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アガート村防衛戦 4

『ルミナスオース』という乙女ゲーム……の皮を被った超難易度のRPGがある。

故郷の村を焼かれた主人公の少女、アリア・ルミナがバスティオン辺境伯領にある士官学校で学びながら、イケメンと恋をして、あと世界征服を企む帝国を倒すというゲーム。

難易度ノーマルのうちは属性の相性ぐらいしか出てこないので、RPGとしてはヌルゲーではあるのだが、ハード以降になると例えば剣での攻撃は斬属性を持つなどと、物理攻撃にも様々な要素が絡んできて、急に乙女ゲーであることを捨てたかのような複雑なダメージ計算式が絡んでくる。

一応難易度ノーマルでも全てのスチルは回収できるのだが、いかんせんデータ引き継ぎの周回プレイや、それに合わせて理不尽な強さのボスが出てくるダウンロードコンテンツなどがあるせいで、一部の廃ゲーマーは恋愛そっちのけでRPG部分を極めだした。

私……アリアの親友キャラであるエルファリア・ニヴ・バスティオンの『中の人』はその廃プレイヤー側で、『ルミナスオース』の世界に転生した際に、極めに極めきったエルファリアのステータスを引き継いでいた。それが私の強さの秘密だ。

ただしステータスを引き継いでいるのは私だけのようで、更にライルなどの強さから察するに難易度はノーマルの新規プレイだろう――そう思っていた。

つまり私の『未来視』というものは存在しない。ゲームの廃プレイヤーだから全てを知っているだけだ。

「ええと、確認ね? アリアの『中の人』は私と同じ元日本人でオーケー?」

ひとまず子ども同士で遊んでなさい、とアリアの部屋に隔離という、私にとっては好都合な流れになったので、早速すり合わせをしていく。

「あたしは東京の高校三年生で、名前は――」

「奇遇ね、私も高校三年生だったわ。それで多分、今後も話すこともあるでしょうから、元の名前は混乱の元じゃないかしら」

それもそっか、とアリアは納得したように言った。あとエリーたんも辞めてほしい。

「さて早速……私がこの村に来た理由はわかるかしら?」

「……はっ! まさかあたしを亡き者に!?」

なんでそうなる。

「違うわ。帝国軍の襲撃からの防衛に来たのよ」

「……あー、もしかしてエリーたんの『中の人』もステータス引き継ぎ?」

「ええ、四十周して全ステ全技能カンストしたステータスを」

アリアがドン引きするのが分かる。まあ廃プレイヤーはバカかアレかとしか思われていないししょうがない。

対してアリアは難易度ノーマルをクリアした直後のステータスらしい。

ただし力偏重の脳筋育成かつ不意打ちだったので、先程の私へのタックルは防御無視のクリティカルヒット。多分百ぐらいはダメージ受けている。

「さて……ここからが本題。アリア――貴女の目的はなに?」

「……あたし、原作だと最推しがエリーたんなの」

……は? イケメンとの恋愛を楽しむ乙女ゲーが『ルミナスオース』だったはずだ。

ほらこう、攻略対象全員とハーレム築きますとか、そういうのじゃなくて?

「でもほら、エリーたん、原作だと中盤で帝国に洗脳されて、あたしとの一騎打ちで死ぬでしょ?」

「……そう、ね」

エルファリア・ニヴ・バスティオンは親友キャラではあるが、メインシナリオの最終決戦のパーティーメンバーとして選べるキャラにいない。

アリアの言う通り中盤で帝国に洗脳され、帝国の駒としてバスティオンに攻め込み――『動く城塞』バルドゥールを討つ。

そしてバスティオン城でアリアと一騎打ちとなり命を落とす。初見プレイでは不可避のイベント。そして四十周プレイしたが本編上では救済は無し。

通常プレイだとお父様譲りの盾役として便利キャラなせいで、一部では育成アイテム泥棒とまで言われるし、廃プレイヤーの男性陣からは『かわいそうかわいい』扱いだ。

ダウンロードコンテンツで追加されたフリーシナリオには連れていけるから、一応救済といえば救済なのだろうか? セリフは一切無いが。

「だから、なんとか帝国軍の洗脳さえ回避できれば、エリーたんが生き残れると思った……んだけど」

「まあ十歳の『祝福の儀』では聖女ナディカの加護を選ぶわ。精神系の状態異常無効だもの」

この国では十歳になると国教である『イリス教』の七人の聖女のうち、誰を信仰するかを選択する儀式がある。

大体は代々同じ聖女を信仰しているのだが、もちろん自分の意思で決定することができる。

そして聖女からそれぞれの『加護』が与えられるのだ。

そこで私は魅了や混乱などといった精神に作用する状態異常を無効にする『加護』が得られる聖女ナディカを選択するつもりだった。

これは洗脳イベントへの対抗策となりうる可能性を考慮してもあるが、私のステータスだともしも、ゲームシステム上の『混乱』のデバフを受けたら壊滅状態になってしまうからだ。

「というわけでアリア、貴女の目的は達成――とはいかないのよね」

原作だとエルファリアは耐性が無いから洗脳された……というおマヌケな話もあるかもしれない。

だが、転生モノであるがゆえに『物語の強制力』で耐性を貫通してくる可能性を私は考慮している。

「ただそれでも、私には色々なプランはあるわ。そもそも原作だとアリアたちを逃がそうとして盾になって生死不明からのボス化でしょう?」

アリアが頷く。強制敗北イベントでアリアと攻略対象たちを逃すため、殿を務めたのが本来の私だ。これは難易度ヘルを周回した後にノーマルをやっても必ず起こる。

「……なら洗脳される前に龍帝を倒す、とか?」

「それが最短のプランね。ただ、我が国側に大義名分は必要だから難しいのだけど」

これが私が、カンストしたステータスを引き継いだ後に単身帝国に乗り込んで壊滅させようと思っても躊躇した理由だ。大義名分が無ければ我が国が侵略国家の誹りを受けかねない。

そのため用意したプランのひとつの布石が『アガートという村への破壊工作を帝国が行った』という事実だけは保持したまま、防衛を完遂するということだ。

「とにかく、貴女の目的はエリー……エルファリア・ニヴ・バスティオンの生存ルート、ということでオーケー?」

アリアが首肯する。それならば話が早い。私さえ生き残ればいいのだから。

つまり極端な話だが、アリアとイケメンどもとの恋愛フラグはぶち折ってもいいとも解釈できる。

これでライルルートは無い。つまり私の理想に支障は無い。

そう、ライルは攻略対象キャラだ。

昼行灯な士官学校の教官、それがライルの原作での立ち位置だ。

アリアの亡き母で自身の幼馴染のリーシャの面影をアリアに見出しながら、リーシャとアリアの違いに苦悩するライルが、アリアはアリアであり、ライルがアリアに惹かれたのはリーシャの娘だからではない、ということを自覚させるルートがライルのルートだ。あとついでにお色気担当だけど母性本能をくすぐるタイプの年上のイケオジキャラ。

「えーっと……じゃあ、エリーたんの『中の人』の目的は?」

アリア・ルミナの『中の人』がエルファリア・ニヴ・バスティオンを救うことが目的ならば。

私――エルファリア・ニヴ・バスティオンの『中の人』の目的は――


「アリアの、攻略対象の、そして私の――真の意味でのハッピーエンド、よ」

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