第3.25章 神の契約と永遠の愛
~百年の時を超える絆~
闇の城の玉座の間。
仁たちの真実の愛が呼び水となり、魔族の女王ローズ・ブラックの心に、長く封じられていた記憶が波のように押し寄せていました。
「私の愛した人…」
蒼ざめた顔で頭を抱え、苦しげにうめきます。
「優しい笑顔、逞しい背中…なのに…名前が…どうしても出てこない…!」
百年間、心を締めつけ続けた疑念が叫びます。
「何故…私を捨てて裏切ったの…!?」
――だが次の瞬間、心の奥底から温かい光が射し込むように、真実の記憶がよみがえりました。
「違う…違うわ!彼は私を庇って…私を守るために…!」
涙が止めどなく頬を伝い、彼女は声を震わせて何度も紡ぎます。
「そうよ…あの日…光に包まれて処刑されていった…
名前を…お願い、思い出させて…!
シリ…シリウ…シリウス!!
そう!私の愛しい人…貴方の名前はシリウスなの…!!」
その名が聖なる響きを帯びて空間に満ちた瞬間――
長年仕えてきた老執事セバスが、静かに一歩前に進み出ました。
その姿を柔らかな光が包み込み、しわだらけの体がゆっくりと輝きに満ちていきます。
「はい…ローズ・ブラック様…
ようやく…お約束の時が訪れました」
セバスの声に、かつての若き騎士の力強さと優しさが宿ります。
「あの時、光の中で処刑された私は、最期に神に祈りを捧げました。
『どうか…最愛のローズの側に居られるように…』と」
ローズは息を呑み、輝きの中の彼を見つめます。
「神との契約でした…私は転生し、この執事セバスの体に宿りました。
貴女が記憶を取り戻し、私の名を呼んでくださるその日まで、セバスとして見守り続ける…それが定めでした」
光が収まると、そこには――
若々しく精悍な姿に戻り、魔族としての漆黒の瞳と永遠の命を宿したシリウスが、確かに立っていました!
「そして今、貴女が思い出してくださった瞬間…
契約は果たされ、私も貴女と共に生きる永遠の命を授かったのです」
「シリウス…!!」
ローズはもどかしさと喜びに駆け寄り、彼の胸に顔を埋めて泣き崩れました。
「夢じゃない…本当に貴方なのね…!
ごめんなさい…百年も誤解して、貴方の愛を疑って…!」
シリウスは優しく強く彼女を抱きしめ、頬に口づけます。
「いいえ、ローズ。苦しい時も悲しい時も、ずっと貴女の側にいました。
これからは種族も時間も越えて、永遠に共に生きていくのです」
扉が開き、仁・リリス・ルナが静かに入ってきます。
三人は目に涙を浮かべ、祝福の笑顔で二人を見守りました。
「まさに神が見守る真実の愛…」ルナがそっと呟きます。
ローズは顔を上げ、凍てついていた心が完全に解けた優しい笑顔で三人に告げました。
「仁、リリス…貴方たちの愛が、私たちの絆を呼び覚ましてくれた。
感謝を込めて、最高の祝福を授けましょう…」
こうして城は闇を脱ぎ捨て、永遠の愛に輝く光に包まれたのでした。




