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「あんた達は黙っていなさいっ!」

「こんな事態を引き起こして家族に迷惑をかけておいて、何を偉そうな事を言ってるんだ!」

「そうよ! 死んだお父さんになんて言えばいいの!?」

「まったく死んだ母さんに対して申し訳がたたないぞ!」


ここだけ妙に気の合ったお母さん達の連携で、お姉ちゃん達の言葉は封じられてしまった。


お姉ちゃんも柿崎さんも、死んだお父さん達を引き合いに出されると弱い。

結婚もしてない男女が、赤ちゃんをつくっちゃったのは事実だし。

それに対してなんの言い訳もできるはずがない。

それにお互い、相手の親に対してはどうしても弱腰になるし。


でも、これじゃ可哀想だよ。当人同士の気持ちも聞かずに、無視する一方だなんて。

こーゆーのって本人達の希望が一番大事なんじゃないの?


「ねぇお母さん、お姉ちゃん達の話も聞いてやって・・・」

「親父、当人同士の意見も聞かないと・・・」


「「子どもは黙っていなさいっ!!」」


お母さんとおじさんに、声を揃えて怒鳴り返された。

子どもって言われたら、あたしも大地も一発で黙り込むしかない。

確かにあたし達は、無力な子どもだから。

なんの力も無い、ただの子どもだから。

こんな重要な局面で、意見する権利なんて無いのかもしれないけど。

でも・・・でも・・・。


「とにかく、こっちは娘を妊娠させられたんですから最悪ですよ」


強い口調でお母さんがおじさんに切りつけた。

それに対しておじさんも、いかにも腹立たしそうに答える。


「だから、うちの拓海だけの責任じゃないでしょう? お互い大人同士なんだから」

「こういう場合、犠牲になって傷付くのは常に女の方なんですよ」

「それは、できるかぎり誠意をもって対応します」

「本当ですね? 弁護士を立てさせていただきますから」

「ええ、こちらも弁護士に相談しますよ」


ポンポンと勢い良く言葉が飛び交う。誠意とか、弁護士とかって・・・。

なんだか事態は収束に向かってるみたいだけど・・・。

これって、良い収束なの?

ねぇ、なんだか一方的に親同士が解決しようとしてるみたいだけど。


・・・・・。

本当にこれで良いの? これが良い事なの?


声も無く、ボロボロ泣き続けるお姉ちゃん。

あたしのお姉ちゃんが苦しんでいる。悲しんでいる。


心の中に違和感が湧き上がる。あたしはその違和感に、自分の心に問いかける。

これで本当に皆が幸せになれるのか?って。

あたしはこのまま、見過ごしていいのか?って・・・。


・・・・・


良くないっ!!!


「お姉ちゃん、柿崎さんっ!!」

あたしは思わず叫んでしまった。


「このままで本当にいいのっ!!?」


良くないよっ! いいわけないじゃん!!

だってお姉ちゃん達、何も言ってないんだもん! 言いたい事も言うべき事も、何も言ってない!


これでいいわけないでしょう!?


だってどう考えたって、これはお姉ちゃん達自身の問題なのに!

その当人同士をまったく無視ってどーゆー事よ!?

あんまりにも非人道的な扱いじゃない!?


「七海! 子どもは黙ってなさいって言ってるでしょ!」

「黙らないっ!!」


あたしはお母さんに怒鳴り返した。

黙んないよあたしは!

確かにあたしは子どもで、世の中の難しい事なんて全然分かんない!

でもねぇ・・・

そんな子どもにだって簡単に分かる事実があるんだ!


「お姉ちゃんも柿崎さんも、自分の子どもを殺すことに納得していないもん!」


明らかに納得していないもん!

だったら、納得させてやってよ!

納得が無理なら、せめてその必要を理解させてあげてよ!


理解できるまで、好きなだけしゃべらせてあげてよ!

怒鳴らせてあげてよ! 泣かせてあげてよ!

それすらもお姉ちゃん達には許されないのっ!!?


そんなの絶対、あたしは納得できないし、しないから!

お姉ちゃんはねぇ・・・


「お姉ちゃんは、お母さんのお人形じゃないんだからね!!」


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