第七十六話 『最初の来客』
数日が経過し、今ちょうどバイトが終了した。
特に何事もなくバイトが終わり、あとは帰るだけ。
帰れば宙が待っている。
宙と話せば元気100倍。疲れなんて吹っ飛んじゃうね。
てなわけで早く帰るとしよう。
俺はできるだけ迅速に着替え、更衣室を出た。
するとそこには、いつものようによんちゃんがいた。
バイト帰り、待ち合わせもしていないのにも関わらず頻繁に会うのだ。
頻繁どころか毎日だ。
俺と明香は気が合うのかもしれんな。
そんなことを思いつつ、いざ帰ろうとしているよんちゃんを見て、どこかいつもと違う気がした。
なんと言えばいいのだろうか。
いつもとそんなに変わらないが、何かから逃げているような感じがするのだ。
「どうした?」
俺は少しの変化にも気づける男。
最近ではそうやって心がけて生きているのだ。
なんてね。
別に心がけてなんてないな。
今回はたまたま俺が気づいただけだ。
偶然ってやつだ。
でまぁそんな感じで、一緒に帰るつもりでそう声をかけたのだが、
「っ!」
よんちゃんは、大袈裟な程に身をビクつかせて驚いた。
そして逃げるように走り出した。
1人で帰るのだろうか。
だが、この時間に女の子1人で帰るのは危険だ。
俺は無言で彼女の手を掴んだ。
「放して」
その口調は優しいもので、とてもその言葉から想像できるような内容では無かった。
だが、それでも心に来るものがある。
俺、嫌われたのかな。
でもバイト中は普通に喋ってたしなぁ
よく分からんな。
「こんな時間に、1人で帰るのは危ないだろ」
引き止めた理由を口にする。
でもこういうことは、言わずにするからかっこいいんだ。
恩着せがましく理由を言うなんて、なんだかなぁ
まぁ別に、悪いことではない。
引き止めないよりはずっとましだと思う。
で、そんな恩着せがましいことを言われたよんちゃんは、なぜか嬉しそうだ。
引き止められて嬉しそうにするってことは、俺は嫌われてないのか?
分からん分からん。
俺には難しすぎる問題だ。
「でも......」
しかし、よんちゃんは嬉しそうにしつつもそう反論しようとしてくる。
「一緒に帰るぞ」
なんかもう、今日のよんちゃんは分からないよ。
なのでゴリ押しだ。
よんちゃんがどんなに嫌がろうと、夜道が危険であることには変わりないのだ。
1人で帰す訳にはいかない。
俺が休んでいる間よんちゃんを危険に晒した分、これからはできる限り守ってやりたい。
上から目線な言葉かもしれないが、俺は一応最強なのだから、周りの人間くらいは守りたい。
俺の我儘かもしれないが、守らせてほしい。
「分かった」
そう言ったよんちゃんの顔は、嬉しいのか嬉しくないのかよく分からないような複雑な表情を作っていた。
本当に、なんなのだろうか。
で、それからは普通のよんちゃんだった。
バイト終わりだとは思えないほど元気で、全くいつも通りだった。
まったく本当に、女の子はよく分からん。
複雑怪奇な代物だ。
「はぁ......」
会話は楽しいのだが、ふとそれが継ぎれた間にため息が出た。
何故か。
疲れたからだ。
最近の俺は、放課後に槍の練習をしつつ体術や剣術を教える。
それからバイトなのだ。
バイトの時間が減ったとはいえ、このループは疲れる。
闘技場で教えるの、2日に1回にしようかな。
「かけ君大丈夫?」
俺のため息を聞いて、よんちゃんはそう問いかけてきた。
そりゃまぁ、隣でため息なんて吐かれればそう言うだろう。
でもまぁ、詳しく話すほどの内容でもないし、軽く答えておくか。
「最近、疲れることが多くてな」
「へー
最強も大変なんだね」
よんちゃんは、俺の意図していない意味で受け取ったらしい。
「いや、最強はあまり関係ない」
「じゃぁ勉強?
教えてあげよっか
私、こう見えても勉強できるんだよ」
と言いつつ、よんちゃんは胸元を揺らしつつ俺の前まで回り込んでくる。
可愛らしい行動のはずなのに、破壊力が抜群だ。
俺の理性が壊れてしまう。
だが、俺の理性の方が勝った。
悪いなよんちゃん。
俺の方が強かったみたいだ。
「お前、勉強できるのか?」
正直、意外だった。
これはただの偏見だが、俺の中で巨乳お元気キャラはそんなに頭がよろしくない。
五つ子の四女とかがそんな感じだ。
「出来るよ」
そう言ったよんちゃんの顔は、「エッヘン」とでも言い始めるかのような自慢顔だ。
少しニヤニヤもしている。
可愛らしい。
そんなに勉強できるのか。
いやでもこのパターン。
期待を上げるだけ上げて、そんなに賢くないっていうオチな気がする。
「ちなみにどんくらい出来るんだ?」
「えーっとね......」
よんちゃんは、そう言って少し溜めた。
なんだよその間は。
「学年1位」
よんちゃんはそう言ってニヤリと笑った。
冗談だろ、こいつ。
確か隣の学校である戸ノ崎高等学校は、結構難関校だった気がする。
そこの1位?
