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次の日。

エンガと二人でベルント君をお見送りした後、2人で届いた荷物を確認することに。

まだ解体場を造っていないので、庭の片隅に一通り出して確認。

絞めて血と内臓を抜いてある、上質なお肉の山にエンガは狂喜乱舞!!

【今日、食べる分じゃないよ~。落ち着いて~。】

なんて声をかけ、頬を染めるエンガさんと笑い合いながら鞄に仕舞い直す。

なるべく早く解体場を造って皮を剥いだり部位分けしたりしないとなぁ。

直ぐに使える様にしておかないと、エンガの食べる量が凄いから在庫が心もとない・・・。

あと、お魚も手に入れないと。エビも。

なんて考えている間にエンガにはお風呂に入って貰うことにした。

その間に色々とやらなければならないことを箇条書きにしていく。


まず、何よりも重要なのはエンガの為の作業場(解体小屋)を造る事。

ただし、これはエンガの好みに合わせたいし、使い勝手や詳しい構造なんかをコーザに相談してからにしたいので、きちんと情報を仕入れて計画を立ててから。

次にノイズの所でお魚とエビの購入。新しい魚が無いか見たいし、海水が手に入らないかどうか、汲んできてもらえないかどうかも相談したい。にがりが欲しい。お豆腐作りたい・・・。

後は・・・。

商品を作る人も募集したい。

私はエンガと二人で食べる分だけに全力集中したいので、ドーナツを揚げたり、クッキーの生地を切ったり、芋や玉ねぎを洗ったり切ったり、揚げたり。チャーシューマンの蒸しパンを捏ねたりと面倒なことは正直シンドイ。

でも、レシピを渡すつもりはないので、材料なんかはこちらで用意して、作業を分担。仕事内容を内緒にする事を契約で縛って、数人に契約してもらうのはどうだろうか。

特にイモ洗いや切ったり揚げたりする部隊。

おばちゃん部隊なんてどうだろうか?

ネリー辺りに相談して、職に就いていない奥様なんかのお小遣い稼ぎにどうだろう・・・。

募集はこっちでして、口外禁止なんかの契約を商業ギルドにしてもらったらどうだろうか?

う~ん。

焼きの作業はオーブン任せだから良いけど、型にはめたりタルトの盛り付けとかも頼みたい。

エンガが楽しんでやる分には良いんだけど、多いと・・・ね。

生活が落ち着いてくるとやりたいことが増えるよね~。

と、一人で頷いているとエンガの足音が。


「あ、湯加減どうだった?頭拭いてあげるから、おい、で....」

私はタオルを落として硬直した。

エンガさん、それはアカン奴よ。

太腿から足首にかけてスリットのある、タイトなロングスカートみたいな寝間着・・・。

セクシーエンガさん、参上!!

私の脳内、炎上!!

どうしよう、エンガさんが私を殺しに来てる。

上半身ムキムキの虎のオッサンが、濡れた毛並みで、少し恥ずかしそうにしてるとか、なんつー破壊力。

自分で選んで着て来た筈なのに、なんでそんなに恥じらっちゃってんの!!

クリスマスに頑張ってエロい下着を着ちゃった女の子かよ!!

可愛いよ!!セクシーだよ!!どうしよう!!

なんて言えば良いのコレ!?何が正解!?

と、と、とりあえず・・・

「え、と、新しい、寝間着?だね?」

寝間着だよね?アレで外うろついたりしないよね?ヤエさん不安になってきた。

「あ、ああ!そうだ!この前買った奴で、まだ着てないやつだ!店主の人がおすすめしてくれた奴で、大人の男の色気を・・・うあー!!えっと、どうだ??変じゃないか?あ、頭、拭いてくれ!あ、裾が長めなのが珍しくて、んで、艶もあって、なんちゃらで、」

と、顔を赤くしながら必死に説明するエンガさん。

お、大人の色気を出そうとして頑張ったのね。

自分でも少し恥ずかしいのね。

ああ、可愛い。んでもって、私も恥ずかしい。

これ、私に見せるために着てるんだもんね。

私に大人の色気を見せるために着てるんだもんね。

っかー!!!!!

鼻血でそう!!!

いつものことだけど!!

マジで私の事殺しに来てるじゃん!!

