わりといつものやり取り
「はぁ~疲れた」
「お疲れ様」
「本当ですよ。まだお昼少し前なのに何でこんなに疲れてるの私」
帰宅して真っ先にお気に入りのクッションを収納魔法から取り出しドサッと畳にうつ伏せで寝転ぶ。
いや本当に疲れた。
ミーネ師匠との再会もエックハルトお爺さんとの再会もすっごく疲れた。
下手な商談よりも神経使った気がしますよ。
「はぁ……ミーネ師匠はともかくお爺さんの方は何事?
なんであんなにピリピリしてたか分かる?」
「彼は相手の力量を測るのが得意なんだろうね。
一目で私やミューズには天地がひっくり返ろうとも絶対に勝てないと悟ってたんだよ」
「そのわりにミューズは一瞬で受け入れてたのに」
「あの子ははどう見ても子供だからねぇ~」
「あ~良いなぁ!私もミューズとアシュリーと遊びたかったですよぉ!」
そして今もミューズとアシュリーは二人で行動してる。
アシュリーは少し苦手意識を持っているように思えたけどミューズはアシュリーの事を気に入った様子で、アシュリーの側に付いてって可愛らしい。
その二人だけど手羽先を戻すついでに教授を見に行きました。
なので部屋はセリスと二人きりです。
「う~ん、かなり参っているねぇ~」
とか言いながら側に座りこんで背中の羽触ってきた。
ワービーストの尻尾に無断で触れたら殴られても文句言えないって知らないのですかね?
まあ私ドリーミーだしセリスだから別に良いですけど。
「実家ですし、別に良いじゃないですか」
「その理屈はよく分かんないけどそうだね」
「よく分からないって…………ごめんなさい!今の失言だった!」
確かセリスって生まれ故郷で悪魔の子みたいに言われて疎まれ続けて最終的に村を燃やしたって話してくれてたから今の発言は失言も失言、大失言です。
勢いよく起き上がり謝罪の言葉を送りますが、言われたセリスの方は柔らかな笑顔で手を振ってくれる。
「大丈夫だよ。むしろその感覚を私に教えてくれると嬉しいんだけど」
魔力からしても本当に気にしている素振りは無い。
ホッとする気持ちが湧きますが、それ以上に私のだらけ具合、安心感がどこから湧いてきているのか不思議に思っている様子です。
「そっか。……って、いやいや、それ呼吸のしかた教えてって言われたのと似た感じだよ?」
「それくらい当然の事なのか……」
むぅ、少し落ち込んでしまいました。
少し行き過ぎた表現だった気もしなくもありませんが少なくとも私からしてみたらそれくらい当然の事ですし。
「あのセリ……」
「ん?」
「んひっ!?」
え?えっ?なんでいきなり足捕まれて足裏くすぐられたの?
ちょっと……やだ!私擽られるの弱いから!
「やーめーて!ナチュラルに足触って汚いでしょ!?」
背中の羽を触って悪戯してきていたのはまだ許すとして足の裏を親指で押してくるのは無視できません!
「靴履いてたけどずっと浮いてたのに?」
「そういう問題じゃ無いわよ」
「だろうね。でも可愛いお足が少し小さくなったなって思ってさ」
「可愛い………え?小さくなった?」
靴下を脱いで近付けたり離してみたり確認してみるけれど……
「…………そんなに変わった?」
私の手足にしては綺麗すぎると言うこと意外の変化は特に無いけど、この変化は覚醒によって起きた良い変化だし良いんじゃないのかな?
「ちょっと測ってみようか?」
「具体的に測った事無いから分からないんだけど」
「大丈夫、実はある計画の為に事前に測っていたんだ」
「セリスがある計画なんて言うとなんか不穏そうに聞こえる………で、計画って?」
「ふふ、ひ・み・つ」
………え?秘密って……まさかセリスが?