この元気いっぱいポニテ巨乳少女が?
うそだぁー
「本当なのか?」
「なーんで信じてくれないの
じゃあ、証拠を見せてあげようじゃないの」
そう言ってよんちゃんは鞄の中をかき混ぜ始めた。
そして鞄から引き出したファイルから取り出したりますは、一枚の紙切れだった。
A5サイズにも満たないような紙だ。
その長方形の紙は、一辺だけがきれいに一直線だ。他はガタガタである。
どうやら一枚の紙を半分にして作った紙なのだろう。
「ほら!」
よんちゃんは、そう言って紙切れの表面を見せつけてきた。
見せつけてきたと言うか押し付けてきたと言うか。
で、そこに掛かれていたのはテスト結果の表である。
ほとんどの教科が90点台。
そうじゃない教科は100点だ。
国・数・地理・生物・家庭科・保健体育・美術の7教科で、700満点中672点。
どうやら本当に勉強ができるらしい。
いや、出来ると言うより、天才らしい。
「今度、教えてもらってもいいか」
「ふふん
いいよ~」
そう言ったよんちゃんの表情は満足そうだった。
俺が疲れている理由は勉強ではないのだが、教えてもらうとしよう。
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次の日。
今日は学校が休みである。
日曜日だからね。
てなわけで今日、哉に折られた刀の刃を買いに行こうと思っていたのだが、俺の行く手を阻む奴が現れた。
そいつは、最強の座を狙うような奴ではないかった。
だが、そいつの目的は最強を倒すこと。
他国の最強である。
「へー
ジブンが新しい最強かいな」
その男は俺を見つつ、十分に訛った口調でそう言ってくる。
見たところ、年齢は俺と同じくらい。
身長も俺と同じくらいで、体格も俺と同じくらい。
ほとんどが俺と同じくらいである。
まぁ、顔や声、シルエットとかは全然違う。
一目で他人だと分かるほどに。
その男の肩からは、巨大な腕時計のメタルバンドみたいなやつが掛けられている。
なんだあれ。
歩いていると、肩から流れ落ちてしまいそうだが、ストッパーみたいなのが着いているのだろうか落ちる気配はない。
「俺は、讃岐陽介
知っとるかもしれへんけど、西の最強や」
知らねぇよ。
にしても、西からか。
まぁ、予想通りだな。
北方神国でも北側であるこの地域に、南の奴が真っ先に来ることはないだろうし、東方神国と北方神国の間には大きな山脈がある。
それを超えてまで一番に来たい訳でもないだろう。
西方神国の最強はもともと決まっていた最強の中でも最下位で、彼が俺に勝てば東と南の奴らは俺と戦わなくていいわけだ。
急いで戦う必要もないのだ。
「俺は佐々木翔琉
一応、北の最強だ」
一応である。
だって序列は2位だし。
「でよ
俺はジブンと戦うために来た訳やけど、殺し合うつもりは無いねんな」
「そうか」
それは俺も同意見だ。
国の強さを決めるだけの戦いに、互いの命を懸ける必要なんてないのだ。
安全に行こう。
「せやけど、手は抜かへんで
あんたも手ぇ抜いたら死にかねんから気ぃ付けや」
「ああ」
良く喋るやつだな。
まぁいいや。
「それじゃぁ、始めるか」
「せやな」
讃岐はそう言いつつ、やる気満々って感じの表情をする。
直後、彼を中点として無数のマネキンが現れた。
そのマネキンは関節に切れ目があり、人間と同じように動けそうである。
どうやらこれが彼の能力らしい。
「ほな、行くで」
マネキン共が構えた。
うわぁ、動き出しそうとは思っていたが、本当に動くんだ。
何か怖いな。
讃岐は肩のメタルバンドに手をやり、それを取り外す。
それを頭上まで振り上げた後、『ガン』と地面に叩きつけた。
するとそのメタルバンドは『カラカラ』と歯車のような音を立ててマネキンの前にずらりと並ぶ。
そして『シャキン』と数多の武器が生える。
なんかヤバい気がする。
いくら俺が多数対一を得意とするからと言って、これは多すぎる。
「はは......」
俺に刃を向けて襲い掛かるマネキン達を見て、不安から来たため息に近い笑いを零す。
これが最強ってやつか。
いいぜ、面白い。
