5、
「久遠さーん」
翌朝、いつもどおり会社に着くところで目の前から昔宮くんが走ってきた。
(昔宮くん・・・今日も元気だ。)
「おはようございます。」
「おはよう・・・」
昨晩、どうやって家に帰ったのか。
久住さんと、どうやって別れたのか。
どうして家に、昔宮くんだけがいたのか。
昔宮くんは、何時に帰ったのか。
─────全く覚えていないことだらけだ。
(・・・ああ、頭が痛い。)
「二日酔い大丈夫でした?なんか顔色優れないみたいですけど
」
迷子の仔犬みたいに眉を寄せて、私を心配そうに見てくる昔宮くん。
「・・・・大丈夫。ごめんね、何か迷惑かけてしまって」
「悩み事でもあるんすか?・・・らしくないんで驚きましたよ」
「・・・・・」
悩み事なんて、無い。
私は仕事以外に、なにもないから。
「・・可愛い彼女につい、はしゃぎすぎたの」
曖昧に笑ってみせると、少し頭が痛んだ。
「“彼女”って・・・。止めてくださいよ、そんな」
─────照れる昔宮くんの横顔を見たら、余計に痛くなった。
(────重症、だ。)
「おはようございます」
会社の受付の前を通ると、目があった久住さんがいつものようににこやかに挨拶をする。
「おはようございます」
(ああ・・・・可愛い。)
そう思うと同時に、グワングワンと頭痛は酷くなっていく。
「あの僕、────先輩に言ってなかったんですけど」
「久住さん、昔宮くん。おはよう」
エレベーターを待ってると、営業部の日高部長に後ろから挨拶をされた。
「「おはようございます」」
なにか言いかけていた昔宮くんは、日高部長がきた途端言葉を呑み込んだ。
「久遠さん、ちょっといい?」
「あ。はい」
代わりに話しかけてきた日高部長に、私は戸惑いながらも頷いた。




