スカルド到着
改札を通り駅を出ると、今まで見たことのないほど街が人々で栄えていた。まるで夢を見ているかのようだ。
「すごい人ですね」
「そりゃあ、ここはサノロイド一の大都市だからな。ウォスクやセパンと違って、辺りを見回しても人であふれているな。人ばかりだ」
さて、せっかくスカルドに着いたし、まずは何をしよっかな。
向こうのパン屋には異様に行列が並んでいる。それだけ集まるってことは美味しいんだろうな。今は無理そうだから空いている時に寄ってみるとするか。
とりあえずベットおじさんに聞いてみよう。
「ここからどうしましょう?」
「そうだな。とりあえず俺らの住処を探さないといけないな。そのためにもまずは不動産屋に相談しないとな」
「でもこんなに店が多いし、地図が無いと分からないですよ。近くにこの街の地図はありますかね?」
僕らは街の地図のために、辺りを散策した。
人で行き止まりになる場所もあったが、屈せずかき分けて進んでいく。
そして、遠くを見渡すと街の地図が載っていると思われる場所が見えた。
「多分あそこだと思いますっ!」
「よし、進むぞ」
この辺りはそこまで人が集まっていなかったので楽に進むことができた。
そしてようやく目的の場所に着いた。やはり街の地図が載っていた。
「はぁ、やっと着きましたね。えっと、不動産屋はどれどれ……」
僕は不動産屋の位置を探った。
どうやらここから右奥に時計塔があり、その付近に不動産屋があるみたいだ。
「あっ! あのすごく大きな建物が時計塔か!」
ふと目線を上に向けると、うっすらとひと際建っている建物が見えた。間違いなくあれは時計塔だ。
「不動産屋は時計塔の近くにあるそうです。さっそく行きましょう!」
僕らは時計塔に向かった。
時計塔の奥は雪の積もった草原が広がっていて、そばには透き通った川があった。
時計塔とそこまで離れていない位置に不動産屋を発見した。
「ありましたね! 不動産屋!」
「よし。では中に入るとしようか」
早速僕らは、不動産屋に入った。
「いらっしゃいませっ!」
入った瞬間、店員らは僕らを生き生きとした返事で迎えた。
「ご用件を伺ってもよろしいでしょうか?」
店員の一人が僕らに近寄った。
「セパンから来た者で、なんでもいいから住処を探していたところなんだよ」
「ああ、それでしたら丁度空いている住宅がありますよ。ただし団地で、あなた方が納得いくかどうか……」
店員が不安そうな表情をしている。
結構古い建物なのだろうか。
でも、行ってみないと分からないよね。
「あ、いや問題ないよ。俺らは住めるところさえあればいいんだからさ。とりあえず案内してくれ」
「そうですか。では、一緒に行きましょう」
僕らは店を出て、店員は店の裏にある車を出してきた。
車は全面が黒塗りで高級な雰囲気が漂っていた。
「さあ、乗ってください」
僕らは車に乗った。
椅子はまるで自分を包み込むようなぐらい、柔らかかった。
そして車が動きだした。
「三十分くらいで着きますからねー」
「結構遠いのですね」
一体どんなところなんだろう。気になる。
住む場所が決まったら、僕が気になっていたパン屋に行ってみようかな。まだ混雑していたら嫌だなあ。あの行列まだ続いてそうだし。
しばらくパン屋のことを考えていたその時。
あ、そうだ。
ふと、少し気になっていたことを思い出した。
「あの、ベットおじさん」
「どうした?」
「目的のスカルドに着きましたけども、ベットおじさんはここからどうするのですか? セパンに戻るのですか?」
ベットおじさんが同行で僕の旅に協力してくれたけど、これだけは聞きたかった。
もしセパンに戻るのなら僕はまた、養子として出されなければならなくなるのか。
「正直俺はスカルドに着いたら、セパンに帰ろうかなと思っていたけれど、それだと君を養子として出さないといけなくなるんじゃないかと思って。流石に可哀想だろ、あの時のように出て行かないといけなくなるのはもう嫌だろ? だから君がいい歳になるまでは俺が面倒見てやるよ。俺だから迷惑かけてしまうだろうが許してくれな」
