↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハーレム100  作者: 松宮星
英雄世界
PR
57/224

英雄世界から

 あああああ、出てった!


 ダーリンとアタシの愛の巣から、ようやく勇者達が消えてくれた!


 思い起こせば、この五日、ろくでもなかったわ。


 ピカピカの床を土足で歩かれるわ。

 食事や洋服をたかられるわ。

 レズに迫られるわ。

 隣の吉岡さんには『最近、お賑やかですわね』とかイヤミ言われちゃうわ。嘘ばっか。音なんか、全然、隣に響かないのに!

 知らない間に、この世界での仲間のまとめ役の一人にされるわ。

 園児の両親への説明を頼まれるわ。まだやってないけど。

 このマンションを勇者の連絡先にされるわ。


 消えてくれて、せーせーした!


 正孝さんが出張から帰るのは、あさって。

 それまでに部屋の中、片付けなくっちゃ。

 あいつらが居た痕跡を全て消し去るのよ!


 勇者達が使ったモノを洗濯機に叩きこむ。客用マクラ・カバー、タオル、バスタオル。

 徹底的に掃除機もかけなきゃ。

 あいつらがリビングに居たせいで、最近、手抜きだったのよ。塵一つ残さないよう、掃除しなきゃ。


「まどか」

 カウンターのおねーちゃんが、声をかけてくる。おととい・昨日と顔も見せなかったくせに、何で今日は来るわけ? 勇者一行が還ってから顔を出すとか、ズルくない?

「座ったら?」

 見てわかんない? アタシ、忙しいの。

 おねーちゃんと違って、ず〜〜〜〜〜〜とお守してたのよ。朝昼晩、誰かしらと一緒だったの。寝る時しか一人になれなかったんだから。


「まどちゃん、紅茶いれたから」

 カウンターには、葵ちゃんも居る。葵ちゃんは、毎日、顔を出したけど、面白半分に相手してるって感じ? 夕飯が一人分、増えただけだったわ。


 今日までで還ると、勇者達は言っていた。

 魔王が目覚めるのは、五十七日後。

 勇者は、あと八つの世界を回って、五十六人を仲間にしないといけない。


 だけど、夕飯ぐらいは食べてくと思った。

 出かけたのは夕方で、帰って来たの七時過ぎだもの。



『急いで国に還る事になりました。今日までお世話になりました、感謝してます』 

 学ランを脱ぎ、もとの服に着替えた勇者。

 最近は、家の中でも外でも、シャツにデニム。カジュアルな大学生風だったのに。

 中世ヨーロッパっぽい服に、マントに腰に片手剣。そんな、どこからどう見てもファンタジーな格好されたら、嫌でもわかっちゃう。


 よその世界の人だって。


『魔王戦のことは心配しないでください。仲間達と相談して、マドカさん達に無理なく参加してもらえる方法を考えますから。怖い思いはさせません』

 そう言ってから、照れたような、困ったような顔で頭を掻いた。

『本当にすみません。戦うのは無理だって、あんなに強くマドカさん教えてくれたのに……ご助言に従わず、ご迷惑をおかけしました』


 違うわよ、あんたの為に教えたんじゃない。

 アタシ、巻き込まれたくなかったの。

 めんどーごとなんか、絶対、嫌だったの。

 あんた達の為なんて、これっぽっちも思ってなかったんだから!

