かないでぇ」
「うん、ごめんね、遊馬君には辛い事だもんね」
「う、うん、好きって言うのは全然いいんだ、でも言わされるのはやっぱり……少し辛い……」
トラウマを刺激されると、どうしてもあのシーンが甦る。血だらけの妹の姿が……
嘘をつこうとすると、妹のあの姿が甦る。身体が震える、心が締め付けられる。自分に……吐き気がする。
「ごめんね、でも今まで誰にも気付かれなかったの?」
「誰にもって、僕が何でも正直に言っちゃう事?」
「うん」
「妹と叶ちゃんだけだよ、知ってるのは」
「そっか、まあ、聞かれなければ言わないもんね、いきなり初対面で嘘つけないのか? なんて聞いてくるなんて変だもんね…………あ」
「叶ちゃんは聞いて来たけどね、変な人?」
「そ、それは……びっくりしたから……」
「うん、僕もびっくりした」
「あははは、そうだよね私凄く変な人だったね。そうか……でも今までバレなくて良かった、バレたら大変だもんね」
「そうなの?」
「え? だって、何でも言っちゃうって怖くない?」
「なんか慣れちゃって、でもそうだね、今みたいに言わされるのは辛いかもね~~~」
「ごめんってば~~~じゃあお返しに私の作ったソーセージ上げる~~」
「作ったって焼いただけでしょ」
「あーーーー! 酷い~~~焼くのだって料理なんだから~~遊馬君ってはっきり言うから意外に将来亭主関白になっちゃうのかな?」
「亭主関白って死語じゃないの? 別にそんな事無いと思うけど……」
「うーーん、私はやっぱり遊馬君はお嫁さんに欲しいな、可愛いし」
「またそう言う事を言うんだから、僕、叶ちゃんの事、嫌いになりそうだよぉ……」
「え~~~~そんな~~~~許して、ね? お願い~~」
僕に向かって手を合わせ可愛く懇願してくる。ううう、卑怯だよ可愛すぎるよ。
こういう時は、え~~~どうしようかな~~~とか言うのが良いんだろうけど、勿論僕はそう言う事が言えないので。
「可愛いから許す!」
「やった~~~あはははははは」
万歳をして喜ぶ叶ちゃん。本当に彼女と話すのは凄く楽しい……こんなに楽しかったんだ、会話って。
多分叶ちゃんもそう思ってるんだろう。僕達はそれぞれ違うトラウマを抱えている、でも中身は同じなんだ。
人を信用出来ない……僕達はお互い誰も信じられなかった。僕は自分さえ信じられなかった。
これは奇跡なんだ、僕と彼女は奇跡の組合せなんだ。
好きになる、今、僕は彼女の事がどんどん好きになっている。
でも、僕は自分が嫌いだ……このトラウマも嫌いだ。いつかは治したい……いつかはこの呪いから逃れたい。
でもその時彼女はどうなるんだろうか?
そうなった僕を彼女は、今のように……好きでいてくれるんだろうか?
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お陰さまでランキング上位に来ましたが、休み特需なのか10位以内が強すぎました。
目標の5位以内はやっぱりムリポ。゜(゜´Д`゜)゜。
でも頑張りますので、引き続き応援宜しくお願い致します。