ハルカとふーちゃんⅠ
「ふぅー、授業終わるの意外と早かったねー。」
「今日は初日でガイダンスだからな。本格的に始まるのは来週くらいからだよ。」
「ご主人様ぁー。お腹空きましたー。」
「あ、私もー。」
「お前らいっつも腹減ってんな。」
時刻は午後1時。多くの学生が午前の授業を終えて、大学の中庭を歩いている。恐らくこれから、友人や恋人と一緒に昼のランチを楽しむのだろう。そんな中、2体の腹を空かした霊を引き連れて歩いている俺って一体・・・。
「ねーねー、食堂行ってみようよ。日替わりランチ食べたーい。」
「日替わりっ!?日によってメニューが変わるのですか!?なんと素晴らしい・・・。」
「行かねーよ。この時間帯、食堂はリア充共の巣窟だ。霊連れぼっちの俺は大人しく売店のおにぎりだよ。それにお前らは今霊体だから、食べれないだろ。」
「あ、そーだった。」
「ぐぬぬ・・・。そこはこの悪霊、気合いで何とかしてみますっ!!」
「気合いでなんとかなるもんなのかよ。」
さっさと午後の授業ガイダンスも消化して、家に帰りたい。他人からは見えないとは言っても、フワフワと浮きながら付いてくる2体の霊を引き連れて、大勢の中を歩くというのは何だか疲れる。それに、朝電車で見た、俺と同じように霊を連れていた女のこともある。
「さて、売店に寄って昼飯買うか・・・うぉっ!?」
突然後ろから肩を掴まれる。
「やっと見つけた・・・。契約者ッ・・・!!!」
「は?契約者?って、あんた朝電車にいた人!」
噂をすればなんとやらだ。というか、契約者ってなんだよ。
「あの、すみません、契約・・・?なんすかそれ?」
「とぼけたって無駄よっ!!契約霊を連れているのが契約者の証。しかも2体も!!でもうちのふーちゃんは負けないんだからね!さぁ、ふーちゃん、戦うのよっ!」
「・・・やだ。」
「えっ、ふ、ふーちゃん??なんで?」
「わたし、戦うの、やだ。落ち着いて、ハルカ。」
ふーちゃんと呼ばれたセーラー服の霊は無表情で浮かんでるだけ。しかしなんだこの女。もしかして、というか、絶対やばい人だよ。そっち系の人だよ。
「・・・現れたか、契約者ッ!私が相手をしてやります!ご主人様は下がっていてください!!」
「お前ものってんじゃねーよ悪霊。」
「ふーちゃんお願い、この前いっぱい練習したじゃん!私が合図したらふーちゃんが闇魔法使うって!」
「私、魔法とか、使えない。落ち着いて、ハルカ。」
「あのー・・・、もういいですかね。俺昼からも授業あるんで行かなくちゃ・・・」
「ダメっ!!まだ戦いは終わってないのっ!!」
ああ、だめだ。やっぱりそっち系の人だ。唯一の救いは、ふーちゃんと呼ばれる霊はまともなくらいか。
それにしても、周りの目線が痛い・・・。