9. その気持ちの源は 2 ー小説遍歴についてー
こちらも数日前に、『これだけは読んでおいたほうがいいと思う小説は何ですか?』という問いかけを、やはりSNSで拝見した。
ジャンルで分けた方が良いかなと思い、私が返信したのは以下のものでした。
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・文学(短編):『キッチン』吉本ばなな、『走れメロス』・『駆け込み訴え』太宰治
・児童文学:『兎の目』灰谷健次郎
・ミステリー:『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティ
・ホラー:『シャイニング』S・キング
・エッセイ的私小説:『生きて行く私』宇野千代
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そのどれもが、若い時代に胸打たれたり、小説の構造というモノの勉強になったり、それまでミステリーやホラー、私小説は苦手だったにも関わらず、その世界に引き込む力を持っていた作品たちだ。
文字数の関係で挙げられなかったけれど、詩集だったら『ヘッセ詩集』も端的でノスタルジック、どこか世の中や人生を見通すような視点があって良いと思う。
人物評伝的なものだと、白洲正子の『いまなぜ青山二郎なのか』も、装丁家・美術評論家で数寄者と言われる青山二郎に対する、冷静な白洲正子さんの視点が最高に面白かった。
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漫画遍歴はひとつ前に書いたけれど、幼い頃の絵本に続いて、小学生時代によく読んでいたのは、ポプラ社文庫の子ども向け世界名作全集だった。『赤毛のアン』や『ああ無情』、『小公女』や『若草物語』などなど。その後、第一話で少し触れた、『大草原の小さな家』の原作シリーズなども読み始めた。
中学になって流行のアイドルを好きになったり、二~三年になってくるとクラス全体が多感な時期に入り、文学少女や読書などの真面目な雰囲気は微妙……という当時の周りの風潮などに影響されて、コバルト文庫は大好きだけど、文学と言われるものからは離れた日々が続いていた。
入った高校が進学校だったこともあり、高一の夏休み、読書感想文の宿題で島崎藤村の『破戒』を読んだけれど、若かったこともあり苦悩や戒めというその内容に少し憂鬱になってしまい、更に私の文学離れは進んだ。
その後、親からの勧めで高二の時に一度理系に進んだものの、そこで私は担任の先生に頼まれて、なり手のいなかった図書委員を務めることになる。あまり積極的な活動はしていなかったけれど、貸出率の高い本を目にすることが増えていた。
そこで私は、『銀河英雄伝説』という小説に出会ってしまったのだ。
かなり衝撃だった。主要キャラクターが三十人くらいいると思うのだが、どの人にもそれぞれに魅力がある。特にキルヒアイスに恋をしてしまい、推しがいなくなるということを初めて経験したのも、あの小説だったかもしれない。
クラスメイトから、なんで理系なのに本を読んでるの? と聞かれながら、昼休みも読んでいるほど銀英伝にのめり込み、数学と物理に挫折したことも絡んで、私は翌年、高三で文系に転向することになる。
文転した後、家には下に妹が二人いて、学部の就職率の高さも視野に入れて法学部に進学したが、実は法律よりも小説が好きだった私、読書率が上がったのもその頃だった。
中学高校を過ぎ、大学生になって、学部のことはさておき、自分が真になりたいものと言ったら小説家しかない、という気持ちはだんだん強くなっていた。
そのためには語彙力を上げなきゃならないんじゃない?
そんな気持ちから、まずは太宰治の短編から読み始めたと記憶している。
先ほど挙げていた太宰治の短編群や、吉本ばなな、S・キング、クリスティの有名ないくつかに加えて、山田詠美作品の数々に進んだ。その後、ばななさんと対談していた宮本輝さんの『優駿』という小説に感動し、『ドナウの旅人』や『流転の海』などなど、読む本は波及的に広がっていった。
就職した後は、朝八時から夜八時まで仕事続きの日々。時代もあったけれど、六時台に帰れる日はほとんど必ず、職場の飲み会が開催されたりなどあって本を読む時間が激減した。その結果、短いエッセイや短編ばかりを読むようになっていった。宇野千代作品はその頃に読み始めたのではないかなと思う。
宇野千代さんのエッセイから『色ざんげ』という小説、そして谷崎潤一郎に言及したエッセイを見て、『春琴抄』や『少将滋幹の母』に『痴人の愛』、ヘッセの詩集から端を発して、リルケやボードレールなどなど。
小説家になりたいという野心はまだ心の奥にあり、語彙力アップという気持ちもあって、薄めの本とはいえ少しずつ通勤時間などに読んでいた。
仕事がほんの少し落ち着いてきた頃に、塩野七生の『イタリアからの手紙』『サイレント・マイノリティ』というエッセイに出会い、そのエスプリの効いた文体に惚れた。そうして『コンスタンティノープルの陥落』や、少し長めの『神の代理人』、『我が友マキャヴェッリ』などの作品群へと進んで行った。(あまりにもイタリアに興味が湧いて、会社の同期と旅行したのはその後のお話となる。)
今となって思うのは、私にとって本を読むということは、ふと空いた時間に読むことで、心の隙間にするりと入ってきて後の糧になっているもの、という感じがしている。
語彙力や構成というものの勉強、という気持ちから本格的にはじまった私の読書は、いつしか色んな登場人物たちの人生を、その文章とともに旅するようなものに変わっていった。その経験は人生の中でふとした時に出てきて、あの時あんなことが書いてあったなと、アドバイス的に助けられることもある。
読書という旅は日々が豊かになるのだよねと、最近はweb小説の大海に小舟を出したような気持ちの私は、面白い! とか、好き! という作品に出会う度、つくづくそんな風に思っています。
作者名は、文章の途中で流れ的にさん付けしている部分もありますが、基本的に敬称略で書いています。
自分の〝好き〟をメインに語っているため、好みの違いなどについてはご了承いただけたら幸いです♪