 ずーっと、早く消えてくれって思ってたんだから。


《おねーちゃん、クマさん、ありがとねー》

 ピンクのクマを抱えた白い幽霊が、アタシに満面の笑顔をみせた。

 勇者の仲間達がこの世界の着替えを買ってた時、この子だけ服を買う必要がなかったから……

 しょんぼりしてたから……

 だから、買ってあげたの。

 でも、それ、バーゲンワゴンのぬいぐるみよ。

 たったの980円。

 ケチったのよ、アタシ。

 店内には、もっともっとかわいいぬいぐるみがあったのに。

《あたしねー 白くなってから、プレゼントもらったのはじめてなのー》

『アンヌばあさんに貰ってるだろ?』と、勇者が言うと、

《アンヌは、おリボンつきのプレゼントくれなかったもん。おリボンも包装紙ももってかえるの、ジョゼおねーちゃんのカバンの中にあるのー》

 幽霊は、ぎゅっとクマを抱きしめた。とっても嬉しそうに……

《だいじにするね》

 ニコニコ笑う幽霊を見ていたら、ますます胸が痛くなった。


 賢者や魔術師、勇者の義妹も、アタシに挨拶をした。ご厚意に感謝するだの、助かりましたとか、お世話になりましたとか……


 レズの狩人が近寄って来た時には、さすがに警戒した。

『若奥様との可憐な思い出を胸に、還りますわ』と、言って彼女が差し出してきたのは一輪のピンクの薔薇だった。

『どうぞ、お元気で。旦那様とお幸せに』。

 受け取ってやったら、狩人はニッと猫みたいに笑った。

 てか、アタシ、狩人に二万渡してたし。活動資金というか、夜遊び費として。

 そのお金の余りで買っただけでしょ。

 そうは思ったんだけど、なぜかアタシは、ただ『ありがとう』とだけ言った。


『この世界に来て最初に出逢えたのが、マドカさんで幸運でした。ありがとうございました』

 勇者が笑った。

 子供みたいに、かわいく。

 正孝さんみたいに優しい笑顔で……


 胸がキュンキュンした。


 賢者が『勇者の書 7――ヤマダ ホーリーナイト』をリビングの床の上に置き、勇者と向かい合う。

 二人とも同じくらいの身長だ。

 顔を近づけ合い、呪文を詠唱する。

 額を触れ合わせて。


 賢者の白銀の髪、白銀のローブが綺麗に輝く。

 接吻できそうなほどの距離で向かい合いながら、超美形の賢者の顔には表情がない。マネキンみたいだ。

 勇者は……

 目を半ば閉じ、賢者を見ていた。

 至近距離だから当然なんだけど……賢者だけを見ていたのだ。


 ドキンとした。


 床に魔法陣が浮かび上がる。

 やめてよ、新築のマンションなのに。床に変なもの描かないで。掃除するのはアタシなのよ。

 やがて魔法陣は白くまばゆく輝き始め、まず本を飲みこんだ。

 魔法陣から広がった光が賢者と勇者を飲みこみ、その背後に居た、勇者の義妹、魔術師、幽霊、狩人をも包み込む。


 ほどなく光は消える。

 リビングに居たあいつらを伴って。


 床は綺麗なものだった。

 浮かび上がった魔法陣も光と共に消えてしまった。

 跡形も無く……



 勇者なんか……

 正孝さんの百分の一も格好良くなかった……

 足が長くてカッコ良くって、大人で優しい、包容力にあふれるダーリンに比べたら、カスよ……

 ロリコンだし。

 ヘラヘラ笑ってばっかだし。

 女のいいなりだし。

 いきあたりばったりだし。


 アタシは……

 ナニモノカノ意志ニ、操ラレテイタダケ。


 あいつのことなんか、大事に思ってなかった。

 全然、好きじゃなかった。


 ご飯だって、メンドーだったから、最初、作らなかった。

 大鍋、買って来たの月曜よ。

 おとといよ。

 まだスパゲッティーとおかゆしかご馳走してないのに。


 どうしてくれるのよ、大鍋のシチュー。四時間かけて煮込んだのに。


