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覇王セリスの後日談  作者: ダンヴィル
五章、少しの緊張と長い休日
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店と従業員


 11月20日

 すっかりと冷え込んできた季節。

 アシュリーとお父さんは見慣れた厚着姿で見た感じも鉄壁の守りと表現できるくらいで見ていて暑いですが、それくらいしなければ覚醒もしていないドリーミーとしては辛いんですよね。


「できた……できたあぁあぁぁぁ………」


「お疲れ様、後は任せておくれ」


 そんな時期の暖房の無い冷たい一室。

 集中が切れて一気にダレた私と熱を持ったセリス。

 そして私の身長より大きい黒髪の人形がそこに居ます。

 最後の仕上げとしてセリスが石を嵌め込み封をして……


「終わり!本当にありがとうメリル……いや~長かった!

 あの地下にあった魂の生成に使う魔法具の殆どが消し飛んでたから諦めかけたけど、諦めなくて本当に良かった」


「そうだね。セリスが手伝ってなんて言い出した時にはどうしたかと思ったけど、これは本当に大変でしたね」


「別に言い出してはないよ?聞かれたから話したのだからさ」


「はいはい」


 9月頃、セリスの甘えてくる頻度が増えたのでこれは何かあったなと気付きつつも話すまで気付いていないふりをしていたんですよ。

 私がそんな意地悪してたのはその時のセリスがあまりにも可愛いかったのがいけない。あんな可愛いとついちょっかいかけたくなりますから。

 けっきょくセリスは自分から話さず「意地悪しないでおくれ」と甘えながら泣き言を言い出したので、

 あ、これは不味いな。

 と判断して私から聞くことになりました。


 それで、甘えてくる理由は魔法具が無いから魂の生成ができないというものでした。

 セリスの言った「魔法具が殆ど消し飛んでた」は文字通り消し飛んだんですよ。

 具体的に言うとネームレスの住みかだった地下でミィさんが暴れまわった結果回収できずに消し飛んでしまったのが必要な魔法具だったらしいです。

 セリスが窃盗した資料では魔法具があることを前提とされていて無くても大丈夫なよう改良を重ねていたところ、どう足掻いてもセリスでは不可能な魔力操作精度が要求されるらしく私が入ったのですが、実際大変でした。

 声かけられても一切気にしてられないくらいの集中でようやくできたんですよ。


 魂の入れ物である魔石から作ったソウルストーンを心臓の代わりに埋め込んでようやく完成しました。


「ところでレーナさんでしたっけ?

 この人いつ起きるんですか?」


「さあ?それとレーナじゃなくて霊菜ね」


 今回作ったのは完全自立魔法人形というゴーレム種の人類です。

 モデルにしたのは神崎霊菜という人は、セリスの世界にいた刀と札術を使う巫女さんで過去の出来事を見せる魔法で見せてもらったのですが、私から見て霊菜さんとはどう見ても死んでしまったセリスの友達です。


 外見は珍しい黒髪黒目をした綺麗な感じの人でとても真面目な堅物という印象の女性ですね。

 彼女と出会った頃は心の余裕があまり無く、セリスにとっての認識は「敵ではない」のみでその関係性はとても歪なものでした。

 逆に霊菜さんにとってのセリスは復習の鬼と化した母親と似たような精神状態で他人事に思えず放っておけないという印象を受けました。


 友達だと認識してなかったのは彼女がミィさんみたいにグイグイ行く感じの性格でなく、待ち構え受け止めるタイプだったのが大きいでしょうね。

 彼女の死因ですが、黄泉の世界への亀裂から溢れ出した悪鬼達を封印する為に自らの命を代償にした事です。

 その悪鬼の中には生前闘神とまで呼ばれた彼女の母親まで現れ、その母親の破壊行為を見ていられなくなった事により行動に移しました。

 母親と再開したからこそ、母親と似ているセリスの事を最後まで気にかけていた様子でした。


 そんな彼女を友人と認識していなかった事を信じられないと少し強めに責めてしまいましたがセリス自身も何故彼女を友人と思えなかったか今考えたら理解できないと話してましたので、この辺を掘り返すぎるのも酷だと判断して止めました。


