リミット
もうどのくらい時間が経っただろう。携帯の時計を含めて部屋にある全ての時計が狂っているので正確な時間が分からない。もっとも、正確な時間が分かったところで何も意味がないのだが。それと、どうでもいいのだが怨霊さんは一体何時間寝てるつもりだろうか。起きる気配がない。
「ねーねー・・・いま何戦目だっけ・・・126戦目?」
幽霊が生気のない声で聞いてくる。
「ちげーよ。129戦目だよ・・・。ほら。悪霊のターンだぞー。」
あれから、俺たちは永遠とトランプをしている。初めのうちは、みんなそれなりに楽しんでいたものの、50戦目を超えたあたりから疲れが出始め、90戦目の時点でとうとう感情を失い、ただただゲームをこなす機械と化していた。
「うぅー・・・お腹空いてもう動けないのですぅ・・・ご主人さま、このままではこの悪霊消えてしまうのですぅ・・・。」
「よし、そのまま消えてくれ。一人減るとその分食いぶちが減るからな・・・まぁ、とっくに食料は尽きてるんだけどな。どっかのアホ霊が盗み食いするから。」
幽霊の方をチラリと睨む。
「ま、まったく。けしからん霊ね。」
「おめぇだよっ!!せっかく人数分計算して管理してたのに、俺が席を外したのを見計らって馬鹿みたいに食いやがって!!」
「仕方ないじゃないっ!育ち盛りなんだからっ!!」
「ちょっとお前ら、静かにしろっ!いま俺とかよっちは集中してるんだ!!」
師匠が横から口を挟んでくる。先ほどから師匠とかよっちは、俺たちとトランプをせずに部屋の隅の方で何やら怪しげな儀式っぽいことをしている。かよっちの周りにお札?のようなものを並べ、ぶつぶつと呪文を唱えている。どうやら、何とかして能力の解除を試みているようだが上手くいく気配はない。
「さっきからずっとそうしてるけど、何も変化ないじゃないっ!!元はといえばアンタ達が、私の家に不法侵入してきたのが原因なんだからね!」
おいおい幽霊、正論だがいつからお前の家になった?
「うぅ・・・ご主人さま、ちょっとお手洗いに行ってくるのです。」
「おう、迷うなよー。」
ガチャリとドアを開けて出ていく悪霊に声を掛ける。注意して自分が通った扉を覚えておかないと、ランダムに空間が広がっているので迷ってしまう可能性がある。ちなみにトイレは、台所の床下収納を開けた先に広がっている廊下の先にある。先ほどは、師匠がトイレから戻れなくなって大捜索をする羽目になった。
「ぎゃああああああああああああああああっ!!!」
突如聞こえた叫び声の直後、ドタバタと足音をたてながら悪霊が涙目で戻ってくる。
「ど、どうした!?」
「ななななな・・・何かいたのですっ!ご主人様!廊下の先に・・・恐ろしい何かがっ・・・!!はわわわわわ・・・。」
「何か・・・?何かってなんだよ。ここには俺たちしかいないぞ。なぁ?」
師匠とかよっちに同意を求める。が、二人は何か察しているような表情だ。
「ま、まさか、この気配。ちょっと、というかかなりまずいかもしれません・・・。」
「あぁ。空間が広がりすぎて出来た歪みで、魔界と繋がりかけてやがる。向こうの化け物がこっちに来ちまってる・・・。」
「魔界?化け物?なんだそれ!!そんなにヤバいのか、その化け物ってのは。」
恐る恐る師匠に聞いてみる。
「俺たちの世界とは別の次元の奴らだ・・・霊使いの間でも、魔界とは関わっちゃいけねぇってタブーになってる。・・・クソッ、このまま喰われちまうのかよ・・・!!」
床下収納の奥から、何かがこちらに近づいてくる気配が伝わってくる。どうやら、のんびりトランプをしている暇はないらしい。一刻も早くここを出ないと。全員が臨戦態勢に入り、場に緊張が走る。
ズガァアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!
突如、爆音が鳴り響く。




