7話 儲け話し 4
お久し振りです。長期間の活動自粛をしておりましたがボチボチと復帰しようと思います。リハビリがてら本当に少しずつですが投稿しようと考えています。
スラム街らしい今にも倒れそうなボロ屋や、古くなり倒壊しそうな家屋の間を通る細道を歩いて行くと周囲の建物がややマシなものへと変わっていく。
歩きだして10分ほどすると街の一般市民が住むのとほぼ変わらぬ家々が建ち並ぶ中にそこそこ立派な小規模な屋敷が姿を現した。
「大尉、ここは?」
視線を周囲へとはしらせて警戒しつつ、小声でマヤ一等兵が聞く。
「ドルーア一家の本拠地だ。周囲のまともな家に幹部とその家族が住み、屋敷が親分の住居だ。あまりジロジロと見るな、初見のマヤ一等兵が居るの
で下級構成員が少し殺気立っているようだ。ダウン街に入る前の指示は覚えているな?」
屋敷へと視線を向けたままマイヤー大尉が腹話術の応用で口を開かずに話す。
「『撃て』か『暑いな』と大尉が言うまで発砲しない」
大尉の意図を感じ取り、マヤ一等兵もなるべくドルーア一家の案内人に聞こえない大きさの声で応える。
「良し。その指示はまだ有効だ。私に何が有ろうと、自分に銃口が向けられようと銃を抜くな」
「了」
ここまで先に立ち、案内してきたドルーア一家の幹部のスミレが振り返る。
「大尉が我が家に来られるのは2ヶ月ぶりでしょうか?」
「そうですね。他組織との抗争に銃火器が必要ということで商談に伺ったときですな。抗争は治まりましたか?」
上官がさらっと武器の横流しに言及したのにマヤ一等兵がぎょっとする。
「ええ、大尉に頂きました短機関銃が取り回しが良くて大層活躍したそうです。抗争は治まりましたが今でも弾薬は継続購入させて頂いてます」
「おお、そうでしたな。ついうっかりで失念していました」
大尉は大袈裟に反応する。スミレは些か疑問げに、
「あら、道中で考察していましたがその契約の件ではないのですか?アレはイストレア連邦製だったと記憶していますがそちら方面でトラブルが有ったとか」
と先日のマイヤー大尉のブカレスト帝国とプガチョフ大尉の横領により発生したイストレア連邦との戦闘について情報を得ていると仄めかす。
「いえいえ、充分な在庫は有りますし、伝を使えば連邦の同志からの追加購入は十分に可能です」
マイヤー大尉の潜在的な敵国である連邦の人間を『同志』と呼ぶ危険な発言に憲兵の耳が無いかとマヤ一等兵は再び戦慄する。
先日の戦闘はアナンの街に重武装した密輸組織が帝国軍に追われて逃げ込み、駐留していた連邦軍と交戦し、帝国・連邦双方に被害が発生するも密輸組織は全
滅した、という擬装物語が公式発表とされていた。
実際には多大な損害を被った連邦軍にはアナンの街を統治する力は無く、また死亡したプガチョフ大尉が裏取引で不義理を働いたこともあり現場の将校達の談
合によりダナン共和国の支援の為に連邦軍は駐留していたが、ダナン共和国の民間人である密輸組織のせいで軍に被害がでたのは不愉快だ!として連邦軍はアナ
ンの街より離脱すると発表した。
これにより軍事力の無くなったアナンの街に帝国軍が駐留することが可能になり、連邦も裏で不義理の代償をした形となった。
世間の認識では連邦と帝国は戦っておらず、連邦が自軍の損害を厭ってアナンの街から居なくなり、その穴を帝国が上手く埋めた、ということになっている。
実は連邦と帝国は戦闘をした、という事を知っているギャングの関係者であるスミレと、そんな小競り合いを頻繁にする連邦の軍人を同志と言うマイヤー大尉
の発言は危険を孕んでいた。
「実は御存じの通り、アナンの街を帝国が管理することとなりました。つきましては・・・・、」
大尉はスミレの耳元に囁く。
「連邦に卸す予定だった阿片と大麻の在庫とアナンの街の薬物販売ルート、長女であるサクラ嬢を後継者争いから追い落とす為に、お父様ではなく貴女が買いませんかスミレ嬢?」
マイヤー大尉の笑みは後ろめたい事など何一つ無いという風の、悪魔の笑いだった。
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