「むぅ……発音難しい」


「私も難しいと思うからレーナでもいい気がするけどね」


「じゃあレーナで良いじゃない。

 このレーナさんはレーナさんじゃないんですから」


「そうだねぇ~。巫女装束を着せたり刀を持たせる予定も無いからレーナで良いね。しかし起きないね」


 横たわる黒髪美人なレーナさんは未だに目覚める気配はない。

 確かに呼吸をして空気中の魔力を吸っているので稼働しているのは確かなのでその辺は全く心配していません。

 なにせ私とセリスの傑作中の傑作ですから。

 しかし……


「完全密封した直後ですから仕方ないのですが、流石に全裸なのは不味いですね」


「着せる服ならもう決まってるのだけど……」


「歯切れが悪いけどまた何か企んでました?」


「またってそんな事無いだろう?」


 私の誕生日に国宝みたいな杖渡しておいてよく言いますね本当。

 あの杖はナレッジスタッフと名付けたのですがそれは置いておいてセリスです。


「それじゃあどうしたの?」


「いや……実はサプライズで従業員用の制服を用意していたんだ。ほらコレ」


 立ち上がり取り出し見せてくれたのは黒を基本とした白いフリフリが沢山付いたやたらボリュームを感じる服。


「今手元にはこれしか無いから」


「クローゼットにしまってますからね。

 しかしこの服、昔話に出てくるような魔法使いの服を意識しているのはわかるけど……なんというか、凄く可愛い?」


「これ制服にしたいんだけど、メリルに一番に着てほしいなぁ~って」


「この服を制服に?

 いやいや、今だからギリギリ良いかもしれないけど歳とってからは流石に……」


「外見の話かい?それなら意識的に変わろうとしなければ変わらないから問題無いんじゃないかい?」


「え……」


 これは……また唐突にとんでもない真実を突き付けられた気がしますね………え?私の外見年齢はこれ以上変化しないって事ですか?

 それよりそれって……


「つまり寿命で死なないって事ですか?」


「ただいまー!お風呂入るー!」


「あ、おかえりなさーい」


 最近聞き慣れたミューズのただいまが響き渡り、変に重くなった私の空気が軽くなって苦笑してしまいました。


「……で、寿命。どうなるの?」


「寿命はあるよ。ただ若さが保たれるだけで。

 むしろ若さを保たれる分、直感とかが衰えないからより鮮明に寿命が近付いている事を理解できてしまうって話は聞いたことがあるね」


「そうですか……なら良かった」


 ……良かったのでしょうか?

 安心したような不安を抱いたような……複雑な気分ですね………


「………わかった。良いよ、着ようかその服」


「ありがとう!」


 この複雑な気分をとっとと追いやってしまいたいですからね。

 深く考えずその場に流され楽しんでしまいましょう。


「ただしセリスの分もあるんだよね?ならセリスも着てよね」


「もちろん良いよ」


 私の分とセリスの分、あとレーナさんの分で3着が並び、魔力を流しクイックチェンジを使用し一瞬で着替える。


「それ………お揃いなんですよね?」


「そうだね、お揃いだね」


 そう嬉しそうに答えてくれる私とセリスを比べる。

 鏡にいる私はやはり身長が低く、只でさえ子供っぽさを感じさせる見た目をしているのに尚更子供っぽさが強調されているかのようです。


「………なんか納得いかない」


 対してセリスは同じ服とは思えないほど格好いい。

 私がちょんって感じならスラッとした感じと言いますか、何処か大人しすぎて質素にも見えるのをレースでボリュームを増していて余計な飾りを付けると逆に形が崩れると思うくらい綺麗で……


「誰が着ても似合うデザインにしたつもりだからね」


 セリスのそういった所のセンスは疑っていませんけど、私の思っていたよりも二回り程良かったと考えるべきですかね。


「それはともかくいつまでも裸なのは可哀想だし着させてあげましょ」


「おぉ………その重量でも平気なんだね。少し驚いたよ」


「え?何の話?」


魔繊手(ませんしゅ)が」


 魔繊手というのは私の背中にある羽から伸びる細かく細い何万もありそうな不可視の魔力の触手みたいなモノの事です。

 名前はセリスが付けてくれました。

 普段私が浮いているように見えるのも魔繊手で体を持ち上げて移動しているだけで実際に飛んでいる訳ではありません。


 その魔繊手でレーナさんを持ち上げて服を着せていく。


「まあ自分の体重を支えられるのですからこれくらいなら余裕ですって」


「お姉ちゃ~ん、ミューズちゃん帰ってきてたよね?今どこ……に…………」


 開いて部屋の中を覗いたアシュリーが固まってしまいました。

 セリスの作った人形はどれもこれも生き物と誤認するレベルの完成度ですし、現にレーナさんは魔力生命体というカテゴリーのゴーレム種の人種……つまり私達と変わり無く生きてますからね。呼吸もしてますし。


「見ておくれアシュリーちゃん、これ前から話してた人形でやっと完成したんだ」


「あ……あ~………うん、人形、うん!人形!

