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035 旧交

『デザートイーグル』のホームにやって来たヨネ子達はいつものように最初にメアリに迎えられた。


「おかえりなさい」


何故か未だにこの挨拶だ、なので返事は決まっている。


「ただいま、今回はちょっと人数が多いけどよろしくね」


客室は5室しか無いが今回のヨネ子達は総勢9人いる、なのでヨネ子とエルとアスカで一部屋、エレンとブレイザーが一部屋づつ、ディーンとアーネストで一部屋、チェリナとエリーサで一部屋で2泊する事にした。


『デザートイーグル』は今日も仕事、依頼を受けて狩りに行っているがメアリが何も聞いていないという事なので夕方には帰ってくるだろう。


そして『白金神龍』とブレイザーは勝手知ったる我が家とでも言うように居間で寛いでいるが、他の4人は絵や勲章を興味深く見て話していた。


そこへメアリとシェンムーが紅茶を運んでくると4人は驚いてシェンムーの方を見ていた、そしてエリーサが呟く。


「えっ?妖精族?」


この世界では妖精族が居るのはわかっているのだが会った者はほとんどいない、それは妖精族は人間に隠れて暮らしているからだ、なのでその妖精族が目の前に現れたので驚いたのだ。


「はい、妖精族のシェンムーと言います。ここでメイドをしています。よろしくお願いしますね」


シェンムーは自己紹介した、シェンムーは人間の言葉を勉強中であるがまだ良く喋れないので来客時にはシェーラの『超言語』の指輪を使っている、いくら『デザートイーグル』と言えど普段から言葉のわからない者と接触する事はまず無いので貸しているのだ。


因みに妖精族の中には人間の言葉が通じる者もいる、そういう妖精族は翅を隠して人間の街で情報収集をしている、なので妖精に会ったことのある者は結構いるが気付いていないと言う方が正しいだろう。


一服したところでディーン達4人を伴ってブレイザーとメアリが街に出かけた、ブレイザーとメアリは夕飯の買い物だが他の4人は街の散策だ、初めての街なので色々と見て回りたいのだ。


