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「さて、決まり事を守りさえすれば、平和なんだがな。そうは簡単に終わらせてくれないのが物流業界なんだよな」
俺は自室で仮眠をした。だが、物流業界に休みはない。
一方別の空間では、ありとあらゆる世界からの注目がひっきりなしに押し寄せてくる。
それを現場て捌くのは、地球からスカウトされてきた男、名を古森。
若い頃より食品関係の物流業界に席を置いていた男だ。
「古森さーん。また、日本の食材の注文が来てますよ」
「あ…、面倒くさ。クソが、何処のどいつだ、異世界に転生しても、日本の食品が食べたいとかぬかしたやつは」
手元のタブレットに届く注文内容を睨みながら、悪態をつく。
「まあ、仕方ないですね。故郷の味が1番美味いのは、何処に行っても感じますもん」
メガネを外し、親指で目頭をマッサージする男、クロジュ。こちらも出荷先が増えた影響か、最近はオーバーワーク気味だ。
「どうにかならないんですかね。このままだったら、日本で働いていた状況の二の舞って感じっス」
「まあな。そんな事は、アイツが分からないはずはないだろう」
愚痴るクロジュに、ポーションを投げて渡す。
「あざっスってか、この商品、入手困難な特製品じゃないっすか⁈」
「大丈夫。不正で仕入れてはない。輸送中にパッケージ破損があったようでな、仕入れ部から社割で安く買えたんだよ」
ほらここ。と、ラベル剥がれを指差す古森。メガネを掛け直し観察するクロジュ。
「はぁ? 端っこが少し捲れてるだけじゃないですか。これで不良品扱いっか?」
「一般商店やらなら目こぼししてもらえたかもしれないが、納品先が神から大司教への施し品だったらしく、アウト!」
「マジっスか……」
もったいないと心中で思いつつ、クロジュは遠慮なく高級ポーションを飲み干した。
「うまっ。味が濃厚で甘くて、高い蜜柑使ってるだろ、絶対。そんなオレンジジュースの高級品って味なのに、疲れが一瞬で消し飛ぶとか、マジハンパないって」
雄叫びを上げる同僚に、古森は苦笑いをこぼす。
「おら、元気になったんなら、入出荷データをまとめてくれ。それもって、上に掛け合ってくる」
了解っすと、元気な返事が聞こえる。
各自の席で端末に向き合う同僚たち。
「やっぱり狐印の商品は、どの世界にも高評価だな」
と呟きながら、商品評価表にしれっとチェックをいれる古森。
(先方からの依頼で、率直な声が聞きたいからって、部下にモニターさせんなよな)
と心中で愚痴りつつ、個人の荷物室には日本のレトルト食品を確保していたのであった。