 …………えっ!?人形ってそんな凄いの!?」


 私が何か言うよりも早く嬉しそうに話す。

 魔力は抑えられてますけが、セリスにしては珍しく興奮していまして、よほど嬉しかったのんですね。


「触っても良い?」


「それはレーナさんが目覚めた後確認してからにしなさい」


「メリルは触ってるじゃないか」


「不可抗力だって分かってて言わないで」


「ふふ、ごめんごめん」


「まったく……」


 ここまで浮わついた雰囲気のセリスは本当に珍しいですね。

 人形が好きって言っていましたが、ここまで喜んでいる姿を見ると少しだけ妬ましい気持ちになってしまいそうです。


「はい、着替えさせたよ」


 レーナさんは予想通り綺麗な感じでセリスと似た雰囲気に仕上がってるけど黒が多い。

 髪も黒いしローブも黒くてスカートも黒い。

 黒の比率が


「今更だけど何でお揃いの服なの?」


「セリスがデザインしたんだけど私のお店の制服なんだって。

 確かに魔法商店になるんだから魔法使いっぽい服装なら強いイメージ与えられるかもしれないから許可出したのだけど……どう?」


 自分で子供っぽいとわかってるのでスカートを軽くつまみわざと子供っぽく全体を見せる。


「似合ってる!可愛いよお姉ちゃん!」


「あ……ありがとう?」


 あれ?わざとからかわれる感じの振る舞いしたのにアシュリーから感じるのは尊敬や憧れに近い感じ?


「アシュリーちゃんの分もあるよ」


「え、いや、お姉ちゃんやセリスさんは似合うかもしれないけど私は~……」


「せっかくだし着てみたら?

 いろいろ付与魔法が着いていて便利だし、何よりセリスがアシュリーの分って用意してくれたものだよ?」


「あ、そうか…………じゃ、じゃあ少し着替えてくるね」


 アシュリーはセリスにかなり懐いていますからね。

 有名人みたいに身近にあるけど遠い存在みたいな風に思っていますから「自分の為に用意してくれた」という風に思わせれば恥ずかしい気持ちより嬉しい気持ちの方が強くなるのは当然です。


「………ところで、何でアシュリーの分まであったんです?」


「アシュリーちゃんって猟師だろう?

 転移魔法具を設置していく予定だったし、アシュリーちゃんが暇な時期とかお金が欲しい時にでも仕事してもらえないかなって思ってさ。

 少なくとも猟師生活より実入り良いだろうしね」


「なるほど、確かにそうですね」


 アシュリーが部屋を出たタイミングで聞いてみたけど確かにそうだと納得した。

 元々転移魔法具なんて高額すぎるモノを設置する予定は無かったのですが、実家でのミューズの様子からして都会にずっと縛り付けるのは可哀想なんじゃないかという話になりまして、ミューズ本人に一緒に来るか、このまま実家でアシュリーと暮らすか聞いてみようかという相談をセリスにしたら設置しようという結論に至りました。



 ・



 アシュリーが部屋を出て少ししてミューズも戻ってきたので着替えてもらいました。

 なので今この部屋は黒の服を着た人しかいません。

 どっかの宗教の儀式のような光景にも見えなくないのですかね?

 しかし5人も居ると流石に狭いですね。


「……という事でアシュリーにもお店の手伝いしてもらいたいって考えてるんだけどどうかな?」


「そういうのって私達が勝手に決めて良いの?

