第1話 レベル0だけど関係ない
評価などよろしくお願いします。
2026年7月7日の朝
東京都24区、星ヶ原区の星ヶ原高校の剣道場に、木刀を振る鋭い音と気合の入った声が響く。
「999!1000!!」
200cmの巨体が、風を切る様に前後に跳ねて動く。
彼だけが素振り用の太い木刀を3本纏めた木の塊を握り、軽々と振るう剣道部部長の梶原零は額の汗を拭い、手の保護用に貼ったテーピングを引きちぎり笑った。
「跳躍素振りやめ! みんなお疲れ! 今日も怪我なく、いい汗をかいたな!」
部員たちはいつもの様に「部長は化け物、今日も誰も一本も取れなかった」とぼやく。
彼の右目は真紅、左目は漆黒のオッドアイが光を受けて異様な存在感を放つ。
零の生まれつきのオッドアイは出会う人々を驚かせた。
——炎眼の零
剣道界ではそう恐れられた異名を持つ高校生日本一の優しく強い青年だ。
しかし、小学4年生の頃に味わったイジメの記憶は今でも胸の奥に小さな棘として残っていた。
「ふぅ〜今日は天気が良いなぁ。七夕は何か面白い事が起こる事でも願うかなぁ〜」
零はスポドリを飲み、そんな事を呟きながら窓から空を見上げていると願い通り異変が起こる。
【The World System has been activated.】
【Survive. Evolve.】
それはいきなり空を覆い尽くす様に、夥しく無数に現れたメッセージ。
零は驚きに咽せて自分の胸を叩き再度空を見上げた。
「なっ!? なんだこりゃあ? えーっとワールドシステム起動、生き残って進化しろ……?」
なんだ? 飛行機で文字書いたにしてはビッシリハッキリだぞ……?
彼は頭を抱えていると皆のスマホは一斉に震えなり始めた。
無論、零も例外ではなく起こりスマホを見ると黒い見知らぬアプリがあった。
————
Void Navigator
起動します。
【START】
————
他の部員たちも困惑している。
「んん?」 「ゲームか?」 「いや違うだろ」
恐る恐る全員が画面を触れた次の瞬間に白い光が溢れ、スマホの画面からホログラムの様に空間に画面が表示された。
「きゃー!? なにこれ? レベル?」
「レベルにスキルって何だ!? ……俺は8でスキル高速回復Lv1……?」
「俺は9だぞ……って、かじ先輩のレベルが……」
1人が零に指を刺すと全員の視線が釘刺しになる。
無理もない、何故なら……
——
【名前】 梶原零
【種族】人間
【レベル】0
【職業】 高校生 剣道部部長
【スキル】なし
【スキルポイント】豐「螻ア
【ユニークスキル】『O■er■■■w』
——
こりゃまた酷いモンで、文字化けに伏せ文字に更にオマケに衝撃のレベル0である。零もこれには苦笑い。
「いやー! ゲームみたいだし、レベル0ってことは伸び代しかないな!」
なんでだ……何故1でもなく0。俺の今までの努力はなんだったんだ。また俺は虐められるのか?
そんな目で俺を見ないでくれ。
笑顔の奥では不安だけが膨らんでいた、トラウマで腐食した心は完璧に治る事は無いのだ。
部員たちは呆れ、同情、侮蔑、人それぞれに部長の事を見たと零は感じた。
その中で2年生の山田は部長に向けて宣戦布告。
「俺のレベルは13! 恐らくこれは強さの指標になる、つまり今は全国一位よりも強い! やろうぜぇ? 勿論、逃げないよな? 炎眼の零サマよぉ?」
周囲は笑いが起こる。
完全に調子に乗っている、元からこの山田と言うやつはDQN気味の奴だった。
この学校は偏差値が高いってのに、出しゃばりはどこに行ってもいるもんだ。
「良いぞ! 一本先取だ。だがレベルだとかで何とかならないと思うぞ?」
そうして始まった剣道は3人の審判を用意した真剣の試合である。
審判の部員は2人が対面し蹲踞して立ち上がると「始めっ!」と開始の合図をした。
山田は左右に動き面を狙った。
「面んあぁあ!!」
確かに速い、こいつは人が変わった様に速度が違う。だけどこっちは血の滲む努力をしてきたんだ!