俺は氷剣を作り出し、ニヤリと笑った。
「やってやろうじゃん」
まず初め、飛び掛かって来た短剣持ちを切った。
飛び掛かるそれを斬ったことで、斬られたマネキンは空中分解して転がる。
が、次が来る。
次に来るのは双剣持ちだ。
左右交互に剣を振るったリ、両方同時に重い攻撃を仕掛けたり。
俺はそれを氷の剣で捌く。
なのだが、決めきることはできない。
二人目が来る。
否、二人どころじゃない。
次々と、敵が群がってくる。
俺は四方八方からの敵を一本の剣で相手する。
多方向から飛んでくる刃物の雨に、時折弾丸も混ざっている。
俺はそれらを避けつつ攻撃に転じようとするのだが、隙がない。
避けるので精いっぱいだ。
剣だけでなく、能力をふんだんに使っても攻撃が止まない。
少しづつ倒しているはずなのに、それでもだ。
むしろ、攻撃が激しくなっているようにすら感じる。
まずいな。
これが数の暴力ってやつか。
数だけではなく、個々の強さも大したものだ。
流石は最強ってところだな。
今までに俺に挑んできた最強志願者とは格が違う。
明らかに劣勢だ。
本当にまずい。
このままだと、先に体力が無くなってしまう。
見ると、讃岐本人はマネキン集団の外で司令中だ。
あの様子だと、俺の体力が先に尽きるであろうことは火を見るより明らかだろう。
やむを得ない。
俺は自分の周囲スレスレに氷柱を複数本生成する。
スレスレすぎて、少し俺にもかすったが仕方ない。
こうでもしなければいけないほど、マネキンは俺まで近づいていたのだ
その後夥しい量の水粒を飛ばして半径数メートルにいるマネキンを一掃する。
そうして作り出したほんの一瞬の隙に、バスケットボールサイズの水球を生成し、地面に叩きつけた。
直後、俺を中心にして半球上に水壁が広がる。
その水壁は俺に群がらんとしているマネキン共ごと押し広かっていく。
作り出したこの戦いで最大の隙。
だが、押し出しただけなので讃岐への道は開けていない。
遠くで指令を決め込んでいるあいつに、この隙で攻撃はできないのだ。
だが、今の俺にはこの隙だけで十分だ。
俺がこの隙で何をするのか。
俺が今マネキンにすら攻撃できていないのは数が足りていないからなのだ。
ということは単純な話、こちら側の数を増やせばいい。
押し出されたマネキンは、それでも俺に襲い掛かろうとする。
そんな中、俺は水人形を一体だけ作り出した。
一応、もっと作ることもできる。
だが、これ以上作ればこの戦いにおいては俺の頭が回らなくなるだろう。
このマネキン、それなりに強い。
とても三体の水人形を操りつつ戦えるほどの相手ではない。
二体くらいなら行けるかもしれないが、最適数ではないだろう。
故に一体だ。
俺よりも先に、水人形がマネキンの中に走って行った。
あれ一体だと、やはりさっきの俺と同じ結果にしかならない。
が、俺はそれを追いかけるようにして、防御に徹している水人形に群がるマネキン2・3体をジャンプで蹴り飛ばした。
その勢いを保ったまま、目の前のマネキンを斬り捨てる。
背後の敵を水人形が斬り、前方の敵を俺が斬る。
俺に群がっていたマネキンが半分になったのだ。
一人が二人になっただけだが、だいぶ余裕が生まれた。
着々と敵が減っていく。
と思っていたのだが、よく見ると讃岐の近くで俺たちが斬った分だけ増えている。
減っては増え、減っては増え。
これじゃぁ、結局さっきと変わらない。
そう思った刹那、両手剣持ちが重たい攻撃がきた。
俺はそれを氷の剣で防ぐ。
強化しているとはいえ、やはり氷。
『ピキピキ』と音を立ててひびが入っていく。
これはまずいな。
俺は氷剣を放し、後ろに大きく飛んだ。
そうやって水人形と位置を入れ替える。
空中で水人形と入れ替わりつつ、新しい氷剣を生成。
体を捻りながら、新しい剣を振るう。
その一振りで、俺はマネキン数体を同時に斬る。
決して今まで手を抜いていた訳では無いが、ギアを1つ解放するとしよう。
さらに本気を出す。
俺は大きく剣を振った遠心力を利用して、下段に回し蹴りを入れる。
俺に足を掬われたマネキンは、当然バランスを崩してコケる。
