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なんというか・・・もう・・・。

いや、分かるけどね。柿崎さんらしいよ。

通りすがりのドブに落ちた女の子を、背負って家まで送り届ける人だもの。

だからこそあたしは彼に恋したわけで。


あたしは柿崎さんの優しそうな笑顔を思い浮かべた。人の良さ丸出しの、あの笑顔を。


本当にお人好しを絵に描いたようだもんなぁ。

危険だわ。すごく。気をつけないと、あっという間に身ぐるみ剥がされそう・・・。


「先輩の亡くなった御両親の家だし。潰すわけにもいかねえよ」

「それはそーね・・・」

「ただ、悪条件なんだよ。立地条件も店構えも全部」


うん、確かにそう思う。

ごく普通の住宅街に、無造作に建ってるカンジだし。大きな通りに面してるわけでもないし。

人通りが少なすぎるんだよ、あそこ。

しかも・・・

あの外観じゃなあ。カフェだなんて気付かないよ誰も。


「外装まで手が回らなかったんだ。金が無くて」

大地が苦笑いして言った。

なるほどね。花梨ちゃんの説は大当たりだったわけだ。

最初から今に至るまで、経営難ってことね?


でも親友から預かった大切なお店。

なんとしてでも軌道に乗せたい。


「そして親友が帰国する暁には、胸を張って出迎えたいと」

「兄貴にだって男のプライドがあるのさ」


うむうむ、なるほど。よく分かった。


「一海さんが料理の面で協力してくれてんだけど、なかなかなぁ」

「お姉ちゃんが?」


ふんふん、なるほど。それもよく分かる。


お姉ちゃんの料理の味は絶品だ。身内贔屓を差し引いても、すっごくおいしい。

生真面目で、キッチリカッチリ手を抜かないあの性格が幸いしてるんだと思う。


「つまりお店を盛り上げる事ができれば・・・」

「かなりポイントが上がると思うぜ?」


よしっ!! 決まった!!

あたしがこの手で、あのカフェを盛り上げてみせる!


お姉ちゃんの料理が評判になってお店が繁盛したら、ますますあたしの入り込む隙間が無くなっちゃうもん。

それを指をくわえて黙って見ている手はない!


「あたしも今日からお店手伝う!」

「お前が?」

「柿崎さんと一緒の時間も増えるし、一石二鳥だもんね!」

「行くのか? お前が? 店に?」

「もちろんっ!」

「待て待て! また迷子になったらどうすんだ」

「大丈夫、心配ないって! 行く道は覚えてるから!」

「待て待て待て! 帰りはどうすんだ! 帰りは!」


慌てる大地の声は、あたしの耳には全然届かない。

あたしの頭の中は今後の計画設定で一杯だ。


よ――し! 頑張るぞ!!

絶対お店を繁盛させてみせる!!

柿崎さんの感謝度アップ、親密度アップ、そして・・・


愛情度急激アップだあ―――!!

うおおおぉぉ――――っ!!


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