表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/44

圭×功利【藍堂有利】

 好きな人には、別の好きな人がいる。


「圭さんの好きな人は、お姉さんですよね?」


 功利はローテーブルを挟んで向かい側に座る圭に尋ねる。座布団の上に正座で、和菓子を食べるその姿は、いたって普通の容姿。クラスにいる男子と比べれば、そこそこかっこいいと思える。

 が、自らの兄と比べると……否、比較対象にもならない。


「今日はそんなことを聞くために俺を呼んだんすか?」


 功利が尋ねても、圭は動揺を見せない。

 圭の姉、芽榴は現在アメリカ留学中。

 以前、楠原家に電話して圭に連絡をとって以降、「母さんがうるさいから」という理由で圭に連絡先を渡された。

 ので、功利は昨日『美味しい和菓子とお茶をもらったので』と連絡し、圭を藍堂家に招いたのだ。


「もしそうだったとしても……少なくとも、芽榴姉の彼氏さんが住んでる家では白状しないっすよ」


 功利が年下だからか、圭はいつも余裕そうな態度で功利の言葉に返事をする。

 それが功利も気にくわないのだが、癖になっているところがある。


「じゃあ私の方が年下なので、いい加減その微妙な敬語をやめてもらえませんか?」

「微妙な敬語って……うーん、でも功利さんって気品あるから気安い口聞きづらいんすよね」


 圭は苦笑しながら、功利の淹れたお茶を飲む。


「あ、美味しいっすね。このお茶」

「……お姉さんの淹れたお茶のほうが美味しいと思いますけど?」


 また捻くれたことを言ってしまった。

 そう思って、功利の表情が曇ると、圭はくすりと笑った。


「芽榴姉と比べ始めたら、キリないっすよ」


 その表情はやはり動揺を写さない。でもどこか、儚いのだ。


「誰も、何も……芽榴姉には敵わないっすから」

「……一番比べてるのは圭さんでしょう? だから圭さんには彼女ができないんです」

「あっはは、それ以前にお兄さんほどモテないっすからね〜」


 圭のことを知れば知るほど、功利は圭の本質に気づいていった。

 楠原圭という男の外面はそれこそ風雅に匹敵するほど、作り上げられたものだということ。


「じゃあもし、私が圭さんのこと好……」

「功利さん」


 功利の言いかけた言葉を無理矢理に止めて、圭は笑った。


「俺は、功利さんとまだ普通に仲良くしてたいです」


 功利が何を言おうとしていたのかも。

 それが例え話でもなんでもなく、功利の本心だと、圭は知っている。

 知っていて、圭は功利の話を聞こうとはしない。


 聞いたら、圭はもう功利と会わないつもりだから。

 答えが、決まっているからだ。


 だったらいっそ、言わせて終わらせたほうが早いのに、圭はそうしない。


「……ずるいですよね、そういうところ」


 鈍感などではない。

 圭は、機敏で、そして性格が悪いのだ。

 普段見せている鈍感さも好青年な物言いも全部、芽榴のために作り上げた性格なのだと功利は知った。


 知ってなお、好きだと。


 すると二人のいる部屋の戸がノックされた。


「失礼します。……圭くん。こんにちは」


 顔を出したのは功利の兄にして、芽榴の彼氏である有利だ。


「こんにちは。稽古だったんですか?」


 袴姿の有利に、圭は尋ねる。すると有利は柔らかい表情で頷いた。


「はい。功利がご迷惑をかけていませんか?」

「いえいえ、むしろこんな美味しいお茶菓子いただいちゃってます」

「お姉さんが作ったものに食べ慣れた、圭くんの口に合えばいいのですが」

「あはは、あれは特別ですよ。普通にこれもめちゃくちゃ美味しいお菓子でした」


 圭は楽しげに有利と話す。

 その顔には一切の曇りがない。

 言葉にも口調にも、嫌みが全くない。


 それが圭の嘘で塗り固めた外面の行き着いた先なのだと思うと、やはり功利は切なくなった。


 どんなにずるくても。

 自分以上に悲しい思いを抱いた人だから。


 ずっと好きだった人には、もう大切な人がいる。


「圭さん……」


 有利がいなくなった後、功利が圭に話しかけると、圭は変わらず「なんすか?」と、にこやかに笑いかけてくれた。


「次は……手作りのお菓子を用意しますね」


 当然、芽榴の作ったものに敵わないものを。

 あえて作ると言った功利に、圭はなんと返すのだろう。


 その、答えが知りたくて。


「マジっすか。そりゃ楽しみにしてます。絶対呼んでくださいね、すぐいただきに来るんで」


 笑顔で、そんなことを言って。


 そのずるい嘘に、功利の心はどうしようもなく奪われる。




読者様からのリクエスト②により、有利ルートの圭×功利でした!


今後もリクエストお待ちしておりますので、twitterやなろうのメッセージ、感想ページなどでご連絡ください〜!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