↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
69/100

(4)

「・・・もしもし大地っ!!?」

『一海さん、来たぜ』


やっぱり!? 修羅場に爆弾突入っ!?


『早く来てくれ。時限爆弾が爆発寸前だ』


あぁ! お姉ちゃん――っ!!

あたしとお母さんはタクシーに乗って、大地の家へ急行した。



柿崎家に着いて、あたしはタクシーを飛び出した。

お母さんがタクシーにお金払っている間にインターホンを殴りつけるように連打する。

すぐに扉が開いて大地が顔を出した。


「大地、お姉ちゃんはっ!?」

「とにかく中に入れ」

「お、お邪魔します!」


大地があたし達を家の中に案内してくれた。廊下を歩いていると、すすり泣く声が聞こえてきた。

お姉ちゃんの声だ! 泣いてる!


大地が突き当たりの部屋の扉を開ける。

そこはキッチンだった。なんだか、覚えのある良い匂いが漂っている。


柿崎さんとお姉ちゃんが並んでイスに腰掛けている。

テーブルには、湯気の立つカップが置かれていて・・・

お姉ちゃんは肩を大きく上下させ、泣き続けていた。

柿崎さんは、そんなお姉ちゃんの肩を抱き寄せるようにしている。

そしてその視線の先に・・・


ものすごく難しい顔の男の人が座っていた。

この人が、大地のお父さん?

うわ、なんか・・・ひと言でいうと頑固そう・・・。


おじさんは、あたし達に気付いてイスから立ち上がった。

そしてペコリと頭を下げて挨拶する。


「これはどうも。柿崎と申します」

「どうも。桜井です」

お母さんも頭を下げて挨拶を返した。


え、え―っと・・・。

こーゆー場合って、あたしも挨拶するべきなのかしら?

初対面なんだし。他人の家の中に入り込んじゃってるし。

でもノンビリ自己紹介してる状況でも無いような・・・。


まごまごしてるうちに、おじさんが話を進め始めた。

「どうぞお掛け下さい」

「・・・それでは失礼して」


お母さんがサッサとイスに腰掛ける。

それで席が埋まっちゃって、あたしと大地は扉の近くで突っ立っていた。


「・・・それで今回の件は一体どういう事でしょうか?」


お母さんが一番に口火を切った。

・・・なんか、口調がつんけんしてるように感じるんだけど。


「・・・娘さんから事情はお聞きではないですか?」

「聞きました。うちの娘がお宅の息子さんに妊娠させられた、という事ですよね?」


― シ――――ン・・・ ―


お、お母さ・・・。


全員の間に気まずい空気が充満する。

お母さんの冷たい口調のせいで、室内の温度が一気に下がった。

『させられた』の部分が、わざとらしいほどゆっくりと強調されてる。

ちょっと、そんなロコツにケンカ腰な・・・。


「昔風に言えば、うちの娘は息子さんに傷物にされたという事ですよね?」


あたしの内心の焦りにお構いなく、お母さんは飛ばしまくる。

うわ、これはもう確実に確信犯だ。

お母さん、柿崎さん達に完全にケンカ売ってるよ!


実はうちのお母さんの気の強さも、ハンパ無い。

女手ひとつで、家計と医療費と住宅ローンに立派に立ち向かった、千代ちゃんクラスの女傑だ。

そのお母さんの頭に完全に血がのぼっちゃってる!


・・・やばい~~・・・。

時限爆弾はお姉ちゃんだけだと思ってたけど、もうひとつあった。

こっちのプラスチック爆弾の方が、よっぽど危険かもしれない!


「それは少々、お言葉が過ぎませんか? 桜井さん」

おじさんがムッとした様子でそう返した。


「まるでうちの息子が、お嬢さんを弄んだように聞こえますが?」

「そうでは無いとおっしゃるんでしょうか?」

「当然です。拓海はそんな男ではない」

「ですが現実に、未婚の一海は妊娠させられましたが?」

「その点では、確かにお詫び申し上げます。しかし・・・」

「じゃあ息子さんの不逞を認めるんですね?」

「いや、ですから桜井さん」


ピリピリピリッと緊張感が高まっていく。

冷たく苛立った口調の応戦が、どんどん場の空気を悪化させていくのが手に取るように分かった。


うわあ~、双方のボルテージが上がってる。どうしよう。ますます興奮してきてるよ。

険悪になるふたりの顔を、あたしはハラハラしながら見守った。


「あの、お母さん。僕達の話を聞いて・・・」

「お父さん。私と拓海さんは真剣に・・・」


お姉ちゃんと柿崎さんが、荒れた会話に割って入った。

ふたりともなんとか理解してもらおうと、必死の表情だ。

でも・・・

親という名の城壁は、堅牢だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。