(9)
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
・・・沈黙。
私のお母さんと、拓海のお父さんが部屋に入ってきた時から。
もうずっとこんな調子。貝のように押し黙ったまま、誰も、ひと言も口を利かない。
拓海とふたりで、顔を見るなり罵倒される展開を覚悟してたのに。
拍子抜けしてしまうわ。いったいどうしたのかしら?
七海と大地君、きっと心配して待ってるでしょうに。
早く会って謝りたい。心配をかけた事を。そして、あたしの口からちゃんと説明したい。
拓海と赤ちゃんを選んだ、あたしの決意を。
そういえば・・・大女将のテルさんが
「ありゃあ、ちょっとおもしろい子だねぇ」って笑ってた。
この短時間でずいぶん気に入られたみたいね。
名物女将で名の通ったテルさんの心を一瞬で掴むなんて・・・。さすがあたしの自慢の妹だわ。
それにしても・・・・・
「・・・・・」
「・・・・・」
この沈黙・・・すごく痛い。空気が。
胎教に悪いわ。
悪口雑言の罵倒の嵐も御免だけれど。
大の大人が四人も揃って、ぶすっとしたまま口も利かないっていうのは・・・。
まるで子どものケンカみたい。
かなり痛い展開。
困ったわ。どうしよう。
せっかくテルさんが大広間をふすまで仕切って小部屋にしてくれたのに。
少しでも話しやすい気分になればって。
その気遣いもムダにしてしまう。
こちらの主義主張は、もちろん伝えたいけれど・・・。
負い目がある分、真っ先に口を開くのはさすがに気が引けて。
まずは、きちんと叱られてからと考えていたんだけれど。
親の口を封じて、勝手にベラベラ話し出してもいいものかしら?
でもそれじゃ、まるで悪びれて無いみたいだし。
ここは親の顔を一応立てたいのに。
でもお母さんも拓海のお父さんも、沈黙は金なり、を通してるし・・・。
まさか、このまま時間切れを狙ってるのかしら?
でも表情を見る限り、そんな考えでもなさそうな・・・?
本当に困ったわ。どうしよう。
このまま沈黙のままじゃ、意味が無い。
場がもたない。空気が痛い。気ばかり急いて、何も進まない。
本当に困ったわ・・・。どうしたらいいのかしら・・・。
―― ガタン ――
不意に物音が部屋に響いた。沈黙していた皆が、ハッとして周囲を見渡す。
・・・なにかしら?
―― ごそごそ ――
・・・何の音?
―― ヒソヒソ・・・ ――
話し声が聞こえてきた。誰かふすまの向こうに居るの?
やだわ。お客さんが迷い込んだのかしら。これじゃ、ますます話し合いができな・・・
「ね、なんか聞こえる?」
「いや、なんも聞こえねえな」
・・・・・・・!?
この声って、七海と大地君!?
全員が驚いた顔を見合わせて、ふすまの向こうに意識を集中した。