 ほら、商業ギルドとかで契約してプロの人とか雇うものじゃないの?」


 二人の姿について軽く感想を述べた後に先程セリスが口にした提案をアシュリーにもその分かるように説明する。

 私もアシュリーもお父さんが子供そっちのけであまりにも没頭するもので魔法に良い印象持ってなくて無意識的に嫌悪していて知ろうとしないんですよねぇ。

 私は旅をするのに必要だと思ったから覚えましたがアシュリーはテイマーとして天才とは言えないけれど、都会に出ようが並みより優れているくらいでして、この田舎で一生を過ごす分には敵無しでして十分な訳です。

 なのでアシュリーはセリスに出会った頃の私よりもずっと魔法に疎いので理屈じゃなくて何をどうしたらその結果になるという感じの説明だけをしました。


 そうして出た最初の質問がまさかの契約的な事でした。


「商人でもないのに真っ先にその質問が出るとは思わなかったな」


「え?冒険者って契約によってしっかりとした仕事するって習ったけどコレって似たようなモノじゃないの?」


 あぁ、言われてみれば確かに似ていますね。

 むしろこう言った依頼は商人というより冒険者の雇用条件に似てます。

 冒険者は本職が安定しないので今アシュリーに提案しているような雇用条件で雇い、本職である冒険者の仕事の方が優先されます。

 もちろん一度仕事に入ったなら余程の緊急事態が起きない限りその日は冒険者ギルドではない方が優先されますけど。


「世の中人件費ってモノと信用買いってものがあるんだけど知ってる?」


「知らない」


「ならこれだけ知ってれば良いかな。

 人件費は雇う人の質……できる事とかによって払う代金が多くなる。

 信用買いって取引方法が存在するくらい信用は商人にとって大切なものって事。

 アシュリーには実感無いかもしれないけど、私達ドリーミーはドリーミーというだけで差別の対象になっている事は今の世間でも少なからずあるから手軽に信用できる存在を雇えるなら雇っておきたいのよ」


「なるほどね~。信用はできるけど方言しか話せないし計算あんまりできないから掃除とかお留守番しかできない私は人件費が安く済むって話ね」


「それでも日給これくらい出すわよ?」


「……何それ?」


 指一本立てたけど伝わりませんでした。

 そうですよね、商人じゃないんですもの。


「指一本で銀貨1枚って意味」


「やる!」


 即答ですか。

 フレイ村ではお金でのやり取りが少ないですが、村を出て三時間程歩いた村では普通に使われますからね。

 問題は村を出るまでが遠いのですがそれは置いといて、アシュリーの働きで一回の売買で得られるのは多くて銅貨25枚といった所しょうからかなり多いはずです。

 ちなみに現在の相場だと銅貨38枚で銀貨1枚分相当です。


「……って、銀貨1枚って多くない?」


「そうかしら?商人見習いの月銀貨10枚という所だし、技術を持った従業員なら25枚。偉い人なら金貨だよ?」


「お姉ちゃん金貨なの!?なんか怖い……」


「怖いって何?

 それに私は金貨じゃなくて店の収益イコールを割ってパーセントで導き出すから……」


「私もメリルも店の収益次第でいくらでも左右するからねぇ」


「そうなんだ……お金稼ぐのって大変だよね。

 でもメリル様とセリス様の魔法具なら大丈夫だよ!」


「ありがとうミューズ」


 実はミューズの給料は見習いの銀貨10枚なんだけどまだ大金を持たせるの怖いからお小遣いという事にして半分だけ手渡しするつもりです。

 代わりに衣食住不自由無いようにしますし残りの半分はミューズの口座を作って貯金しておく予定となっています。


「わかった。それでいつ頃何てお店で私は働く事になるのかな?」


「何て店って……」


 ハッ!とセリスと顔を見合わす。

 ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って……


「そういえば……実家に来てからゆっくり決めるって話だったよね………」


「そうだね。でもそろそろ商業登録とかもあるから12月の初めの頃には商人のミカエルに報告しないと不味いよね」


 私はともかくセリスまでそんなミスを?

 今までのセリスの様子を考えればそれは良い変化な気がするけどこのタイミング……

 いやいやいやいや、それより私も何で自分の大切な事を忘れるのかな!?

 一応言っときますが名前を付け忘れたではありませんよ、名前を付けなくてはならない期日を忘れていたんです!