「ありがとうございますっ!」
ベットおじさん、神だ。
嬉しさのあまり、ウキウキになった。
「そのためにもまず、スカルド魔法学校についての情報を収集するよ。カノフもだし俺も分からないところあるからよ」
「そうですね」
そして車が止まった。
「着きましたよ」
「私たちから見て、一番手前のがそうです」
僕らは車から出て、店員が言っていた団地を見た。
確かに外見は少し古っぽさがある。
裏にある階段を上って目的の部屋に入った。
中もやはり古びた様子だった。
「申し訳ございません。こんなものしか提供できなくて……今のところ空いているのがこの団地しかないもので」
「いや、いいんだよ。確かに少々築年数が経っていそうなところがあるけど、住処が見つからないよりはずっとマシさ。じゃあ俺らはここにしようと思う。カノフはどうだい?」
「はい。僕もここで決まりです!」
そうして僕らの住処が決まった。
♢
「ベットおじさん」
「どーした?」
住処が決まり、せっかくなので僕が気になっていたパン屋に行きたい。
夕方で流石に人は空いているだろう。
「街にパン屋があったのですが、なんかちょっと気になって」
「そうか。ここから結構遠いと思うが……もうすぐで夜だし、明日の朝か昼にしないか?」
言いたい気持ちは分かる。
でも人でいっぱいになって、長時間並ばざるを得なくなってしまうかもしれない。
「今がちょうどいいと思ってるのです。ベットおじさんが言っている時間帯だと、人でいっぱいになって長時間並ぶ羽目になってしまいますよ」
少しの沈黙の末、ベットおじさんは口を開いた。
「……わかった」
「やったーっ!」
ベットおじさんに認めてもらい、嬉しくなった。
僕らはパン屋に向かって歩き出した。
歩くごとに地面の雪がザクザクと音を立てる。
とても冷え冷えとした風が、顔にぶつかるので顔がすごくピリピリし、鼻水が垂れてしまっている。
それでも、僕の願いの店に向かって懸命に進む。
「この時に見る時計塔は綺麗だな」
「そうですね」
やっと時計塔付近にたどり着いた。
時計塔の上部分の大きな時計は七時を指していた。
街の方を見ると、店の暖かい明かりが僕らの冷えた体を温めてくれる感じがした。
イルミネーションのようだ。
街の中に入った。
人は結構いるが、人混みが発生している程ではない。
パン屋もこの調子で混んでいないことを祈る。
そして目的のパン屋に着いた。
スカルドに着いた時の混雑した感じがすっかり無くなっていた。良かった。
「ほんとだな。人が混んでいない。カノフの言っていた通り、今日来てて良かった」
「ホントに良かったです」
では、中に入るとしよう。
すぐさま、中に入ってみた。
中はパンの匂いが漂っていて、ゆったりした気分になる。
「いらっしゃいませっ!」
「どれにしよう?」
メニュー表にはメロンパンやクロワッサンなどの定番のパンが載っていた。
「じゃあ、僕はコロネで」
「そうか、クロワッサン美味しそうだな。俺はクロワッサンでいいよ」
「お買い上げありがとうございましたっ!」
僕らは店の奥の席に座って、パンを頂く。
「カノフはどっちから食べる派だい? コロネと言えば頭から食う派と尻尾から食う派があるけども」
「僕は尻尾から食べてみようと思いますよ」
「そうか、尻尾もいいよな」
コロネを尻尾からガブリと行く。
そして徐々に頭の方も食べる。
頭部分にぎっしり詰まっているチョコが、なめらかで甘くて美味しい。
「クロワッサンはどうですか?」
「うん、すごく美味しいね。サクサクの食感がたまらん」
「ああクロワッサンにしておいた方が良かったかなあ……」
「いやこっちこそコロネにしておいた方が良かったまでだと思っているぞ」
あらためて、今日行って正解だった。




