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ねえ七海、覚えてる・・・?

小学校の帰り道、あたし具合が悪くなって、まともに歩く事すら大変で。

まだ一年生だった七海が、二人分のランドセルも、道具箱も、習字セットも、給食着も・・・

全部ぜーんぶ持ってくれた。


真っ赤な顔して荷物の重みにフラつきながら

『大丈夫だよ、お姉ちゃん』って。



嵐の夜、お母さんは残業で。

家に大人は誰もいなかった時。

停電で真っ暗になってしまって。

お姉ちゃんが転ぶといけないからって、懐中電灯を取りに行ってくれた。

七海、自分が転んでスリ傷つくってたよね。


ちっちゃな明かりの中、二人で抱き合って。

『大丈夫だよ、お姉ちゃん』って。



高熱が出て、解熱剤を飲んでも効かなくて。

そして吐いて、吐いて。苦しさのあまり、涙がこぼれて。

七海が氷枕をつくってくれた。

コンビニに走って飲み物を買ってきてくれた。

あたしの吐いた物まで始末してくれて・・・。


泣いてゲーゲー吐きながら、七海の声を聞いていた。

繰り返される声を聞いていた。


『大丈夫だよ、お姉ちゃん。あたしがついてるから。きっと大丈夫だから』



いつもいつもその言葉が、あたしの支えだった。

魔法のようにあたしを勇気づけてくれた。


全てを諦めていた。仕事も、恋愛も、結婚も。

あたしには無理だって。ありえない事だって。

奇跡でも起きない限り無理だって。


周りに迷惑をかけてしまう。迷惑なんてかけたくない。だから諦めるのが一番良いんだ。

そう信じ続けて生きてきた。


でも拓海に告白された時・・・


これは『奇跡』だと思ったの。

一生にたった一度だけの『奇跡』だって。


この先二度と、死ぬまで一生あたしを好きだと言ってくれる人なんて現れない。

なら・・・

ありえないはずの、起こらないはずの『奇跡』が起きたのなら。


今度は自分自身が奇跡を起こせる力を信じてみよう。

奇跡を育てる力を信じてみよう。奇跡を守る力を信じてみよう。


できるかな? 無理かな? 無理かもしれない。

できないかもしれない。

あとで後悔するかも知れない。後悔するのは・・・

傷つくのは、怖い。


怖いよ。やっぱり、諦めようかな・・・。


諦めかけた、その時。


その時、聞こえたの。七海の・・・『きっと大丈夫』の声が。


あたしをずっと支え続けてくれた

守り、勇気づけてくれた

大好きな妹の魔法の言葉が・・・。



「お姉ちゃん・・・」

「勇気を出そうと思ったの。七海からいつも、もらっていた勇気を」

「・・・・・」

「今、ここで出さなきゃいつ出すんだって」


お姉ちゃんが両腕であたしを抱きしめた。そっと優しく・・・。


「ありがとう七海」

「お姉ちゃん・・・」

「諦める以外の道を与えてくれて、ありがとう」

「・・・・・」

「黙ってて、ほんとにごめんなさい」


胸が、ぎゅっと締め付けられて痛くなる。

自分の十年分の想い。

お姉ちゃんの想い。

守り続けてきた大切な存在。

いろんなものが交じり合って、とても言葉にできない。

あんまりにもたくさん交じってしまって、ごちゃごちゃで。自分でも、よく理解できない。

できないんだけど・・・。


ただ言えるのは・・・

本当に、あの恋はあたしにとって運命の恋だった。

でもお姉ちゃんにとっても


『奇跡の恋』


だったんだって・・・。


全然、軽くも薄っぺらでもないんだ。こんなに重要なものなんだ。


なら

あたしは・・・

あたしは・・・・・

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