恥ずか死ぬ!!

と、とにかく、頑張ってるエンガに対して、素直に感想を!!

「そ、そっかぁ、確かに艶のある生地だね。筋肉が綺麗に見えるね。短いのとはまた違った良さがあるね、うん、カッコイイよ。いつもより大人っぽいというか、エレガント?な感じでいいね。うん、風邪ひいちゃうから頭拭こうね。こっちに座ってくれる?」

新しいタオルを即座に用意して、ソファの隣に手招きする。

あんまり直視しない様にしよう。

私にはまだ刺激が強すぎる。

けど、エンガが少しでも自分に自信を持ってくれるならば、私は素直に褒めるだけである。

嘘は言わないよ。絶対に。

でも、これは時々にしてもらえないかな~。いつもよりも刺激が強いわ。

なんて思いながらも、ゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らし、無意識か頭をタオルにぐいぐいと押し付けてくるエンガさんは可愛らしい訳で。

なるべく優しく、毛並みを痛めない様に気を付けながら乾かしていく。

終わるころにはエンガは少しうとうと気味。

毎日新しい事の発見、やることなす事新鮮なことばかりで、体も気持ちも疲れるんだろうなぁ~。

明日はベルント君が来るから、明後日はお休みにしようかな。

一日前に看板掲げておけば大丈夫でしょ。

エンガとお家でゆったりデートも偶には良いよね。

なんて考えながら過ごす、この幸せよ。

今日もたくさんの料理を美味しそうに平らげてもらって、私もお風呂に入って頭を乾かしてもらって、軽く計算や書き取りの練習をして、今日もお休み。

今日を振り返って、幸せを噛み締めながら明日への期待を広げて眠りについた。


_______________


さ~って、今日も元気に生きましょう!!

朝から大量のごはんを作り、エンガと一緒にいただきまーす。

そして、今日はレイルさんへのお礼にオニオンリングを熱々出来立てをお届けするために今から揚げていきます。

主にエンガが。

「レイル爺ちゃんになら、俺、頑張ってみたい!!やらせてくれ!!」

とのことで、エンガにお任せすることに。

勿論、私は隣に控えております。

火傷したらすぐに治せるようにね。

エプロンを着けて、ゴム手袋をして、調理開始!!

大きめの包丁を握らせて、慎重に。

普段のオニオンリングと違ってリング型ではなく、半月型に切っていく。

丸いまま切るのはエンガには危な過ぎた...。

いつもとは違う形だけど、味は同じだし、大きさがマチマチで生の辛い玉ねぎが存在するよりも、均一に美味しい方を優先した結果である。

あと、売り物じゃなくて、エンガからの手作りの気持ちがいっぱいだよ~。

って感じで良いと思う。

もし、文句があるのなら、私と戦争だ。受けて立つぞ。

なんて思いつつ、おっかなびっくり、

【コレで良いか?】【合ってるか?】【目がいてぇ・・・。】【はなみゃずが・・・。】【うぉぉっ!パチパチするっ!?】【ヤエ、ヤエ!】なんて大騒ぎのエンガさんの尊い事よ。

両手を合わせて拝むレベル。

あまり手は出さず、なるべく口で教え、出来上がった【エンガお手製のオニオンリング】。

クソウ・・・。羨ましいぞ、レイルお爺さんめ・・。

なんて思ってたら、エンガが一つ、自分の口に放り込む。

「ん!出来立てはやっぱ美味いな!!しかも、自分で作ったのって、なんか嬉しいな。ホラ!ヤエも!あーん!!」

と、私に向かってオニオンリングをつまんでニコニコ笑顔のエンガさん。

無言で口を開け、咀嚼する私。

心の中はシャッフルダンスのパーリーパーリー!!!!!!!

んんぐぅぅぅ!!!

すき!!

そーゆーとこ、本当に好き!!

ああ、可愛い、今日も可愛い、我が家のエンガさん!!

【どうだ?美味しいだろ?頑張れば、俺でも揚げ物出来るんだな!この手袋ねぇと怖ぇけど・・・。】

なんて少しビビり気味になりながらも、こちらの様子を窺うその姿、一億点満点!!

