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エピローグ、賢王と智妃の治世

 ――数年後――


 五回目の人生にしてようやく王太子殿下との結婚を果たした私は、王太子妃として王宮内で暮らしていた。


「王太子妃って思ったより忙しいのね……」


 久し振りに公務のないある日の午後、私はため息をついてソファに身を沈めた。


 マリーがピーチティーとお菓子を持ってきて、低いテーブルに並べてくれる。


「夕方までゆっくりお過ごしください。今夜もまた晩餐会でしたでしょう?」


「ええ、テレマン卿とだったわね。王太子夫妻として私も出席しなければならないの」


 繊細な金彩きんだみのティーカップの中で揺れるピーチティーをみつめながら、


「一緒に過ごす時間はあっても、ちっとも二人きりで話せないわ」


 口をとがらせる私に、マリーがめずらしくクスっと笑った。「王太子殿下も同じことをおっしゃっていそうですわね」


 そうだといいわ、と答えようとしたが、何だか恥ずかしくて私は無言になる。


「それにしてもエリック殿下は、よほどおやさしい乳母にでも育てられたのでしょうか?」


「え?」


 思いがけない問いにティーカップから顔をあげる私。


「国王陛下ご夫妻は親としてではなく為政者として長男であるエリック殿下に厳しく接していらっしゃるのに、殿下はいつも満たされたほほ笑みを浮かべていらっしゃる。あの方はどう見ても、愛されて育った幸せそうな好青年ですから」


「ああ、そういうことね」


「なにか秘密を知っていらっしゃるというお顔ですね」


 マリーが私をいたずらっぽいまなざしでみつめる。さすがなかなか鋭い彼女に、私は淑女の微笑を向けた。


「この秘密は冥界の入り口まで持って行くつもりですわ」


 * * *


 のちに後世の歴史家は、エリック・ルノー・ド・グランアーレント王とリーザエッテ・フォン・ヴァンガルド王妃の治世を、王国史のなかで稀に見る平和と発展の時代と位置付けている。学問と芸術を好み善政を敷いた国王は賢王エリックと言われ、それを支えた聡明な王妃は智妃ちひリーザエッテと呼ばれた。二人の間にはぐくまれた愛と信頼の絆が、王国に安定と豊かさをもたらしたのだろう。


 ――これは孤独な少年の心を支えた元悪役令嬢の物語――



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