「まどかったら、もう」

 おねーちゃんに背後から、抱きしめられる。


「泣きながら、床掃除するな、おバカ」

 泣いてなんかいない。

 せーせーしてるだけ。

 これで、ようやくまともな生活が送れる。

 ダーリンの為だけに生きていける。


「五十七日後には、又、会えるんだから。元気だして、まどちゃん」

 葵ちゃんまで側に来る。

 会いたくないわ。

 てか行きたくないわよ、異世界なんか。

「それに、寂しくなんかないわ。明日は神崎さんや女子高生達が遊びに来るから。なんなら、瑠那もよぼっか?」

 やめてよ、勝手に、アタシの家を会合場所にしないで。

 アタシ、もう勇者にもその仲間にも関わりたくないの。

 日常に帰るんだから。

 もう惑わない。

 よろめかない……

 正孝さんの為だけに生きるのよ……


 おねーちゃんが邪魔するから、ちっとも掃除が進まない……


 アタシは、リビングの正孝さんの写真に目をやった。

 早くその笑顔をリアルで見たいと思いながら。



* * * * * *



●Memo(32) 時間について


 九十七代目勇者 矢崎ユナさんから興味深い話を聞く。


 彼女が所属する勇者OB会の推測だ。


 勇者世界は、私達の世界より時の流れが早い。

 七代目勇者が異世界トリップから戻って十六年。勇者世界では千八百年以上が経過している。

 単純計算でいけばこちらの4日で、勇者世界では一年が経過する事となる。


 しかし 歴代勇者達は証言する。勇者世界の滞在日数と、こちらでの時間経過は一致していたと。

 あちらで百日過ごして魔王を倒した後、帰還するとこちらでも百日が経過していたというのだ。そのせいで落第した、学生勇者も居たらしい。

 両世界の時間のズレ幅を考えれば、計算上、勇者世界で百日経過してもこちらでは一日強しか経たないはずなのだが。


 何故、二つの世界の時間経過が一致したのか? 

 その理由を、両世界の交差(クロス)が原因ではないかと、勇者OB会は推測している。


 つまり、こちらの世界の人間が勇者世界に滞在している間、時間が一致するのではないか? と、いうことだ。

 この世界出身の勇者は十五人。十五人が勇者世界でそれぞれ百日を過ごせば、こちらとの時間同期は千五百日、四年と四十日となる計算だ。

 転移しているのは、勇者ばかりではない。勇者世界へは魔王も転移している。

 異世界出身の魔王は八十五人居るのだと勇者ジャンは語った。しかし、彼はどの魔王がどの世界出身なのかほぼ知らなかった。『勇者の書』に宿敵の出身世界が記されている方が少ないのだそうだ。

 この世界出身で且つ勇者と滞在時期が被らない魔王が十五人居たと仮定すれば、更に四年と四十日あちらとこちらは同期した計算になる。

 更に言えば二十八代目勇者 片桐 雪也(勇者名 エリートコース)という特別な存在が居る。彼は賢者としてあちらの世界に留まり、弟の二十九代目勇者 片桐 直矢(勇者名 キンニク バカ)が帰還した後も勇者世界に残った。彼がいつまで賢者であったかは不明だ(勇者ジャンも知らなかった)が、三十代目勇者の賢者を務めたのだけは確実だ。三十代目勇者が約八年後に魔王を倒したと仮定すると……


 四+四+八=十六。

 

 七代目帰還から十六年が経過。

 それは、つまり……

 こちらの4日が勇者世界の一年なのではなく……

 こちらの人間が勇者世界に転移している間だけ時間が流れるのではないか……?

 そんな推測が成り立つというのだ。


 受け入れがたい推測だ。

 確かに、全ての事象が停止すれば、その内に存在している人間は時間凍結を知覚できない。共に停滞した時間に囚われるだけだ。


 しかし、私達の世界の時間が凍結しているのなら、転移者が出るのはおかしくないだろうか?

