異世界から来た青年はどうやらピエロに全力で挑むようです。2
「それでは本日の最終戦、そんな最後を飾るのはこいつらだ!!!」
「ライトコーナー、・・・・・・・ちょっと初心者レベス!!!頑張れ!」
「もうそろそろ初心者っていうの外してくれよ・・・。」
呆れながらも、レベスは白い煙が立ち込める中、強い一歩を踏み出す。
その目は自信に満ち溢れ、その肉体はまだかまだかと戦を待つ。必ず彼の王者を倒し、一敗をその目に刻み込んでやると意気込み、笑った。
「レフトコーナー、クラウン!只今8563戦8563勝!!王者に相応しい実力に加え、謎に包まれた容姿に我々、って言うか私がメロメロ!!是非、その仕込み刀を抜いて、私を刺して下さ_____」
相当なクラウン好きなのか、目をハートにさせ、そう言うも、観戦客に白い目で見られゴホン、と咳払いすると再び紹介を始めた。
「夜空に浮かぶ満月が、今日も絶対的王者を引き立てる!!!と言っても今は月なんて隠れて見えませんけどねッ」
「それでは、誓約をこの手に」
「「誓約をこの手に」」
戦いの火蓋が切られた。
「一敗くれてやりますよ」
「遠慮しておこう」
ビリビリとその場の空気が震える。レベスも今までとは違い、ただ突っ込んでいくだけのスタイルは止めた。突っ込んでいったところで、クラウンのような強者には通じないという確信を持っているからだ。
そのため、挑発し、あくまでも自分からの攻撃ではなく、相手の出方を見、少しでも必ずある、弱点に付け入ろうと言う作戦だ。が、そうそう上手くいくはずもなく、挑発したつもりが、あっさりと流されてしまった。
「さぁ、早く仕掛けておいで。騎士くん?」
「俺、初心者なんで攻撃の仕掛け方、教えて下さいよ。先輩。」
互いに挑発し合うが、レベスだけがこめかみをピクリと動かし、青筋を立てる。更には、とうとう狂ったのか、大声で笑い出す。勿論、目は笑っていない。クラウンはと言うと、仮面のせいで表情が見えず、声のトーンもさほど変化してはいないので、わからない。
その様子を見てか、挑発する事を止め、防御に専念しながら、相手の攻撃パターンや、種類を見極めることに変更した。
「【先陣を切れ、罪を重ねろ。汝、血塗られし鬼なり】。敵を蹴散らせ【夜叉刃丸】!!」
そう言い、レベスは夜叉刃丸を顕現させる。
〈主、もうそんな詠唱しなくとも、我は何時でも現れるぞ〉
夜叉刃丸と言うのは非常に特殊なもので、レベスがあの場でパッと思いついた詠唱で顕現した刀だ。そのため、元々、夜叉刃丸などという刀はない。更に、どちらかというと、武器を出したと言うより、魔物などを召喚したという方に近い。違いがあるとするならば、夜叉刃丸が自分の意志で、出てこられると言う事だろうか。
勿論、魔物や、その他のモンスターを呼び出す際、呼び出すモノによって自我の強さが異なるため、召還に応じないことや、直ぐに帰ってしまうこともある。しかし、それは、あくまでも、召還するための詠唱をしてからの話であって、する前の話ではない。
つまり、完全に自らの意志で主人のもとに来る、ということはない。
もう1つ付け足すとすれば、夜叉刃丸は既に人界への存在を認められたということだ。
そもそも、召喚するために魔力などを使用するのは、そこへ繋げる為のゲートに使用するからだ。そしてそれは、強大な力があればあるほど、消費する。
たとえ召喚を成功させたとしても、違う世界から来ているようなものと同じなので、レベスの様なことになる。とは言え、そこまで極端に税を取られる訳ではないが・・・・。
そこから、元の姿を維持するための魔力もまた必要となり、召喚者によって呼び出したモノの大きさや、姿が異なることがあるのはそのためだ。
もし、召喚者なしに、人界以外のモノが来るならば、それら全てをこなさなければならないので、非常にリスクは高いが、それは、無断で立ち入った時のみの場合なので、普通に行き来するには、何も困らない。
元々、人界で生まれた夜叉刃丸は人界の住人であり、召喚に少しの魔力しか必要とせず、完全な武器、というわけでもないので、ある意味では最強なのかもしれない。
まぁ、人界の住人である以上、召喚としては認められないので、人型での参加は出来ないが。
「いいじゃん、なんか格好よくない?」
〈確かに、血塗られし鬼なりの部分とかはいいな。〉
「お話はもう終わったかな?」
「あぁ。」
すると、クラウンはステッキを床に置き、手のひらを上に向け、同じ手の人差し指をレベスの方へ真っ直ぐのばすと、2回、人差し指を曲げ、伸ばしを繰り返した。
まるで、武器なしでもお前に勝てると言われているようだ。
完全かつ、王道な挑発である。だが、これに乗らない訳がないレベスは、ついに、クラウンへの攻撃を開始した。
「その面、絶対剥がしてやる!!」
大太刀の長さを利用し、クラウンには絶対届かない距離で、まず一撃。だが、無駄な動きを一つもしないで避けられた。
次に魔法攻撃。ティル直伝の【炎よ来いッ】で、広範囲攻撃を仕掛けるも、これまた失敗。クラウンはそれ以上の炎の威力で掻き消した。
レベスはその後も様々な手段で攻撃を仕掛けるが、全て、軽くあしらわれてしまう。時間とレベスの体力だけが減って行き、圧倒的な力を前にやはり勝てないのかとあきらめかけた時だった。
〈主、新たな魔法とか、何か考えてみたらどうだ?〉
「今考えろと?」
〈勿論。その方が楽しいではないか〉
「そうだな・・・・よし。やってみるか。」
ふーっと一息吐き、呼吸を整えると、焦り顔だったレベスは、ニヤリと自身を笑わせた。
「【木よ生えろ】【炎よ来いッ】【風よ来い】」
木が生えたところを燃やし、灰になった所でその灰を風で飛ばし、フィールドは、白いもやが出来た。
「【分身】」
そして、その中で自分の分身を作り出し、一気に攻撃を仕掛け、そのうちのひとりに作り出した小麦粉を巻き散らかさせ、そこに、火花を散らせた。
自爆覚悟の攻撃だったが、自分は生き残れると確信し、その通りに、多少焦げながらもレベスは煙の中立ち上がる。
誰もが王者の負けと、レベスの勝ちを確信した時だった。
「騎士くん、これは闘いではなく、演目。君は勝てない。」
その瞬間、大きな絶望がレベスの前に現れた。