ブレイザーとメアリは早めに帰って来て食事の準備を始める、次に帰って来たのは『デザートイーグル』だ。


「あら、いらっしゃい。久しぶりね」


セリーヌがヨネ子達に声をかける。


「またお邪魔してるわ。今回はちょっと多いけどよろしくね」


ヨネ子が答えた。


「多いって?他に誰か来てるの?」


「そうよ、セリーヌも知ってる人よ、楽しみにしてて」


エレンが笑顔で答える。


そうこうしているうちにディーン達4人も帰ってきた。


「セリーヌ!久しぶり」

「セリーヌ元気だった?」


帰ってきてセリーヌを見た途端挨拶もそこそこにチェリナとエリーサがセリーヌの方へと駆けて行って抱きついた。


「チェリナにエリーサ。知ってる人ってあなた達だったの?久しぶりねー、会えて嬉しいわ」


セリーヌも懐かしそうに2人と抱き合った。


「ちょっとあなた達、仕事帰りで汗臭いでしょ、先に風呂に入ってきたら?その2人も一緒にね」


『デザートイーグル』とチェリナ、エリーサの7人はヨネ子にそう言われたのでさっそく風呂で旧交を温める事にした。


そしてヨネ子はディーンとアーネストを使用人用の方の風呂に連れて行く。


「あなた達はこっちね」


そう言うと湯船にお湯を満たして出て行った。


全員風呂から上がった頃には夕食の準備も出来ている、今回は人数が多かったためヨネ子の持つ野営の時のテーブルと椅子を出している。


そしていつものように全員が席に着いてから『白金神龍』とブレイザー以外の全員が自己紹介をしてから食事を始めた。


「それにしてもセリーヌ、こんな豪邸をホームにするなんて凄いじゃない」


食事が始まるとさっそくチェリナが質問してきた。


「ありがとう、でもこのホームはエレンも一緒に建てたのよ」


「そうなの?エレノアじゃなかったエレンさんはやっぱり凄いんですね」


チェリナは訓練でわかってはいたけれど改めてエレンの凄さを知った。

そこへ今度はディーンが質問する。


「ところであの勲章は何ですかな?勲章を3つも貰ってるようですが?それも複数の国から」


「一つ目はエムロード大王国で貴族の不正を暴いて貰った物、二つ目はリシュリュー王国でマンモスの魔物を討伐してもらった物、三つ目はここアルバート王国でバハムートを討伐して貰った物よ」


「ちょっとセリーヌ。今バハムートを討伐したって言った?」


エリーサが驚いて聞き返した、この世界では「ドラゴンは人間には倒せない」が常識になっていたからだ、既にその常識は覆って久しいのだが情報伝達の遅いこの世界ではまだまだその事を知らない者の方が大多数を占める。


「ええそうよ、私達『デザートイーグル』とエレンと元リーダーの流一の7人でね」


「違うでしょセリーヌ。バハムートを倒したのはあなた達5人でしょ。私と流一さんは見守っていただけよ」


セリーヌの言葉をエレンが訂正した、実際エレンと流一は側で見ていた騎士や村人をバハムートのブレスから守ったが戦闘そのものには参加していないからだ。


「そんなことはないわ。貴女と流一さんが居たから私達も安心して戦えたのよ。だからあれは7人で倒したのよ」


「そうですよエレンさん、シェーラが傷付いた時エレンさんが声をかけてくれたから冷静に対処できて勝つことが出来たんです。あれは私達7人の勝利です」


セリーヌの言葉にミランダも同意した。


「ハァー、厳しい訓練で強くなったと思ってたけどまだまだのようね」


エリーサは少しだけ気落ちした、自身も今回の訓練でBランクの魔物をソロで倒せるくらいの実力をつけていたのでセリーヌに自慢しようと思っていたところがセリーヌはそれ以上の実力者だと知れたからだ。


「そうですな、私もまだまだ修行が足りていないようです」

「同感です」


ディーンとアーネストも気落ちはしていないが修行不足を痛感していた。


「ところでさっき言っていた流一さんと言うのはあそこの絵の中にいる男の人ですかな?」


空気を変えるべくディーンがまた聞いた。


「そうよ、エレンの隣にいるのが元リーダーの流一よ」


今度はアメリアが答えた。


「そうですか、やはり強かったんでしょうな」


「そうね、確かに強かったけど、流一はそれ以上に魔法使いとして強い・・いいえ凄かったわ」


「魔法使いとして?エレンさんくらい強かったんですか?」


「そうよ、そもそも流一さんは私の魔法の師匠ですもの。私の魔法は全部流一さんに教えられたものなの」


今度はエレンが答えた、自分の事なので当然だが。


「そ、そんな人が居たんですか?エレンさんの魔法は攻撃魔法にしても治癒魔法にしても補助魔法にしても常識では考えられないくらい凄いとは思っていましたが、同じくらい凄い人が居たとは・・・」


