12/15
3、
誰にでも気さくに呑みに誘えるほど、僕はコミュ力があるわけではない。
それでも数回しか言葉を交わしたことがない受付嬢の彼女に声をかけたのは、久遠さんを気軽に呑みに誘う口実が欲しいからだった。
「あの、良かったら今度呑みに行きませんか?」
そう言った瞬間、ひどく後悔した。ありきたりな誘い文句は、受付嬢の久住夏名さんの笑顔を凍り付かせてしまったのだ。
「・・・飲みに、ですか?」
(やばい、完全に引かれた!)
「や、実は・・・・僕の先輩───あ、女性なんですけど、久遠さんがぜひ貴女とお話してみたいと前から言ってたんです」
怪しい下心などないことをアピールするのに必死で、逆に不信感持たれるかとヒヤヒヤしていたが、久遠さんの名前を出した途端僕に向けられていた疑いの眼差しは晴れやかなものになった。
「えっ!久遠さんて、あの久遠香子さんですか?」
「あ・・・はい」
「光栄です!ぜひお願いします」
目を輝かせて久住さんがそう返事をする瞬間、通りがかりの男性社員たちが冷ややかな目で俺を見ていたのをこの時俺は知らなかった。




