第29話 このしゃないのかたすみで
日曜日の早朝の地下鉄車内は乗客もまばらで、別にどこに座ろうと関係ないはずではあるが、車内
端の席に座ってイヤホンをした。
画面には柔らかな光を受けた白のローチェストの上に、はなちゃんが投稿していた小さなクリスマスツリーとニャンタと命名されたサンタ衣装の子猫とその他同じ背丈のぬいぐるみ達がならんでいた。
「よっしー、、、甘えたくなっちゃったのー?
仕方ないなー、こっちおいでー、よしよーし、
ぎゅー、うぅ、恥ずかしぃ…」
はなちゃんの声は大好きなvtuberひなーのこと橘ひなのに良く似ていて少しハスキーな甘いボイスにニヤニヤが止まらなくなっていた。
瞬間、我に返り辺りを見渡すが、ただでさえ数人しかいない客で、スマホを見るか腕を組んで眠っているかの状況で、隅で挙動不審なおっさんに関心を示すものなど皆無であった。
早速、感想をはなちゃんに送る。
〝は一、耳幸せ
幸せなのに
すごーい恥ずかしい
これが、はなちゃんが味わってきた感
覚か一笑〟
〝はなちゃん今までよく生きてたね笑
はなちゃんの声かわいくて
すごーい好き
イメージと一致してたびっくり〟
〝恥ずか死中...
にやけない?すごい。
私の声云々じゃなくて笑笑 〟
〝にやけっぱなし笑 〟
〝周りから見たら変な人だよね笑〟
〝うん笑、車両端に避難中笑笑〟
〝わかる笑笑 〟
〝早朝で助かった〟
〝確かに。満員電車だと逃げ場ないもん〟
〝笑笑 〟
〝できれば削除していただきたい...〟
〝しあわせだ
削除?
何...寝言?よしよーし〟
〝記憶もデータも
あ、、ひどっ〟
〝よい休日を笑笑〟
そうこうする間に職場のある最寄り駅に着く。
おもいがけず、よいプレゼントをもらえた。
惜しむらくは、はなちゃんが甘えてくるボイスが欲しかったんだが、まさか、贈ってくるとは思ってなかったので雑なお願いを叶えてくれた形だ。
駅を出るとみぞれが降っていた。