こんな訳のわからない数字なんぞに負けてたまるかっ!
そう思った零は面を狙ったせいで上がった腕に隙を見つけて逆胴をする
「胴ぅうああああ!!!! はっ! めぇあぁあんんん!!!」
——その刹那、部長の逆胴を喰らった山田は少し後ろに尻餅をついた、そこも見逃さずに無防備の面も打った。完全なる一本の打ちを連続でやったのだ。
審判はもちろん3人とも零に旗を上げて終了した。
「いってぇ……なんだよレベル13なんだぞっ」
床に蹲り呻く彼に手を貸して立たせる零。
周りからは困惑や零が勝って安堵する声が聞こえる。
「かじ先輩レベル0なのに……」
「なんだ、結局はイタズラアプリなのか?」
「やっぱり、かじが勝って良かった〜」
それに対して竹刀を肩に担ぎ笑う零。
「だから言ったろ? レベルだけで決まって堪るかって、まあ少し怖かったがな! 怖いってのは山田じゃなくてシステムの話な」
笑いが起こった、侮蔑は無くなった気がした零は胸を撫で下ろした。
審判をしてくれた部員に感謝をして、身嗜みを整えて竹刀と木刀を袋に入れて持ち教室に向かう。
そして教室はステータス画面についての話題で持ちきりだ。男女陽キャ陰キャ問わず興奮している。
ドアを開けるなり視線を集めてしまった、何か変な事したか?
「噂のレベル0の梶原だ〜!! もうネットで剣道日本一位が0だと話題だぞ!」
「お前それ死んでんじゃないのかぁ〜?てか零だけに0かよ〜」
教室はどっと笑い零をイジる。
零も苦笑いして肩をすくめた。
「生きてるし、さっきレベル13って奴を剣道でねじ伏せたよ!」
そう零はヘラヘラ言いながら席につく。周りは流石は全国一位は違うなと口々にする。
だが本心ではあの時負けていたら俺には何も残らないと本気で不安だったのだ。
「ねぇ、このヴォイドナビって何なのかな? てか政府が言うには世界中らしいよ」
「もう嫌ねぇ、アンインストールも出来ないし、容量食っている訳でもないから本当にわからないわね……」
「てか首相が会見をしてるよ!」
もう当然と言えばそうだが、この世界の異変の話題に持ちきりだ。
零は再度、黒い渦の様なアイコンのアプリを見つけ押すもNot signalと表記されるだけでガッカリした彼はスマホをポケットにしまった。
そうしたら担任がやってきた。
「ほら、みんな座って〜」
全員が席につくが静まらない、ある生徒は先生に質問をした。
「北川先生はレベル何だったん〜!??」
「私のレベルは53です……と言ってもこれに意味があるのかわからないですけどね」
そうノリノリで端末を取り出すとステータス画面を出した。
——
【名前】 北川冷造
【種族】人間
【レベル】53
【職業】 高校教師
【スキル】マルチリンガルLv 4
【スキルポイント】3
【ユニークスキル】なし
——
生徒たちは体育の20代半ばの若い先生が高レベルな事に歓声を上げている。
零は、再度もう一度自分のステータスを開いた。
無慈悲にレベル0のままだ。その数字だけが、変わらずそこにあった。
零はアレが普通の人のステータス画面なんだなと感心していると窓ガラスが震え、轟音が鳴り響く。
その方向は校庭だった、そこを見ると空間に裂け目が出来ていてドンドンと広がっていく。
全員のスマホには警告音が鳴り響き始める。
——
【VOID発生】
発生地点:星ヶ原高校
脅威レベル:F
推奨レベル: 11〜50
レベル11以上の方は避難支援を推奨します。
——
黒い裂け目の奥に何かが蠢いている。
人でも獣でも無い。
異形の影が、ゆっくりとこちらに姿を現そうとするのを見て冷や汗がブワッと出た、本能的に危険だと零は判断したのであった。
ヴォイドはダンジョンみたいなものです。
中から魔物が溢れ出てきますが。