一時期私の為なら何だってすると暴走しかけていた時期がありまして、それが原因で実在はしていませんがまるで、
『音声認識で起動し言葉の意味を自動で考え勝手に出した結果通りに動く戦略級大量破壊魔法具』
を所持してしまった権力者にでもなったかのように、自分の発言をかなり気を付けながら生活していた時期があったのに。
そんなセリスが私の質問に対して秘密?
「……そっか、秘密かぁ。
じゃあ教えても良い時が来たら教えてね」
「あれ?てっきりもっと問い質すかと」
「いやいや、しないわよそんな事。
むしろ少し嬉しい。セリスが自分の為に私に秘密にするだなんて言うんだから、今みたいにもっと自分の為に何かをして良いんだよ?
セリスはもう少しだけ自分の事を大切にした方が良い」
「それじゃ足測らせておくれ。私の為に」
「………ふ、ふふ」
じっ……と真剣な眼差しでそんな事言い出して数秒理解できなくて遅れて変な笑いが出てきた。
「な、なんか変態みたい。ふふふふふ……はい、測っても良い……フフッ」
「じゃあお言葉に甘えて失礼するよ」と言いながら私の足を掴み、覗き込んでしまえば吸い込まれてしまいそうなほど真剣な眼差しで私の足を測るものだから、また変な笑いが出そうになりました。
「やっぱり2cm程小さくなってるね」
「え?2cmって、いくらなんでも測り間違いはあり得ないの?」
「このサイズ差を間違えるようじゃ私はとっくに死んでいるよ」
「そうなんだ……大きな事から小さな事まで覚醒って本当にいろいろ変わりますね」
なんか、最後の「できないととっくに死んでいた」というのが無ければセリスが完全に変態に思えるような僅かすぎる違いですけど、実感無いなぁ………
「………完全に暇になったね」
とりあえず靴下を履きなおしてセリスに寄りかかる。
「そうだねぇ。何しよっか?」
セリスも軽くこちらへ体重をかけ、頭の羽を摘まんでくる。
最初は根本を触ってきたりしたけど慣れたものでこうされると凄く落ち着く。
落ち着くから羽をセリスに擦り付け、魔力に酔しれながらセリスの顔を見上げる。
「お酒飲んじゃう?……何?」
「いや、メリルがそんな事言い出すとは思わなくて……
それにもう既に酔ってるように見えるのだけど?」
苦笑された。そんな顔する程意外だったかな?
「実家でセリスと二人きり。
これで遠慮する必要なんてどこにも無いでしょ」
確かに私らしくないと言われればそうかもしれないけど、私としてはこれ以上の理由なんて無いし、外やミューズの前ではしませんって。
どこに目があるか分かりませんから。行商人は大変ですよね。
「ん……それは嬉しいね。でもさ、お酒も悪くないけどそろそろお昼時なんだしアシュリーちゃん達の分は何か作らないとね」
「そういえばアシュリーもまだ成人してないね。
ツマミだけじゃダメかぁ~」
「アシュリーちゃんの生まれはいつなんだい?」
「11月1日だよ」
「なるほど」
相槌を打ちつつセリスが人形を飛ばす。
昼食を作るつもりでしょうね。
「私、鶏肉のハニーマスタードソースのやつが良い」
「ならお昼はそれで良っか」
自分で言っといてなんだけど、私の家には似つかわしくないお洒落なメニューですね。
まあ……私に頼られる事が嬉しいのか、セリスは更に上機嫌になったようですから構いませんけど。
「お姉ちゃん!今さっき人形が笑顔でお辞儀してきたんだけどあれお姉ちゃん!?」
「お帰り、アシュリーのお姉ちゃんは私以外知らないんだけど?」
「そうじゃなくて!」
「あれは私だよ」
「あ……はい………流石セリスさん、凄いですね」
あれ?慣れてきたと思っていたけれどそんな事は無かったのかな?
