異世界から来た青年はどうやらピエロの親殺しをお手伝いするようです。14
「じゃ、俺が言った通りに頼む。」
「お任せあれ」
この対巨大ロボット戦で達成しなければならない事は2つ。観客の保護と、中央に位置する、がっぽりと魔力を溜め込んでいるこの建物の心臓部の破壊だ。
まず動いたのはレべス____ではなく夜叉刃丸。真っ先にその心臓部に向かうと、近くにあったリクライニングチェアに腰かけ、キーボードを使い
「はっきんぐなるもの、我がやり遂げてしんぜよう」
ハッキングし始めたのだ。
その理由はいたって単純。パッと見で50人は確実に超えているであろう、カプセルの中に入れられた人々の魔力管理はいったい誰がするのか。むやみやたらに奪い取り、魔力を溜めるとしても、多すぎては溢れ、少なすぎてはこの建物にかかっている術が消える。さらに、そのカプセルはかなり高い所にあり、人間ではいくら手を伸ばしたところで、知恵をを絞ったところで届きはしないだろう。飛行機やらヘリコプターやら、空を飛ぶことが出来たのなら話は別だが、そもそも飛べるようなスペースもない。魔法を駆使したとしても、数が多いうえに、かなりデリケートなものだ。少しでも手を誤れば、その施設自体が破壊されかねない。
ならば、人間以外に、生物以外に管理されているに違いないと、誰もが行き着く答えにたどり着き、眼前にあるコンピューターで、それは正しいと結論付けた。そうなればそのコンピューターを攻略するのみ。
というわけだ。
カタカタカタ
カタカタカタカタ
なんだか懐かしい音が響く中、レべスはふと考えた。
ハッキングという単語自体知らない夜叉刃丸が、なぜハッキングをすることができるのか。
「なぁ、夜叉刃丸。」
「どうした?主。」
カタカタカタカタカタ
「お前、ハッキングって何かわかってるか?」
カタカタカタカタカタカタ
「このこんぴゅーたーなるものを支配すれば良いのだろう?」
カタカタカタカタカタカタカタ
「どうやって、支配しようとしてるんだ?」
ピタリ
「勿論、言の葉交わさずとも、どちらが上かを思い知らせて、だが?」
「・・・・。じゃあなんでキーボード触ってそれっぽいことしてんだ?」
「叩いてみれば妙な音がしてな。どのようにしてその音が出るのかを探っていたのだが・・・・少し、楽しくなってしまって、だな。」
知識も経験も技術もない夜叉刃丸がいきなりそんな高度なことが出来るわけがないことは薄々感じていたレべスだが、一瞬の戸惑いも見せることなく、真っ直ぐコンピューターに向かっていったその背に、期待してしまっていたのだ。夜叉刃丸なら出来るかもしれないという見当はずれの期待と願望を少しでも持っていたレべスは、自身の考えの浅はかさを恨んだ。
「すまん夜叉刃丸。」
レべスは何に対する謝罪かわからない謝罪をし、レべス本人でさえ自身に呆れながらその言葉を発した。
「じゃあ______」
「?!よいのか?まぁ、そちらだったら我の領分だ。任せろ」
「人を助けてからな」
「わかっている」
夜叉刃丸はレべスのその言葉に自身を出すと、三日月のような笑みを浮かべ、カプセルに向かって跳び、その上に乗り、刀を振り上げ、カプセルをを壊し始めた。このレべスの適当な作戦____と言うほどのものでもない計画は、当たり前だが、カプセル内の人を救出することが前提であるため、勿論、人を助けながら、だ。
「これをどれだけ繰り返せばよいのだ・・・。単純作業ではあるが、数が多くてかなわん。」
カプセルからカプセルへ飛び移り、中の人を助けを繰り返し続けるのは、なかなかに重労働であるのか、夜叉刃丸は少し息を乱していた。
それでも目にもとまらぬ速さで次々にカプセルを壊し、人を助け、数分が経過した頃___やっとのことで残り半分ほどになった時だった。
「侵入者、発見。抹殺許可申請・・・・・承諾ヲ確認。コレヨリ、侵入者ノ抹殺、及ビ駆除ヲ開始シマス。」
突如、無機質な音が部屋中に響き、両目が光ったのを合図に、巨大ロボットは目を覚ました。
避けては通れない道とは言えど、このままあの巨大ロボットが目を覚ますことなく出来るのではないかと淡い期待を抱いていたレべスにとっては、最悪の状況、とまではいかないものの、眉間にしわを寄せる程度には困っていた。
「やはり我には、こちらのほうが性に合う。」
ふと、夜叉刃丸は数分前、レべスに言われたことを思い出した。
『じゃあ、ぶっ壊そうぜ』
こちらでは、その言葉を思い出すのと同時に、血に飢え、血を求める獣が一匹、強大な敵を目の前にニヤリと狂気的な笑みを浮かべ、目覚めた。
“あぁ、やはり我の主はこうでなくては。”
愉シイ、愉シイ、戦イノ始マリダ。