「と、とりあえず皆で考えよう!何か良い意見無いかな!?」


「メリル愛護団体」


 なんか今……一年過ぎたセリスとの付き合いで初めてイラッとしましたよ。


「……ごめんごめん、冗談だよ。場を和ませようとしてね。

 慌てた時こそ深呼吸。一回冷静になってから行動しないと誰も救われない結果しか訪れないからさ。

 慌てたまま行動するとここぞとばかりに不幸は畳み掛けてくるから、ね?」


「なんか……凄みのある言い分ですね。経験談ですか?」


「経験談だよ」


 セリスの経験談ですか……そうですね、その忠告は素直に聞き入れましょう。

 一度大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。


「よし、改めて考えよっか」


「良かった。慌てすぎて変な敬語出てたから心配になったよ」


「出てた?」


「うん。お姉ちゃん叱る時は全部敬語になるよね。

 言葉遣い丁寧な分余計に怖いっていうか……」


 それは……意識してませんでしたね。

 最近は意識的に言葉遣いを昔に戻そうとしてましたけど、修行時代と行商時代で中々抜けませんね……

 役に立つものですから完全に無くなるより良いですが。


「お姉ちゃんお姉ちゃん!思い付いたよ!

『魔法使いの舞踏会』はどう!?

 ほら、こんな魔法使いみたいな制服で統一してる店なんて他に無いんじゃないの?

 私都会になんて片手で数えられるくらいしか行った事無いけど……」


 アシュリーの言う都会は町ではあるけど都会じゃないんだけどそんな細かい事は置いておくとして……


「確かにそうね。こんな本格的に魔法押しな店は無いんじゃないかしら?

 魔法って使える人が限られてて魔法使いそのものが近寄りがたいっていうのがあるけど、私はドリーミーだから今更なのよね」


「都会だとそんなになの?」


「場所にもよるけど魔族だって子供に指差される事もあるわよ」


「なにそれ……都会怖くない?」


「それを踏まえてのこの額だからね。

 そう言われてしまうのも仕事の一つだよ」


「なるほど……」


 アシュリーが露骨に難しそうな顔したけど日給銀貨1枚は魅力的なんでしょうね。

 銀貨一枚あれば都会で6日は暮らせ、こんな田舎ならそもそも必要無いけれど、他所の村や町に月1で遊びに行くとしても一年は持ちますから。


 それでもこの鳥好きは仕事より鳥を第一に考えるのでそんなに入ってくれないだろうという事を考慮して銀貨1枚という強気の金額を提示しているのが最も大きいのですがね。


「その事は置いておくとして魔法使いの舞踏会ね。

 とりあえず一案として書いておこっか」


 サラサラッと紙に魔法使いの舞踏会と記入する。

 うん、何故でしょう。お腹の底から熱くなるようなこの高揚感。

 凄く気分が良いです。


「お姉ちゃんは何か案無いの?」


「それが……浮かんでは却下を繰り返してて纏まらなくて」


「どういう事?」


「メリルはずっとお店を持ちたいという熱い意思で行動してたから軽々しい名前なんて付けられなくなってしまっているんだと思うよ。

 それこそ、死にかけるくらい努力して得た結果だし」


「死にかける……どれだけ大変かはわからないけど分かった」


 アシュリーは大好きなモノで努力するような事はありませんからね。

 大きな鳥が好きなのであってモンスターが好きな訳ではありませんから。

 ですので当然、最高のテイマーとかそんな夢もありませんし、ある意味今の生活は天職なんじゃないでしょうか?


「メリル様、私も言って良いの?」


「もちろん良いよ」


「じゃあ、『白夜の黒三日月』は?」


「なるほど、それ凄く良いと思う。天才じゃない?」


「えへへ」


 セリスが物凄い早さで絶賛したけど何か由来があるのでしょうか?

 白夜……白い夜に浮かぶ黒い三日月?


「えっと、初めて三日月を見てメリル様の羽に似てるなって思ったの。

 それでね、メリル様もセリス様も白い髪で、メリル様の白い髪は凄くかっこよくて頼もしいから凄く印象に残ってるんだ」


「…………なるほど」


 思っていた以上に良く考えられていて驚きました。

 つまりドリーミーそのものを暗示しているという事ですか。

 書類上店の持ち主は私ですから間違っていませんし。


「うん、良いんじゃないかな?アシュリーはどう思う」


「お姉ちゃんのお店なんだからお姉ちゃんが良いと思った案で良いんじゃない?」


「そうね……そうだよね」


 白夜の黒三日月魔法商店……それが私のお店の名前…………


「ふふふふ」


「お姉ちゃん……」


「メリルが幸せそうで良かった」


「それじゃ今から提出してくるね!」


「今から!?」


「テレポーテーション!」


 テレポーテーションで三回に分けて飛び街まで行き商業ギルドで書類を済ませて提出、これで白夜の黒三日月魔法商店として1月1日から私は店主です。


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