大学へ行こう!Ⅱ
大学が始まるのが明日に迫った今日。部屋には幽霊の姿はない。
「あれ?もう夕方なのに、今日幽霊さん来ないですね?何か知ってますかご主人様??」
「知らねーよ。・・・まあ、あいつが来ないのは珍しいな。」
毎日毎日、暇つぶしと称して家に来られるのは本当に迷惑きまわりないのだが、こうして珍しく来ない日があると何だか気になってしまう。
「どーせ、変な物でも食って腹壊してるんだろ。」
「そーですね。幽霊さんですし。」
「・・・・誰が変な物食べたって?」
「うおっ、お前いつの間に!?」
テレビの画面んから身を乗り出して、不満そうに呟く幽霊。やっぱり来やがった。心配した俺が損だった。
「・・・あれ?どうしたんですか幽霊さん。今日は何かテンションが低いですね?」
「確かに。」
「あっ・・・うん・・・ちょっとね・・・。」
珍しく暗い顔をする幽霊。こいつがこんな顔をするのは、今まで見たことない。いつも何も考えてないような顔でゴロゴロしてるのに。
「どうしたんだよ?腹でも減ってるのか?」
「今日はご主人様がプリン買ってきてくれてますよ!」
「うん・・・ありがとう・・・いらないわ・・・。」
「本当にどうしたんだよ。プリンに食いつかないなんて何か怖いぞ。」
「あのね・・・今日・・・私のお母さんが・・・成仏したの・・・・。」
「・・・えっ。」
固まる俺と悪霊。ちょっと待て。全く予想だにしなかった重い展開だぞ・・・そーいや、幽霊は画面の中(?)で母親と暮らしていると前から聞いていたが、まさか成仏するとは・・・
「えっとー・・・成仏って、あの、この世に未練とかがなくなって、消えちゃうあれ・・・だよな?」
「うん・・・。お母さんに未練があったとかは分かんないんだけど、今日朝起きたら、手紙が残ってて・・・」
「ゆ、幽霊さん!元気出してください!幽霊さんには私たちが付いてますから!」
「そ・・・そうだぞ!俺に出来ることがあったら何でも聞くからさ。」
「ほんとに・・・?」
「おう!なんでも言え!」
「やったぁ!!じゃあ、私も大学に連れていってね!!」
「おう!!・・・えっ?」
さっきまでの暗い顔とはうって変わって、満面の笑顔の幽霊。
「お前っ、嘘付いたな!?」
「違うよ!お母さんが成仏しちゃったのはホントだよ!ほら、手紙もあるよ。」
幽霊から手渡された手紙を読んでみる。
【いつも娘がお世話になってます。母です。この度、私は成仏することになってしまい、一緒に住んでいくことが出来なくなりました。娘のことよろしくお願いします。】
「・・・・は?ごめん、読んでもよく分かんない。娘をよろしくお願いします??」
「いやー、流石に朝起きたら成仏していなくなっちゃったのには焦ったけど、仕方ないしね。一緒に住めなくなっただけで、会おうと思ったらいつでも会えるし。」
「いつでも会えるの!?なにそれ!?」
「成仏したら、天国に行っちゃうんだけど、手続きすればいつでも面会出来るんだよ。」
「えぇ・・・。」
「ってことで、今日から悪霊ちゃんと一緒にここに住むことになりましたっ!よろしくね。あ、あと私も悪霊ちゃんみたいに、外に出れるようになってるから。なんか、そういう霊関係のことを管理してる役所みたいなとこがあって、お母さんが成仏する前に色々と手続きしてくれたっぽい。」
「これからは一緒に夜更かしできますね!幽霊さんっ」
嘘だろ・・・誰か嘘だと言ってくれ・・・
「よーしっ!明日は大学へ行くぞぉー!!」
「おーっ!!」