 

 たいへん緩やかではあるが時間は進行しているのだ、と個人的には思いたい。


 いずれにしろ、これだけは確かだ。

 現在、勇者と賢者は勇者世界出身。

 勇者世界と私達の時間が同期しているのであれば……

 魔王『カネコ アキノリ』はこの世界出身の人間に違いあるまい。立花詩織さんの幼馴染の高校三年生こそ、勇者世界の魔王なのだ。


 そして、あと確実なのは……

 彼が魔王となった原因は、立花詩織さんではないということだ。

『一方的にリアカノ認定した子にガチ無理されたんで、カネコ アキノリは魔王パワーに目覚めたのだ』と勇者ジャンは言っていた。

 けれども、立花詩織さんの幼馴染が転移したのは七十日前であり 勇者世界に魔王が誕生したのは四十三日前なのだ。


 つまり、金子君は『心の闇に囚われた』せいで次元穴に飲みこまれた。が、勇者世界に転移した時点では、まだ一線を越えていなかった。人間のままだった。

 しかし、転移後二十七日に、思いを寄せた誰かに、手ひどく振られる。

 それで、魔王化したのだろう。


 幼馴染と敵対しなければいけない事実に変わりはない。が、自分が振ったせいでないとわかれば多少なりとも、立花詩織さんには救いとなるだろう。


 矢崎ユナさんが近々、勇者OB会のリーダーを紹介してくれるとのこと。

 勇者の仲間となった私達には、OB会に入る資格があるそうなのだ。嬉しいか微妙だ。が、情報交換ができるのはありがたい。

 リーダーの山田神聖騎士(ホーリーナイト)は実業家で、メンバーの為にアジト(一軒家)を購入し、勇者仲間を生活面からもサポートしているのだそうだ。

 ふざけた名前は、ハンドル名でもあだ名でもなく、本名なのだそうだ(DQNネームだったのだ……お気の毒に)。


 勇者ジャンには伝えなかった情報を、OB会には伝えよう。

 五十一代目高校生ボクサー『バクレツ エイジ』は実在していた。四年前、バンタム級のプロテストに合格した風森英治。彼のリング名が『爆裂エイジ』だったのだ。

 プロテストに合格後、三か月で彼は失踪した。

 失踪関連の記事に目を通し、彼の所属していたジムのブログも見た。

 その結果、わかった……風森英治は帰還していない。


 魔王戦で亡くなったのか?

 他の世界に転移し、そこで暮らしていると思いたいが。


 風森英治の失踪が四年前である事が、実に不安を煽ってくれる。

 七代目から百一代目までで、私達の世界では十六年が経過している。

 しかし、時の流れは均等ではない。

 五十一代目から百一代目までの経過時間は、四年なのだ。わずか四年。

 七代目から五十代目までに十二年が流れているというのに。


 賢者となってあちらにとどまった、二十八代目勇者 片桐 雪也。彼の存在が、時間偏重を生み出したように思える。


 本当に……この世界の時間は凍結しているのだろうか? 勇者世界に関わらない限り、時は流れないのだろうか?


 思考がまとまらない。


 SFは苦手だ。

 私の本領は、戦国武将BLだ。


 OB会にランランを連れて行きたいところだ。

 彼女の頭脳を借りたい。

 あのギリギリ漫画家、何とか拉致れないだろうか。



* * * * * *



 アタシは玄関で立ちぼうけた。


 扉を閉めた男性が、旅行用スーツケースを置く。

 ハンサムな顔がやさしい笑みをつくる。パリッとしたスーツも格好いい。


 アタシの華奢な体が、逞しい腕に抱かれる。


「ただいま、まどか〜 会いたかったよぉ〜」

 ぎゅっとされる。


「正孝さん……?」

 ダーリンの匂いがする。

 体臭と男性用の香水の混じった匂い。

 アタシの大好きな、正孝さんの香り。


 そのままチュッチュッとラブラブ挨拶。


 胸がしめつけられるように苦しい。

 アタシの胸は、キュンキュンキュンキュンと、ときめいた。


 あああ、好き、大好き、すっごく好き。

 アタシの心が熱くざわめく。


 でも……

 いやいやいや、待って。


 嬉しいけど。

 ダーリンにず〜と会いたかったけど。

 どーして、ここに?

 帰国は明日でしょ!


 てか、待って、マズいわ!