ディーンは絶句した、まあアーネスト、チェリナ、エリーサの3人も同じようなものだが。


「それで、あそこに書かれているもう一人の男の人は?」


今度はチェリナが聞いた、これだけ凄いメンバーが揃っているのだ、もう一人も凄いに違いないと思ったので気になったのだ。


「あれは私達の友達でセラフィムさんって言うの」


今度はユリアナが答えた、誰が答えても一緒だったのだが、たまたまチェリナの正面に座っていて目が合ったからだ。


「やはり只者ではないんでしょうな?」


ディーンも気になっていたのだろうチェリナより先に聞いた。


「隣に上位龍の絵があるでしょ?」


「ええ、あるわね。凄くカッコいいけど、それがどうかしたの?」


今度はディーンが答える前にチェリナが答えた、競っている訳ではないだろうがなんだか忙しい。


「その上位龍がセラフィムさんの本当の姿よ」


「「「「・・・・・・・・ええーーーーーーー!!」」」」


ここは4人仲良く絶句&驚愕した、このシンクロは訓練の賜物かも知れない。


「ちょっとセリーヌ、上位龍と友達なんて冗談でしょ?冗談よね・・・」


チェリナはそう言いながらセリーヌを見る、しかしセリーヌは否定しない、エレンの方を見ればニコニコしながらチェリナを見ていた。

そして驚いているのは4人だけ、これで可能性は2つに絞られた、全員で騙しにかかっているか真実かだ。

だがこの状況で4人を騙す事になんの意味もない、つまりは真実だと理解した。


「上位龍が友達なんて・・・私も会ってみたいわ」


なんだか諦めにも似た呟きだったが、それにセリーヌが反応した。


「じゃあ呼んでみましょうか?運がよければ来てくれるかも知れないわよ?」


「いいわね、私もまだ会ったことは無いから来てくれるなら呼んで頂戴」


これにはヨネ子が反応した、ヨネ子は流一がセラフィムとの通信の魔道具を持っていた時その魔道具を通じて話をした事はあったのだ。

因みにその通信の魔道具は今ミランダが持っている。


「じゃあミランダ、出して頂戴」


「はい、どうぞ」


ミランダは収納からセラフィムの鱗で作った通信の魔道具をセリーヌに渡した。


「セラフィムさん、今良いですか?」


「ん?珍しいの。何か困りごとか?」


「いえ、今ホームにお客さんがたくさん来ててセラフィムさんに会いたいって言ってるんですけど来てもらえませんか?」


「うむ、茶菓子にチョコレートケーキが出るなら行こう」


これは当然本気で言っているわけではない、ちょっとした茶目っ気だ。


「ちょうど良かったです、今日はチョコレートケーキとフルーツタルトを用意していますよ」


「何フルーツタルトとな?それはまだ食べたことがないのう、これはさっそく行かねばならん」


そこで通信が途絶えてすぐに通信の魔道具から霧が発生した、そしてセラフィムが転移魔法でやって来た、もちろん人型だ。


「待たせたの」


「「「「・・・・・」」」」


4人は再び絶句した、自分達はゲートでここまで来ておきながらセラフィムが転移で来た事に驚いている。


「初めましてセラフィムさん。マーガレットです」


先ずはヨネ子が挨拶した。


「何?お主流一の妹のマーガレットか?」


「そうよ。流一が世話になったわね。ありがとう」


「なに、我も楽しんでおったからのう」


次にエルが声をかけた。


「初めまして、エルよ」


「ほうエルとな・・・ん?・・・この気は・・・も、もしかして神龍様ですか?」


セラフィムは慌てて聞いた、神龍は上位龍よりも上のこの世界最強の存在なのだ、同じドラゴンだからだろうその気配を敏感に感じ取った。


「あら、さすが上位龍、よくわかったわね」


ヨネ子が感心したように聞いた。


「ど、どうして神龍様がここに?」


「マーガレットと戦って敗れたからよ。それより私の名前はエルだからそう呼ぶように」


「マーガレットに敗れた?・・・」


今度はセラフィムが絶句した、そして態度を変えた、ドラゴンとして自分より強いものには敬意を持って接するためだ。


「では私はこれからお二人をマーガレット様、エル様と呼びましょう」


ヨネ子もエルとの戦いでドラゴンの習性と言うか矜恃を知ったので様付けされる事には何も言い返さなかった。


「ん、それで良い」


