↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/100

運命のつまづき(1)

・・・と雄々しく決意したあの日から・・・

あたしのお店通いは始まった。


放課後まっすぐここへ来て、お店のテーブルを拭き、床を磨く。

小さいけどカラフルなお花を飾って。

新聞紙使って窓を拭いて・・・

よし! 今日もピッカピカ! 完璧!


でも・・・

今日もお客さん、来ないなぁ・・・。

新聞紙片手に、窓の曇りをとるふりして小さな溜め息をついた。


たまに来てくれるお客さんは、柿崎さんのお友達ばかり。

常連さんってやつね。

でも同じ顔ぶればかりで新顔が増える気配が一向に無いの。

商売繁盛に、新規の客の開拓は絶対条件なのになぁ。


「七海ちゃん、いつもお手伝いありがとう」


ハッとして、声の方を向いた。柿崎さんが笑顔であたしを見てる。

「七海ちゃんのお掃除は、相変わらず完璧だね」


あぁ・・・柿崎さんこそ! 相変わらず今日も完璧な笑顔ですねっ!!

あたしの顔は赤くなって、一気に心臓がバクバク鳴り始める。


「ごめんね。バイト代も払えなくて・・・」

「そ、そんな! これはお礼のつもりなんですから!」

あたしは思い切りブンブン手と顔を横に振った。


お姉ちゃんがいつもお世話になってるお礼に・・・

っていうもっともらしい名目で、あたしはお店通いをしている。

目的が目的だから、当然バイト代なんて眼中に無い。

それに、ここに来れば毎日柿崎さんに触れ合えるし・・・。

ただ、いろんな意味での成果はまだ現れていないんだけど。


カチャンと奥のドアの開く音がした。

お姉ちゃんと大地が揃って中に入ってくる。


「大地君ありがとう。助かったわ」

「いえいえ。何でもオレに言いつけて下さいよ!」


大地ってばデレデレしちゃってまぁ。

しまりの無い顔しちゃって、みっともなぁ~い。


実は大地も、あれから毎日お店通いをしていた。

野菜を運び込んだり、調理の手伝いをしたり。なんだかんだとお姉ちゃんとの接触をもくろんでいる。


あたしが迷子にならないようにって付き添いの名目で。

すっげ―失礼な名目だとは思うけど。

まぁ、同士で戦友なわけだから。ここはひとつ目をつぶってやろう。


ただ、やっぱり大地も思ったほどは成果を上げられていないみたい。

お姉ちゃんの隣で幸せそうにニコニコしてるだけだ。

お姉ちゃんの大地への反応も、何の変化も見られないし。


「ふたり共、今日もありがとうね」

「もう暗いから気をつけて帰るんだよ」

「あ・・・はい。お疲れ様でした」

「大地、七海ちゃんを頼んだぞ」

「ああ、分かってる。心配すんな」


で、今日もここで終了。

学生さんを遅くまで手伝わせられないって、柿崎さんが言うもんで。

閉店まで柿崎さんと一緒にいられない。

いつも大地と一緒に、ここでサヨナラ、また明日。

そしてあたしは大地に送られ、帰宅する。


トビラを開けて外へ出て、あたしはうーんと背伸びをする。

そして深呼吸して胸の中の空気を全部吐き出した。

黒くてモヤモヤするものを、一気に放出する。

はあぁぁ~~・・・。


「お疲れさん」

大地が笑って言った。

あたしも笑顔で返事を返す。

「そちらこそお疲れ様」


柿崎さんと毎日一緒に居られるようになった。それが単純に、すごく嬉しい。

胸はときめいて熱くなって、足元がふわふわする。すごく幸せで・・・。


ただ苦しみに耐えるだけの毎日じゃなくなった。その部分は確かに楽になったと思う。


でもお姉ちゃんの笑顔を、まともに見られなくなった。

お姉ちゃんの姿を見るたびに思い知る。あたしは裏切っているって。

そんなの分かりきって始めた事だったけれど、やっぱり辛い。


柿崎さんのそばに居られる幸福感。

いつかこの人と結ばれるかもしれないっていう期待感。

大切な実の姉を裏切っている罪悪感。

様々な感情が入れ替わり立ち代わり、あたしの心臓をサンドバッグみたいに叩き付ける。

これは結構キツイなぁ・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。