4、
私の最後の恋愛はといえば、もう五年ぐらい前。
当時はまだ三十路手前で。
高校や大学時代の友人は結婚ラッシュ。
私もこの人と結婚するもんだと、漠然としながらもそれなりに幸せに付き合っていた。
─────と、思っていた。
「大丈夫ですか?」
あれ?ここ────・・・・私の家?
意識がまだ朦朧としながらでも、自分の家だということは理解できた。そして自分の家に、なぜか昔宮くんがいる。
(ってことは、夢?)
「まったく、驚きましたよ!九遠さんが酔っ払って歩けなくなるなんて。気を付けてくださいよ」
すぐ近くに、ぶつぶつと小言を言う昔宮くんが見える。
なんだかんだ言って、世話を焼いてくれるのが彼らしい。
ああごめん、昔宮くん。
私、そんなに呑んでた?
おかしいなぁ、私────いつも酔うことはないんだけど。
「あぁ、もう。脱ぎ散らかしてるし!─────お水です、飲めますかー?」
ううん、今は要らない。
今は─────もう喉、渇いてないから。
「え、ちょっと・・・・・っ。困りますって九遠さん!?」
私があんなに喉を枯らしたのはね─────あの日、あの夜だけだから。
「─────嘘つき・・・」
あんな想いは、もう二度としたくない。
(───私は、嘘つきなの。)