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第四十二話

 ヴィオレッタは屋敷の窓から今日はお休みのアンナがロアムに誘われて町へと出かけていく姿を見守っていた。


「ヴィオレッタ。どうするつもりだい?」


 バッセンはそんなヴィオレッタの頭を優しく撫でながら尋ねると、ヴィオレッタは頬を膨らませて言った。


「もちろん! 大切なアンナですからね。ロアム様に泣かされないように見張っているのです。」


「んー。ロアムは悪い男ではないと思うが・・・。」


「バッセン様はロアム様がどれだけの女性を泣かせてきたか知らないのですね。私はアンナに聞いて知っていますから、心配なんです。」


「ん?アンナ嬢は知っているのかい?」


「はい。アンナは優秀なメイドですからね。」


 優秀なメイドでも個人の情報をしかも恋愛ごとなど把握していないのではないかとバッセンは思いながらも、否定はせずに二人を見た。


 そしてお似合いに見えたのでヴィオレッタに言った。


「大丈夫だと思うが。」


「バッセン様は私のアンナが泣いてもいいと思っているのですか!?」


「いや、ロアムはアンナ嬢を泣かせないと思うが・・・そもそも彼女はそんなことで泣かない気がする。」


「何を言っているのです。アンナだって女の子ですよ?」


 バッセンはどういっていいのか分からず、曖昧に笑みを返すと考えた。


 そう。確かにアンナは女である。だが、ただの女かと聞かれればどうだろうかと首を傾げる。


 アンナが泣くとしたら、ヴィオレッタの事だけな気がするのは自分の勘違いだろうかとバッセンは思い、小さくため息をつくと言った。


「取り合えず、今日は二人を尾行は出来ない。俺はこの休憩時間が終わったら仕事へ戻らないといけないからね。」


「え?」


 きょとんとするヴィオレッタに、バッセンはまさかと思って口を開いた。


「自分一人で尾行するつもりだったのか?」


 ヴィオレッタは首を横に振った。


「もちろん一人でなどいきません。護衛の方はつれていきます。」


「ほう・・・一体、誰と、出かけるつもりだ?」


 バッセンの瞳が怪しく輝きだしたのを見て、ヴィオレッタは自分が何か間違えたのだと背筋が寒くなった。


 たまにこういう事がある。


 自分では何が悪かったのか分からないのだが、こういう日の夜は大抵次の日動けないほどに抱きつぶされるのだ。


 それはそれで美味しいのだが、何が悪いのかが分からない。


「あの、何を怒っていらっしゃるのですか?」


 おずおずとヴィオレッタがバッセンを見つめると、バッセンは眉間にしわを寄せた。


「怒ってはいない。ただ・・・ヴィオレッタは俺以外と出かけたいのか?」


「え?いいえ。」


「なら行くな。」


 その言葉にヴィオレッタは迷う。


 何を怒っているのかは分からないが、外出するならば一緒に行こうと言われているのだ。ただ、アンナのことが非常に気になる。


「ヴィオレッタ?」


 はっとしてバッセンを見ると、まるで子犬のようにこちらを見つめている。(他人が見れば狂犬。)


「はぅ!・・・わかりました。ちゃんと大人しくしていますから。」


「はぁ。分かってくれてよかった。」


 バッセンはにこにこと笑みを浮かべ、ヴィオレッタを膝の上に乗せると頭を何度も撫でて、休憩時間を堪能したのであった。




「はぁ。」


「どうしたアンナ嬢。」


「窓からずっとヴィオレッタ様が見ていたので着いて来る気だろうと、どうしようかと思っていたのですが、バッセン様が上手く引き留めて下さったようです。」


「え?へぇ。そうなんだ。俺は別にヴィオレッタ嬢もついてきても大丈夫だけれど。」


「それはそれでバッセン様がやきもきされるでしょう。」


「それもそうか。」


「ええ。それに今日はヴィオレッタ様に町で日頃のお礼を込めてプレゼントを選びたいので、着いて来てもらっては困ります。」


「はは!そうか。なら俺もバッセンに日頃のねぎらいとして何かプレゼントするかぁ。」


「まぁいいですね。それならば、夫婦で使える何かにしますか。」


「いいな。それ。よし。選びに行くか。」


 ロアムとアンナは最近軽口を叩けるほどに仲が良くなってきている。


 ただ、二人ともお互いに恋愛のレの字も認識していないようで外出を一緒にしても大抵はバッセンとヴィオレッタの話ばかりしている。


 そしてそんな二人のやり取りが今、騎士の中ではヤキモキしながらも応援したくなると生暖かい目で見守られている事を二人は知らない。 


コミカライズ決定いたしました!

それもこれも、読んでくださった皆様のおかげです。感謝感謝です。

一瞬だけ43話をあげたのですが、ガイダンスをもう一度確認したところ、引掛かりそうだなと判断してとりさげました。すみません。


皆様、本当に読んでくださってありがとうございます。作者かのん、初のコミカライズ。

黄田ひぃ先生の可愛いイラストと丁寧な仕上げに私は読んで涙が出ました。ありがとうございます。

可愛いヴィオレッタやバッセンの姿。本当に、嬉しかったです。

コミックブリーゼ様からの配信となります。よろしければ『婚約破棄された令嬢は野獣辺境伯へ嫁ぐ!』を検索していただければすぐに出てくると思います!

2022年 5月13日 11時頃から配信スタートです!

よろしくお願いします!


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コミカライズ連載始まりました!  1話無料公開中です!

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― 新着の感想 ―
[一言] 一気読みしました。面白いですね。
[気になる点] 主人公二人のハッピーエンドになって良かったのですが、側近二人のロアムとアンナのその後が気になります。もし良ければ、その後を執筆して欲しいです。よろしくお願いします! [一言] 最後まで…
[一言] いつの間にか付き合ってるパターンのヤツやな!(笑)
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