「美味しいよ!凄く!!私が作るのとは形が違うけど、こっちの方が味も火の通りも均一で、食感も食べ応えもいいね!エンガの《レイルお爺ちゃんへの有難うの気持ち》がいっぱい入ってて最高だよ!」

と、感想を述べれば、

「へへへ、沢山作ったんだしよ、爺ちゃんの分は分けて、2人で少し摘まもうぜ。俺、ヤエと一緒に食いてぇから。あ、お茶も俺が入れるから、少し座っててくれよ!!」

なんて、ご機嫌&照れ笑いのエンガさんに席を促される。

エンガの手作り&お茶を食しながら、隣に座ってイチャイチャだなんて、今日が命日か?

いや、それで言ったら、毎日が命日になるな。

訂正。毎日エンガが可愛い、神様、本当にありがとう。

ワシもオニオンリング食べたい!!なんて聞こえた気がするので、後でエンガに神棚に供えてもらいましょう。

その代わり、エンガの幸せのために今日も気張れよ、神様ぁぁぁ!!!

なんて脳内シャウトしているところでお茶を運んできてくれたエンガ登場。

いそいそとエプロン姿でお盆を持ってくる姿はまるで新妻。

私達、新婚だったっけ?初々しいの可愛いなぁ・・・。

「お茶、そこまで熱くねぇと思うけど、火傷に気をつけてな。レイル爺ちゃんの分と、神様の分は冷めねぇ様に保存袋に入れてきたから、こっちは食っちまおう!」

と、気が利く新妻エンガは素晴らしい。

流石エンガ君!!神様も感動じゃぁ!!

なんて聞こえる声には全力で頷いておく。

朝ごはんを食べたばかりだが、エンガの手作りならば別腹だ。

エンガよりもモグッたよ。

エンガも嬉しそうにあ~んしてくれて、ヤエさん、至福の時間。

もう、今日はコレで良いだろ。

乙女ゲームならイベント終了だよ。一日終了だよ。

なんて考えてたけど、エンガの【神様へのお供えもして話も出来たし、後はレイル爺ちゃんに届けるか!!】と、嬉しそうに準備をする姿を見て、我に返った。

いつの間にか神棚にお供えして神様とのお話も済ませていたらしい。

流石、出来る嫁、エンガ。

にしても、神様もエンガ大好きだよね。

毎日短時間とはいえお話ししてくれるなんて。

ありがたや。エンガは神様大好きというか、尊敬してるみたいだから、神様がエンガに優しく接してくれるのは私的にも凄く嬉しいです。忙しいだろうに、ありがとうございます。

「ヤ~エ~!髪紐結んでくれ!」

と、お出かけの準備を終えて、大事そうに大事そうに保存袋を抱えるエンガさんの尊い事。

お互いに髪紐を結び合い、エンガからの髪なでなで(マーキング)をしてもらい、準備OK!!

では、出発!!




_______________


出発して数分後。

捕まった。

お魚屋さんのノイズにな。

いつもの

「お~う!エンガー!」とのテンション高めな声と共に肩組からの、握手。

いつも思うけど、このオッサンはエンガに触り過ぎではないかい?

ヤエさん、ハンカチをギリギリしちゃうぞ?

まあ、顧客の私よりも《エンガを男友達として優先》してる感じは好ましいけどね。

頼むから、《悪い大人の男の遊び》とか教えてくれるなよ?