 玄関には……

 来客の靴がいっぱいだった。

 葵ちゃん、その友達のメイドコスプレの人、霊能力者の着物美人、もと勇者の女子高生、魔王の幼馴染の女子高生、その友達のボーイッシュな女子高生が来てるのよ……

 遅れて、会社帰りのおねーちゃんと、女子高生達の学校の先生も来るとか言ってたし。


 正孝さんの視線が玄関に散らばる靴へと向かう。

 そうよね、うちの玄関広いけど、スーツケースを置くのにこの靴、邪魔だったでしょ?


 ああああああ。

 ごめんなさい、正孝さん!

 勝手にお客を呼んじゃって!

 今、リビングに行っちゃ、だめ!

 あそこは異界と一緒なの!


 何て説明すればいいの、お客のこと……

 うちに勇者が来ました……アタシ、勇者に萌えられて、仲間にされました……で、うちを勇者の基地にされちゃって……あたし、勇者にあれこれ貢いだの、十万以上……勇者達は帰ったけど……今、勇者の女達が集まってます……

 無理、無理、無理、無理!

 そんな説明したら……アタシ、ダーリンに馬鹿だと思われる……頭が変な子だって嫌われて、離婚されちゃう。


 それに、アタシ……

 あなたのお顔がまともに見られない……


 申し訳なくって……


 もちろん、気の迷い。

 ダーリンのが百倍も千倍も好きだけど……


 ほんの、ほんの、ほんのちょっとだけ……

 勇者のことを……


 ごめんなさい……


「まどかはかわいいなあ」

 マサタカさんが、くつくつ笑う。

「ぜ〜んぶ顔に出る」

 う。

「キミ……僕に言えない秘密があるだろ?」


 え?


 見上げると、正孝さんのステキな笑顔とぶつかった。

「実は僕にも、秘密があった」

 な……なに?


「先月、僕一人で婚姻届を提出に行ったろう?」

「え、ええ……お仕事のついでで行くって」

「あれ、嘘なんだ」

「え?」

「キミに戸籍を見られたくなかったんだ」


 え? え? え?


「なんで……?」

 戸籍を見られちゃ、マズいって……

 偽戸籍?

 重婚? 

 それとも子供が居る?


「僕の戸籍の姓名は二重線で抹消されているんだ」

 え?

「消されたもとの名前の横に、今の名前が記載されている。十七の時、氏も名前も変更許可申立をしたんだ」

 正孝さんの笑みが苦笑となる。


「親権はおふくろが持ったから、母方の櫻井の戸籍に入れてもらって、改名したんだよ。クソ馬鹿親父とは完全に縁を切りたかったんだ」


「は?」


「まあ……五年前に故人となった男だ。今更、あれこれ言うまい……あまりに珍奇だった名前は改名できたんだ。もうあの馬鹿を怨んではいないよ」



「リーダー」

 リビングの扉が開き、矢崎ユナって子が戸口に現れ正孝さんに手を振る。

「ユナ。メールありがとう。とるものもとりあえず、戻って来たよ」

 二人の間の親しげな雰囲気。


 あたしは、ただあんぐりと口を開いていた。


「実はね、まどか……僕は青春の思い出をリビングに飾っているんだ。写真立てに、内緒でちぎって持って来た断片をはさんでいるんだ」


 断片……?


「百一代目勇者一行がここに現れたのは、偶然ではない。僕の書を使って転移して来たから、書と断片が惹かれ合い、断片のもとへと彼等を導いたんだろう」


 勇者ジャンが使ったのは、変な名前の七代目勇者の書……


「過去のことをキミに話す勇気はなかった。話したところで、妄想と誤解されるだけだ。七代目であったことも、勇者OBの仲間のことも、一生秘密にしておこうと思っていたんだが……」

 正孝さんは悪戯っぽくアタシにウィンクをしてみせ、


「これから僕らは、隠し事のない夫婦になれるね」


 そう言って、情熱的に抱きしめてくれた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。