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幽霊ちゃんとの怪奇な日常。  作者: くろのくん
第1章 出会い編
7/202

映画鑑賞

「よいしょっと。今日も幽霊ちゃんが遊びに来てあげましたよーっと。あれ、何してるの??」


慣れた動作でいつものようにテレビの画面から侵入してくる幽霊


「・・・はぁ、お前ちょっと空気読んで出て来いよ。」


「ふえ?」


「いいから早くテレビの前からどけ。今、丁度盛り上がるシーンだったのにお前のせいで台無しだわ。」


「あ。DVD借りてきたんだ!なになにー?どうせえっちいのでしょーw君、ムッツリすけべな顔してるもんw」


ニヤニヤしながら、DVDのパッケージを手に取る幽霊


「ふふふ・・・残念。ホラーだ。」


「げ・・・。ほ、ホラー?」


俺はよくレンタルショップでDVDを借りる。いつもならジャンルを問わず適当な新作を借りてくるのだが、最近わが家へ不法侵入してくる幽霊の影響もあってか、今日はホラーを借りてきた。タイトルは『旧病棟の悪霊』_______とある病院に入院している主人公が、その病院に棲みつく悪霊の少女に憑りつかれ次々と恐怖体験をするという内容。見たところかなり古い作品で、旧作の棚の隅っこに埋もれていたのが、何となく目に留まり借りてみた。


「なんだよ。お前の存在がもうホラーみたいなものなのに、今更苦手とか言うなよ。」


「え、えっと~、わ、私用事思い出したんで帰るね。オジャマシマシター。」


そそくさと再び画面へと戻ろうとする幽霊


「待て。いっつも、『暇だぁ~』と連呼してるお前が用事があるっていうのは無理があるぞ。」


「え、えっとー・・・。」


「まあ、ゆっくりしていけよ。一緒に映画見ようぜ。」(ボタンポチー)


「むりいいいいいいいいっ!音量上げないでえええええっ!!!」


幽霊は両手で耳をふさぎ、ベットの上で布団に閉じこもってしまった。いつもの無駄な威勢のよさはどこへいったのか。だが、いつも調子に乗って不法侵入を繰り返している幽霊の、この怯え切っている姿を視るのは何とも面白い。もっとからかってやろう。


「もうマジむり!無理無理無理!」


「ポップコーンうめえ」(モグモグ)


「あ!ずるい!私にもちょーだい!」


布団の中から手を伸ばすビビりの幽霊。食い意地だけは立派だ。


「ここまで取りに来れたら食わせてやるよ。」


「くっ・・・と、遠い。」


「・・・おい、それよりさっきからお前の隣にいる女誰だよ?」


「~~~~っ!?!?!?!?!?」


「まあ、嘘だけどなw」


「うぅ~、呪う。絶対呪ってやる!!」


「もうすでにお前という呪いをかけられてんですがそれは。」


「そんなことより早くテレビ変えて~ポップコーン食べれないよ~」


「あーおいしいなあー。ポップコーンおいしーなあー。」


このようなグダグダなやり取りを繰り返しているうちに、映画はとうとうクライマックス。

様々な心霊現象を引き起こしてきた悪霊の女の子がとうとう姿を現わし、主人公に迫っている。


『う、うわあああああああああああ!!く、来るなああああああああ!』


「おーおー、主人公ビビってるビビってる。」


「終わった?怖いとこ終わった?」


あんだけ怖い怖い言いながら、怖いもの見たさで布団の隙間からチラチラ覗く幽霊ちゃん。


『ふふふ・・・殺してあげる・・・!!!』


画面には、不気味な笑みを浮かべた少女の顔がアップに。そして主人公に襲い掛かろうとする・・・!!


「ほら幽霊、出た!出たぞ悪霊wビビってないでちゃんと見ろ_________はぁ!?」


ズズズ・・・・・


ちょ、ちょっと待て。俺は今DVD観てたよな?それで、いまクライマックスだよな?悪霊の少女が襲い掛かるところだよな?


_____だったらなんでその悪霊の少女が、画 面 か ら 前 の め り で 出 て 来 て る ん で す か !?


「あ、あれ?・・・ここは・・・はわわわわわわわ・・・・。」


画面から上半身だけ出している悪霊は、自分の状況が分かってないのか、顔を真っ赤にして混乱している様子。そりゃそうだろう、俺だって意味が分からない。つい数秒前まで映像内で悪霊役やってた少女が、現実に出てきてしまった・・・


「ねえ、ねえ、終わった?怖いとこ終わった?・・・って、何この状況?」


今まで布団をかぶっていた幽霊も隙間から薄眼で覗き、この異常な状況を呑み込めていない様子。


「・・・俺が聞きたいんだが。」


いつの間にか、悪霊ちゃんは画面から完全に出てきて、床に座り込んでいる。見た目は幽霊ちゃんより幼く見える。俺たちの視線を感じたのか、いそいそと立ち上がった。


「あっ、あの!申し訳ないです!お邪魔しました!」


「あ、はい。えっと・・・帰れる?」


自分で言っといてなんだが、『帰れる?』って意味わかんねぇ・・・どこに『帰る』んだよ。


「・・・たぶん。また今度改めてお詫びに伺いますので!そ、それでは!」


ペコペコと何度も頭を下げ、ぎこちなく画面に戻る悪霊ちゃん。

画面の中に戻ると、何事もなかったように映画は終わりを迎え、部屋は静けさに包まれた。


「えっとー・・・礼儀正しい子だったね。」


「お前の100倍は良かったな。」


「うぅ・・・」


「さて・・・次の借りてきたDVD観るか・・・。」


「お、おう。」


やばい。いろんな意味で、俺もホラー映画を観るのが怖くなってしまった。次に見るのもホラー映画だ。もし先ほどの悪霊ちゃんみたく、また映画内の霊がうちのテレビ画面から召喚されたらどうしよう・・・



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