まあ人見知りが激しいアシュリーがここまで自然に話せているのは異常と言われれば異常ですし、仲良くなっているのは確かですよね。
むしろセリス達が要るから私とアシュリーの関係が旅に出る前とあまり変わっていないのかもしれません。
5年ですよ?セリスに出会ってなかったら覚醒なんてしてなくとも、アシュリーは成長して私より大きいです。
記憶の中の私との違いで受け入れてもらうまで絶対に時間が必要でしたって。
「ミューズは……カエルを捕縛してるの?」
魔力感知から得た状況だから何がしたいのか分からないけれど、確かに蛙をぐるぐるに縛ってはほどいてを繰り返している。
「糸の結び方教えてあげてね、散歩させるって張り切っていたよ」
「カエルって散歩必要無いんじゃ……まあいいや。
お昼セリスが作ってくれてるからゆっくり待ってましょう」
「やった。ところで……お姉ちゃん時々敬語になるけど仕事クセって取れないものなの?」
「え?敬語になってる?」
「時々出るよね」
「ふ~ん………セリスまで言うって事はそうなんだ」
「ちょっと……どうしたんだい?」
「別に何もないよ」
どうしたと困惑しながら聞いてきながらも、背中を使ってセリスを押しだそうとする私に対し、とても嬉しそうにしているものだからもう少し意地悪したくなる。
「うわっ!」
「ふふ、お返し」
背中でセリスを押していたらいきなり軽くなって驚いた。
驚いている間に膝に頭を乗っけていてセリスの顔を見上げていた。
「あ~……なんかまた負けた気がする」
「またって何と戦っていたんだい?」
一瞬謎の敗北感で顔を覆ってみるけれどセリスの追撃で頬をつつかれる。
「何って……いろいろですよ」
「また敬語」
「うるさいですよ」
ベッと舌出して威嚇する。
当然効いてないし私の狙いどおり楽しそうな魔力を垂れ流しながら撫で回してきた。髪がボサボサになったけどとかさかくても自然と直るんですよねこれ、覚醒してから元に戻る早さが増しましたし。
「お姉ちゃん……なんか距離感近くない?」
「ん?いやそんな訳………あるね……………」
距離感近いと言われれば確かにそうだ。
完全に甘える気分だったからいきなり切り替えられないからアシュリーの前では続行してるけどミューズの前ではこんな事できませんよねぇ。
でも確かに……いつからこんな距離近くなった?
わりといつもこんな感じのような…………
「あ……セリスとキスするようになってからか」
「そうだね、その頃から距離感縮まっていったよね」
「……………えっ!?」
あ、うん。普通そう言う反応するよね。
私も初めの頃は恥ずかしさで似たような反応してたし。
「アシュリーちゃん可愛いね」
「ひっ!」
怖がっているのは確かですけど、まんざらでもない様子ですね。
自分がナニされるのか期待しているのかドキドキしている様子で、気持ちは良くわかりますよアシュリー。
この村に居たら出会いなんてまずありませんから恋愛とかにある程度興味があるのも普通ですし、何よりセリスは同姓から見ても魅力的で当然でしょう。
それに……愛は無いけど人口の問題で産めって話は田舎ならあった話だそうで、老人と初めてを経験するくらいなら歳の近い、もう女性でも良いって考えはこの村にも昔……100年も経たないわりと最近まであったそうです。
もし今でもそう言うのがあって、好きでもない男性とするとしたらルッツさんかお父さんが相手になるのでしょうかね?
父親と結婚するというのもわりと最近まで珍しくなかったそうですからねぇ。
まあそれは置いといてそろそろ助けてあげましょう。
「セリス、今それ以上は危ないから。
キスって言っても文化の違いでセリスの故郷の方ではただの挨拶みたいでね、うん………」
ファスタムで頬にキスするという文化を受け入れて以来、セリスのタガが外れたかのようにしてきますからね。
その辺含めてちゃんと説明をして理屈は理解してもらえましたけど心は完全に理解できてない様子でして、慣れって怖いですね。
昼食の後はアシュリーがいつも狩りしている付近まで散歩して獲物が居ない事を確認したりして1日が終わりました。
変に大変だったけど午後は暇でしたし、今後こんな時間が年越しまで続くのでしょう。
おそらく私の人生で今より長い休暇は無いでしょうから大人しく退屈を楽しむとします。