この会話を聞いていた4人はさらに絶句していた、今度はなかなか現実に戻って来そうにない。


「さあセラフィムさん、まだ食事中なので一緒にどうですか?ケーキは食後に出しますので」


「うむ、ではそうしよう」


セラフィムを交えて食事が再開されると、今度はセラフィムが聞いて来た。


「ところでマーガレット様とエル様は何か目的があって一緒におられるのですかな?」


「ええ、私たちは新しく国を作ろうと思っているの」


「ほう、国を・・・それではどこかの国を奪うのですか?」


「いいえ、フィールマ大森林から南に海まで全く手付かずの場所があるでしょ、そこを開拓して国を作る予定よ」


「なるほど、しかしそれでは国民が居ないのではありませんか?」


「それは今集めている途中よ。今のところリシュリュー王国とエムロード大王国が協力してくれているけど協力国をもっと増やす予定なの」


「そうですか、では私が守護している獣人達もマーガレット様の作る国の国民にしていただけませんか?」


「それは良いけど獣人達はそれで納得するんでしょうね」


「多分大丈夫でしょう」


「そう、なら良いわ。ただしもう少し先になるからそのつもりでね」


「すぐには開拓を始めないので?」


「今魔物狩りをするために騎士達を鍛えている途中なの。それで来月から最初の討伐隊を送り込んでその後から開拓を始める予定よ」


「なるほどわかりました」


その話にセリーヌが口を挟んだ。


「ねえ、来月から魔物狩りを開始するの?」


「ええ、そのつもりよ」


「だったら私達もそれに参加出来ない?」


「良いけど、何か理由でもあるの?」


「単なる好奇心かな。ほとんど人が入った事のない場所でしょ、初めて見る魔物や素材が一杯ってワクワクしない?」


「ハンターらしいわね。じゃあ来月出発前に迎えに来るわ」


話ばかりでいつもより遅くなった食事も終わりセラフィムお待ちかね食後のティータイムになった、人数も多いので普段ならメアリとシェンムーだけで後片付けをするのだが今日はブレイザーも手伝っている。


「私一人で決めちゃったけど皆んなはそれで良かった?」


今更ながらセリーヌは他のメンバーの意見を聞いた。


「良いんじゃ無いですか?私も初めての魔物や素材に興味ありますし」


最初に答えたのはミランダだ、もうかなりハンターが板に付いてきた。


「まあギルドの依頼もあまり楽しそうなのは無いしね」


「そうそう、なんだか少し刺激が欲しかったからちょうど良いわね」


アメリアとユリアナも賛成する、仕事を楽しそうかどうかで決めたり刺激を求めたりは旧『デザートイーグル』時代からの伝統なのかも知れない。


「私は皆さんが良ければそれで」


シェーラは未だメイド時代の癖が抜けないのか何事にも自分の意見を主張しない、尤も今まで主張するような案件が全くなかったと言う事かも知れないが。


「それで、1ヶ月ほどかける予定だけどその間メアリとシェンムーとマルコはどうするの?」


ヨネ子が聞いた、マルコは別にしてメアリとシェンムーは掃除位しか仕事がなくなるからだ、その掃除も汚す者が居なければほとんど必要がない。


「そうね、実家にでも帰っとく?」


セリーヌはその3人に聞いた。


「お邪魔で無ければ私も行ってみたいです。もちろんお料理やお洗濯などお役に立てることはするつもりです」


「だったら私も行ってみたいです」


メアリとシェンムーは同行を申し出た、実際1ヶ月も暇を潰すのは難しいのかも知れない。


「僕は、馬達の世話を休むわけにはいきませんので」


マルコは残念そうに言った、生き物を世話する者としては当然だろう。


「もし一緒に来る気があるなら馬も一緒に連れて行くわよ」


そのマルコにヨネ子が言った、どの道ゲートで移動するので大した負担はない、それなら何か使い道があるかも知れないので「馬がいても良いか」と思っている。


「だったら僕も行きます」


マルコは喜んで答えた、仲間外れ寸前だったので喜ぶ気持ちはよくわかる。


「では私もお手伝いしましょう」


最後はセラフィムも同行する事になった。


こうして全員の魔物討伐参加が決定すると、翌日もう一泊してヨネ子達はフライツェンへと戻った。


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