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生徒会の王女様は距離感がバグってる  作者: レイチェル


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特攻隊長と弾丸ライナーの苦悩

「いよぉぉし! これで今回のテストも赤点回避は間違いないぜっ!」


「ホントにごめんね、春希! 私も頑張るからさ!」



 クリスマスを1週間後に控えていた週末、春希の家に数多くの生徒会メンバーが集まっていた。部屋の中が途端に賑やかになり、夏と綾乃の活気に溢れた声が響いていく。その両手にはスーパーから仕入れて来たであろうビニール袋が握られており、中にはお菓子やジュースが詰め込まれていた。

 夏と綾乃がリビングのテーブルに教科書やノート類を広げて勉強の準備をする中、この部屋の主である春希は、小さなため息をつきながらキッチンに入る。その隣には、苦笑いを浮かべていた渚がいた。



「私もお邪魔してごめんね。春希くんの勉強の邪魔にはならないようにするからさ」


「いや、それは全然気にしなくて良い。むしろ、謝罪するのはオレの方だ。この前のこと、まだ渚にお礼を言ってもいなかったな。真冬のことを守ってくれて、ありがとう」


「いえいえ。王女様の身に何かあったらどうしようって心配してたけど、犯人を投げ飛ばして一安心したよ」



 コップにジュースを注いだり、お菓子を皿にセットしていくなど、春希と渚は手際良く分担しながら作業を進めていく。

 そう、本日は朝から春希の家で勉強会が開かれる予定となっていたのだ。とは言っても、主に夏と綾乃の赤点回避のための勉強講座であり、春希や渚にとっては頭を悩ませる問題であった。

 前生徒会から引き継ぎを受けて初めて実施される定期考査。生徒会である以上は、赤点という結果は決して許されるものではなく、場合によっては役職の解任すら示唆されているという。そうため、夏と綾乃にとっては死活問題ですらあった。そんな理由とあって、2人は藁にもすがる思いで、この場に来ていたのである。



「……でも、真冬ちゃんは大丈夫かな? あの2人がうるさくて、気が散ったりしないかな?」


「それについては、昨日のうちに真冬に話しておいたよ。気にしなくて良いと言われたが、実際のところ学年トップを維持し続けている実力は伊達じゃないそうだ。こんなことで集中が途切れることは無いと言われたよ」


「なら良かった。ホントはこっちに来て欲しいくらいだったけど、あの2人に王女様が隣の部屋にいるなんて知られたら、大変だもんね」


「ああ、そうだな。そこら辺も感謝してるよ。周りにこのことが知られたら、真冬が迷惑だと思ってしまうからな」



 本日の勉強会のことは、前日のうちに春希から真冬に伝えられていた。真冬もテスト前の週末ということもあり、今日は自分の家で勉強に励むということであった。場合によっては図書館や漫画喫茶で勉強することもあるそうだが、基本的には家で黙々と勉強する予定とのことであり、今も夏と綾乃の賑やかな声を聞きながら、隣の家で勉強をしていることであろう。

 そう思うと、春希は何となく2人の頭をハリセンで殴りたくなっていた。



「それで、お前たちは何の教科がヤバいんだ? 言っておくが、全部なんて言葉は聞き入れないからな」


「うぐっ!? そ、そんなこと言うなよ! ほら、親友を助けるためだと思ってさ!」


「……ホントに全教科ヤバいの?」


「そ、そんな軽蔑するような目で見ないでぇ!? 私と夏だって、一生懸命やってるんだよぉ!」



 ジュースが注がれたコップとお菓子が乗せられたトレーをリビングのテーブルに運び、春希と渚が2人に問いかける。そして、まさかの返答にお互いに顔を見合わせた。

 そして、2人はアイコンタクトを交わすように同時に頷く。もう1人、真冬のような人物でもいなければ、この場を乗り切ることは出来ないのではないか、と。



「……言っておくが、お前たち。定期試験が何教科あるか分かってるのか?」


「現代文、古典、数学II、数学B、英語はリーディングとライティング……文系は社会が2つに、理系は生物、地学、化学から2つ……文系理系どちらにせよ、5教科9科目もあるんだよ?」


「現実を突きつけるなよ!? 俺だって、必死に前を向いて生きてるんだからなぁ!?」


「わ、私はまだマシだよ!? 全部が全部、ヤバいわけじゃないからね!?」



 泣き崩れるようにしてテーブルに突っ伏す2人に、春希と渚は今後の対策を考えさせられることになる。自分たちの勉強時間をある程度確保するという計画は、最も簡単に崩れ去ってしまったのは確かであった。

 時計の針は、まだ午前9時を回ったばかりである。しかし、今日という1日だけで全ての教科の対策を立てるのは無理があった。



「……とりあえず、文系と理系に別れて対策するのがベストか。オレが国語、社会、英語。渚が数学と理科を担当するのが良いだろう。要点を絞って、何とか赤点回避の40点が取れるように、出そうなところを狙い撃ちするしかない」


「まあ、そうなるよね……じゃあ、2人とも? 私と春希くんも頑張るけど、生徒会を解任されるかもしれないんだから、頑張るんだよ?」


「ぷ、プレッシャーが……」


「お腹痛くなってきたよ……」



 こうして、春希と渚による鬼のテスト対策が幕を開けた。

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