脱出
「なっ・・・何の音だ!?魔界からの化け物が入って来た・・・というわけではなさそうだが・・・?」
あれだけの爆音だったのにもかかわらず、部屋に大きな異変はない。
ヴヴヴヴヴ・・・
「ん?お、おい師匠さんっ!!あんたの携帯鳴ってるぞ!!」
「うぉっ!!まさか、電波が繋がったのか!?・・・ヌイからだ!」
脱出の糸口を探している最中、もちろん外と連絡が取れないか試した。しかしその時はいくら試しても圏外だったはず。急に電波が入ったのは今の爆音に何か関係があるのだろうか。
「・・・もしもし、俺だ!」
『ししょおおおおおおおっ!!!やっと繋がりました!!もぉ、心配してたのですよ!あの化け物じみた野良霊から逃げた後、師匠から連絡がないから、ターゲットの部屋に行ってみたけど、かよっちさんの能力が強すぎて入れなくてホントどうしよって・・・』
「すみませんヌイさん・・・ほんとすみません・・」
申し訳なさそうな顔で、師匠の後ろで手を合わせるかよっち
「ったく、いくら相手が強いからってどこまで逃げたんだよ・・・まぁ説教は後だ、時間がねぇ。今の爆音はお前がやったのか?」
『は、はいっ!!待ってても埒が明かないんで、化け犬を使って全力でベランダの窓を攻撃しました!!といっても、かよっちさんの能力の効果で外からも干渉できなくなっているので、あまり効果はなかったですが・・・けど、携帯は繋がって良かったです!なにかそちら側で変化はないですか?』
ベランダの方の窓をよく見てみると、少しだがヒビが入っている。どうやら、ヌイの攻撃によってできたこのヒビが外の世界との電波を繋いでいるようだ。
「中と外から同時に攻撃すれば、脱出できるかもしれねぇ・・だが、かよっちは戦闘タイプの霊じゃないし、あいつらは低級霊で火力が足りねぇ・・」
「なっ!!最強の霊であるこの悪霊を低級霊だとぉ!?聞き捨てならないのです!!」
こういうところには、妙に食って掛かる悪霊。なだめようと声を掛けようとしたとき、幽霊がちょんちょんと肩を叩く。
「き、来てる・・・なんか来てる・・・。」
リビングから見えるキッチンの先。かよっちの能力で、先が見えないほど伸びた暗い廊下の奥に、恐ろしい『何か』がゆっくりこっちに近づいてくるのが分かる。
「うおおおおおおおっ!!お前らァ!!馬鹿な言い合いはやめてここ塞ぐぞ!!」
急いでベッドを使って、リビングとキッチンを繋ぐドアを塞ぐ。こんな物理的な方法で魔界とやらからの侵入者を防げるかは謎だが。
「ハァ、ハァ・・・さて・・・どうする・・・?早くしないと入ってくるぞアレ・・・師匠、一応聞くが物理的な攻撃じゃ意味ないのか?」
「それが有効ならとっくに脱出できてるぜ・・・。外と中から同時に霊力を込めた攻撃じゃねぇとな・・・それもヌイみたいに、攻撃力全振り脳筋タイプの霊使いじゃないと駄目だ。俺のかよっちは、特殊能力タイプだからな・・・」
「くそっ、そんな都合がいい霊がいてくれたら・・・」
「ふわぁ・・・・よく寝たぁ~・・・なんか騒がしいな。」
誰かと思えば、部屋の隅に捨ててた怨霊さんがやっと目覚めたようだ
「ったく、怨霊さん何時間寝てるんですか!いま大変な時なんです・・・ここにいるじゃん!!!!攻撃力全振り脳筋タイプの霊が!!」
ずっと寝ていたから怨霊さんの存在を忘れていた。ここはもう一度怨霊さんに一肌脱いでもらうしかない。