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『辺境伯夫人の安眠計画 〜二度寝を邪魔する「破滅フラグ」は、この手で叩き潰させていただきます〜』  作者: こもり詩


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第21話: 現場への小言と、国家転覆の種火

ノアがパトロールを開始してから一週間。領地は、かつてないほどの平穏に包まれていた。以前は夜な夜な聞こえていた魔獣の咆哮も、今はノアが空から一度低く唸るだけで霧散する


「……あぁ、これよ、これが人生の完成形だわ……」


テラスでハーブティーを楽しみながら、私は平和ボケしつつある庭の様子を眺めていた。だが、元社畜の私は知っているのだ。**「不具合トラブルのない現場こそ、最も危険である」**ということを


庭では、かつて死線を潜り抜けてきた騎士たちが、手持ち無沙汰に芝生を整えたり、ノアの巨大な鱗を磨いて「今日もいい天気だな」と談笑している。


「……ジャネット。あの騎士たちの剣、心なしか錆びついているように見えませんこと?」


私は、単なる「現場管理」の視点で、独り言のように呟きました。仕事がない現場は腐る。それがいつか大きな人為的ミス(バグ)を呼び込むことを、私は前世のデスマーチで嫌というほど見てきたのだ


「……あら、旦那様。いつからそこに?」


いつの間にか背後に立っていたカシアンが、私の言葉を聞いて、まるで啓示を受けた聖者のような顔をしている。


「……リゼット。君は、こんなに穏やかな昼下がりに、領地の防衛力の低下を憂いていたのか……。平和に甘んじることなく、常に『最悪』を想定する。君のその献身的な姿勢に、私はまた目を覚まされたよ」


「え、いえ、そこまで深刻な話では――」


「アルフレッド団長を呼べ! 今すぐにだ! 我らは、リゼットの慈愛に甘えすぎていた!」


(……あ、これ、まずい方向に展開デプロイされたわ)


呼び出された騎士団長アルフレッドは、カシアンから「リゼットが君たちの弛みを案じている」と聞かされ、その場に膝をついて震えている。


「な……! 奥様が、我らの慢心を見抜いておられたと……!? 我ら騎士団、一生の不覚!」


アルフレッドは、私の冷めた視線を勝手に「神の如き洞察力」と解釈して、熱い涙を流している。


「総員、武装せよ! 本日より『対竜演習』を開始する! ノア殿に稽古をつけていただくのだ!!」


庭に降り立ったノアは、私の前では甘えたドラゴンですが、アルフレッドたちを見る目は冷淡そのものだ。


「ノア。お仕事よ。この人たちを鍛えてあげて」


私が視界の設計図で「報酬(エサ増量)」を提示すると、ノアは即座に「最強の教官」へと切り替わる。


「アルフレッドさん。……怪我をしないように気を付けてね」


私がそう声をかけた瞬間、ノアは主の「厳しく鍛えよ」という意図(※完全な誤解)を汲み取り、巨大な翼を羽ばたかせ、凄まじい風圧で騎士たちをなぎ倒し始めた。 ……と、そこで私は優雅に立ち上がろうとして、またやらかす


「わわっ!?」


テーブルに置いてあったスプーンの柄が袖に引っかかり、ハーブティーのカップが派手にひっくり返った。


「あちちちっ! ……あぁ、お気に入りのドレスがハーブティー漬けに……!」


「リゼット!? 大丈夫か、不吉な予兆を感じて体が震えたのか!?」


「いえ、ただの不注意ですわ……(※マジで熱い)」


私がパニックでドレスをバタバタさせている姿を見て、アルフレッドは「おお、奥様が我らの不甲斐なさに、身を焦がすような怒り(?)を露わにしておられる!」とさらに奮起。ノアの風圧に立ち向かって吹き飛ばされていく。


「……アルフレッドさん、いい声で鳴くわね。ジャネット、少し騒がしくなりすぎじゃないかしら?」


「左様でございますね、奥様。ですが、皆様とても『やりがい』に満ちたお顔をしておいでですわ……約一名を除いて」


ジャネットの視線の先では、カシアンが一人、窓際で拳を握りしめていました。 (リゼットは『剣が錆びている』と言った。彼女も、何かが近づいているのを感じ取っているのか……。王宮が彼女の力を奪おうとするなら、私はこの領地ごと王家に反旗を翻す覚悟を決めねばならないのか……)


カシアンの愛は、リゼットの「現場へのちょっとした小言」を燃料にして、国家転覆レベルの重たい決意へと爆速で進化していく


「はぁ……。結局、騒がしくなっちゃったわね。せっかくのティータイムが台無しだわ」


【設計図からの通知:周辺の騒音レベルが上昇中】 【分析:騎士団のやる気がオーバーフローしています】


「……まあいいわ。ジャネット、お代わりを。あと、ノアに『やりすぎないように』って伝えておいて。……あ、でもアルフレッドさんが吹き飛ばされるところは少し面白いから、あと三回くらいは見てもいいわよ」


「……畏まりました。奥様もなかなかに、お人が悪い」


ジャネットは、主の「無自覚なドS(自覚なし)」に小さく微笑み、完璧な所作で紅茶を注ぎ足した。

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