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第19話:嫉妬

7月になってすっかり暑くなってきた。7月下旬からは夏休みとなるのだが、その前にあるのが期末テストだ。


「最上君、この問題どうやって解くのか教えてくれる?」

「あぁ、これはね」


中間テスト以降、隣の森岡さんから期末テストに備えてなのか、いろいろと授業でわからなかった所について聞かれることが多くなった。


「最上君、私にも教えてくれる。これなんだけど?」

「どれどれ、あーそれね。それはね」


そして森岡さんの前の席の向井澪むかいみおさんからも疑問点を聞かれるようになった。向井さんは背は平均ぐらい、髪は短めで明るい雰囲気の女の子だ。部活は文芸部に入っているらしい。森岡さんと仲が良くなったようで、よく森岡さんと話をしている。その流れで、俺にも話しかけることが増えたというわけだ。


「最上、俺にも教えてくれよ」


前の席の村瀬からも聞かれるようになっていた。


「はいはい。ナンパの方法なら知らないよ」

「いやナンパの方法なら池上に聞くよ。そうじゃなくて数学のこの問題だよ」


確かに池上ならナンパは成功するだろうけど、イケメンだからゆえであって方法は参考にならないのでは?


「最上君、私もこの問題について教えてほしいんだけど」


席の近い村瀬や、向井さん、森岡さんの他にランチを一緒に食べている宮沢さんも授業などでわからなかったところを聞いてくるようになった。全員でわからないところを教え合っているので勉強会のようになっていた。


「宮沢さんは、答えはわかっているんだよね?」

「解き方はわかるんだけど、なんでそれで解けるのかが理解できないのよ」

「テストで点は取れるから問題ないんじゃないの?」

「でも理解できていないから、納得がいかないのよね」


まぁ、確かに微分・積分とか解き方は教えてくれるけど、本質的に何を意味しているのかまでは詳しくは説明してくれないからな。高校三年生や大学ぐらいまで勉強するとわかってくるのだが、高校二年生だとこれまでの算数との違いが大きすぎて理解するのは難しいかもしれない。俺は大学ぐらいで理解した話を宮沢さんに丁寧に説明するのであった。


□▲□


ある日、ランチを食べ終わったあと宮沢さんは席を外したため、4人で話をしていると、池上が俺の席にやってきた。


「最上、お前何か宮沢の弱みでも握っているんじゃないのか?」

「心当たりがないんだが、なんでそんなことを聞くんだ?」

「宮沢がわざわざお前らのところに行って話をするなんておかしいだろ」

「クラスメイトなんだから普通のことじゃないのか?」

「はっきり言ってやるよ。お前らごときにクラストップの宮沢が話しかけるのがおかしいと言っているんだよ」

「なるほどね。確かに弱みは握っているな」


やりとりを聞いていたクラスメイトが皆、えっという表情で注目してきた。


「ちょっと最上君、弱みなんて」


森岡さんがフォローしてくれるが、手で制しておく。


「やっぱりな、弱みを握って宮沢を囲い込むなんて卑怯な奴だな、お前は」

「そうはいってもな。こればっかりは宮沢さんにがんばってもらわないと。なにしろ弱みというのは中間テストで俺に総合順位で負けたということだし」

「なっ」

「お前も宮沢さんに話しかけてもらいたかったら、期末テストで宮沢さんの成績を上回ればいいんじゃないか?」


池上が悔しそうな顔をしながら俺を睨みつけてくる。池上はクラスでも最も目立つグループの一員なのだが、なぜか宮沢さんはそのグループとは一緒に行動していない。おそらく池上は学年でもトップレベルでかわいい宮沢さんをグループに入れたいのだろう。


「ガリ勉ごときがいい気になるなよ」

「ガリ勉じゃなきゃ宮沢さんの成績は上回れないぞ。お前もガリ勉になれば?」

「なんだと!」


池上が俺につかみかかってきたが、手を池上の前にかざして警告しておく。


「池上、暴力はまずいだろ。その辺にしておけよ。ただ森岡さんと向井さんには謝ってもらおうか」

「えっ、最上君。私達は別に」


森岡さんは謝罪は不要と言っているが、そういうわけにはいかない。


「お前らごときの発言は撤回してくれ。池上のようにクラスで人気がある奴が、女の子に言うセリフじゃないだろ」

「くっ、わかった。森岡さん、向井さん失礼なことを言ってすまなかった」

「うん。気にしていないからいいよ」


池上は席に戻っていった。


「なあ最上、俺もお前らごときって言われたんだけど」

「村瀬は俺と同じモブだから、池上の言うとおりお前らごときで正解なんじゃないか?」

「お前のようなモブがいてたまるか!」


□▲□


7月の中旬に期末テストが終わった。中間テストに引き続いて村瀬の掛け声で総合結果を机の上に広げる。今回は向井さんと宮沢さんも参加しているので合計5人だ。


「また3位かよ、最上」

「なかなか、ここから順位を上げるのは難しいな」


俺は2回目の高校生だからこの順位がとれているが、それでも3位から順位を上げるのは難しかった。


「凄いわよね3位って。私もがんばらないと」

「いや、バレー部やっていて5位の宮沢さんの方が凄いと思うよ」


文化系の部活は日曜日とか活動していないから、週末にも勉強ができるけど、運動部だと練習があったりするから時間的なハンデがかなりある。それでも5位なんだから宮沢さんの凄さがわかろうというものだ。


「俺も森岡さんも順位はかなり上がったし、このグループでやっている勉強会はかなり効果があるような気がするな」

「村瀬君の言うとおりだね。せっかくだし、放課後の部活が始まる前の短い時間に勉強会をやらない?」

「いいね。その日の授業を復習できれば、かなり効果がありそう」


この後も、5人で勉強を教え合う関係は続いた。

第19話までお読みいただきありがとうございます。よろしければ評価、感想などを頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

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