なんて考えてたら

「今、漁から帰ってきたとこなんだけどよ、食いてぇのあるか?残しといてやるぞ?確か、新鮮なのが良いっつってたもんな?エンガ、何食いてぇ?」

と、財布は私だが、決定権はエンガにあるのを良く分かってるな、このオッサン。

エンガはウキウキで、どんな魚が獲れた?とか聞いてて、微笑ましい。

取り敢えず、調理するのは私なので、見た事のない魚がないか一緒に確認しながら選んでいく。

エビもイカも白身魚も多めに購入。

さつま揚げに使うし、エビはエンガの大好物ですからね。

以前は『魚を食べた事がないエンガの為に無料でくれた鯛』も今回は正規の値段で購入。

エンガが値段に少し驚いていたけど、美味しかったでしょ?の一言で笑顔に。

カツオやニジマスなんかもあって、海に行ったのか、川に行ったのか、どこで釣ったのか訳分からんと思って聞いてみると

【漁港で物々交換会が行われている。】とのこと。

魚持ちだけじゃなくて、果物や野菜、肉などを持った人が魚を求めてやってくるらしい。

勿論、魚屋同士の交換も有り。

ただ、交換のレートや品質なんかは完全に個人責任なので、初心者には簡単ではないとのこと。

「今度行ってみるか?俺は海産物関係で行くし。川魚系の奴らなら紹介できるぞ。」

とのお言葉をノイズから頂いたので、勿論お願いしておいた。

それと

「ノイズは海産系って事は海に行くって事だよね?海水とかって持ってきてもらえる?」

と、豆腐を作るためのにがり確保のために聞いてみると

「おう!俺は海の男だぜ!海水?まあ、持ってこれるけど。なんだ?まあ、良いけどよ。・・・・・。おお!そうだ!エンガ、一緒に来るか!?海に!!」

と、急にテンション爆発のオッサン、爆誕。


待て。オッサン。

何でエンガの方だけを向いて言ってんだ?

まさか、その発言、私を置いていく気じゃなかろうな??

ちょっとヤエさんとお話しようか??ん??

そう思ってると

「行きてぇ!!ヤエ!!海、うみ!行きてぇ!」

と、既にウッキウキのエンガさん。

お友達とのお出かけ、しかも初めての場所に。なんて、エンガにとっては友達と行く都会のテーマパーク並みに心躍るイベントなんだろうなぁ。可愛い。

「いいねぇ。私も行きたいな、海。楽しみだねぇ。」

と返事をすると

「おっ!ヤエちゃんも来るか!?女の子は嫌がるかと思ってたんだが、来る気があんなら大歓迎だぜ!!俺の船はちいとばかし小せぇが、3人なら乗れんだろ、任せろ!!」

とのことで、近いうちに海に行くことになりました。

お魚も大量ゲット。ホクホク顔でノイズとハイタッチしてお店に向かうことに。


《もふもふ雲》を開店する前にレイルお爺ちゃんの元へエンガと向かう。

レイルお爺ちゃんはこっちを向いてニコニコで手を振ってくれている。

「爺ちゃん!コレ、俺が作ったんだ!【ありがとう!】って気持ちがいっぱい入ってる!で、えと、形はちげぇんだけど、ちゃんとオニオンリングだかんな!安心してくれ!」

と、緊張からか早口になるエンガ。

「おはようございます。今日はいつものとは形を変えてみました。エンガが一人で頑張って作ったんですよ。【ありがとう】が沢山籠ってるので、美味しく食べてください。」

と告げると

「おおおおおお!新型か!!良いのう!エンガ君の心のこもった手料理、慣れとらんだろうに、頑張って作ってくれたんじゃろ?爺ちゃん感激じゃ!ありがとうなぁ。2人とも、ありがとう。嬉しいよ。」

と、両手で受け取り、大事そうに鞄にしまうレイルお爺ちゃん。

何でも、この後は用事があるらしく、珍しくお店は開けないのだとか。

私達の為に待っててくれたみたいで、申し訳ない。

なんて思ってたんだけど、知り合いと食べたいから他の商品も買いたいとのこと。

ボリスさん達も来て、準備も始めつつ、会計をすまし、エンガに再度お礼を言って軽い足取りで去っていった。


《もふもふ雲》の方に戻ると、ベルント君とアーベル君が。

今日は奮発して《いちごタルト》を買ってくれるのだとか。ラッキークッキーは二人ともハズレ。

干し芋をアーベル君が買ってくれて、ベルント君は何やらメモしている。

「弟たちに、今後食べたいのがあったら買ってあげようと思ってて!値段とどんなものかを説明しておいてあげようと思うんです。弟たちはこっちまで中々来れないので・・・。誕生日とか、凄く頑張った日のご褒美にしてあげたくて!」

と、元気いっぱいなベルント君に、エンガは微笑み、商品の説明を始めた。

良いねぇ。小さい弟妹の為に、色々と頑張る姿はとても好ましい。

そんなベルント君にはタルグ牧場へのお礼の手紙を渡し、2人には明日はお店をお休みにすることを伝えておく。

その後、他の子供達の相手をしている時、《もしゃもしゃ草》の店員を任せていたボリスさんが声をかけてきた。



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