それが数体。
倒れている物があれば普通に近づくことは不可能。
そこを俺は、マネキンを踏み付けてその奥の奴を斬る。
その後飛んできた槍での下段攻撃を、俺は地面と体を平行にして飛び、回転しながら回避する。
無駄に回転した訳じゃない。
槍を放ったそいつに、力が乗った上からの蹴りを叩き込む。
俺の足はマネキンの首元に後ろからめり込み、首が取れた。
関節部分が弱いな。
そんな感じの戦いがしばらく続いた。
当然、俺も攻撃を受ける。
斬っては斬られ、斬って斬っては斬られ。
だが、俺の方が動きは多い。
殴って蹴って、飛んでしゃがんで足を掛け。
大きく動き回っている。
いい加減しんどくなってきた。
そろそろ終わりにしよう。
最後の力を振り絞る。
そうしようとした刹那、俺の眼前にマネキンの足が現れた。
攻撃を避けるためにしゃがんだせいで、迂闊にもマネキンにとってちょうど蹴りやすい位置まで頭を下げてしまったのだ。
これも疲れのせいだろうか。
いや、そんなことはどうでもいい。
周囲には敵、水人形は少し遠い。
避けられない。
仕方なく俺は右手に持っていた剣を消し、右手を氷で硬め顔の目に持ってくる。
それと同時にワイヤーを設置。
『バリン』
そう大きな音を立て、マネキンによって俺の腕が砕かれた。
「いってぇ......」
正確には、腕に付けた氷が砕けた。
しかしやはり痛い。
あの軽そうなマネキンにしては絶大な威力で、俺は軽々と後方に飛ばされる。
他のマネキンも巻き込んで飛んでいくかと思ったが、優しいことに道を開けてくれる。
そのおかげで、俺はより遠くへと飛ばされることができた。
本当にありがた迷惑だ。
せっかく讃岐へと近づいていたのに。
だが、こうなった時のためのワイヤー。
着地と同時に再度氷剣を生成。
ワイヤーに魔力を込めて巻きとる。
俺はワイヤーに引っ張られ、超スピードで開けた空間を戻っていく。
近づこうとする敵、立ちふさがる敵を切り裂きながら進む。
が、ワイヤーで成せるスピードはいつまでも続かない。
失速してきた。
まぁいい。
慣性を活かしてしばらく進んでいたため、後ろ向きに伸びているワイヤーを思いっきり引っ張って巻き取りを始める。
その間もマネキンの相手をしている。
直後俺は上半身だけで何かを避けた。
何を避けたか。
後ろから込んでくるワイヤーである。
鞭のようにしなったワイヤーの先が、マネキンに当たって顔面が陥没する。
相手が人間だったら致命傷だろう。
倒れるマネキンの背中を踏み付け上へ飛ぶ。
次にマネキンの顔を踏み付けてさらに上へ飛ぶ。
十分な高さまで飛んだ。
讃岐の姿がはっきりと見える。
背後に手をやり、水を生成。
水圧を利用し、回転を加えて空中を讃岐へと一直線。
「そりゃアカンって!」
讃岐は慌てた様子でそう言いながら、横に転がって俺の横振りを躱す。
次だ。
俺は間髪入れずに讃岐の方へと剣を振り上げる。
が、讃岐が転がった方には例のメタルバンド。
しかもまだ武器が残っている。
讃岐はすぐさま片手剣を取り、逆手のまま俺の攻撃を止める。
剣同士が『キリキリ』と音を立てて震える。
「ちょ、何やってんねん!
こっち来て助けてぇや」
命令を待つように、ボケっと立っていたマネキンに言った。
あれが来たらいよいよヤバい。
俺は水人形を消して、マネキン共と俺の間に再度生成。
見た感じだと、瞬間移動のようだ。
だが、さっきと明らかに違う点が1つ。
2体目だ。
2体も同時に操りつつ俺も戦うとなると、この本気の戦いだとしんどいかもしれないが、ここで頑張らなければ負けてしまう。
脳を全力で使う。
目には3つの視界。
讃岐を前にするものが1つと、マネキンを前にするものが2つ。
視界が重なる。
音も重なる。
考えが重なる。
ここまでの戦いで、かなりの疲労が蓄積している。
そのせいもあって、3人分の情報で気持ちが悪い。
だが、ここで頑張らなくてどこで頑張るって言うんだ。
「うがあぁぁぁぁあ!」
俺は獣のような声を上げながら、腕に力を入れる。
足の向きを調整し、全身の力が伝わりやすいようにして。
押しも引きもしなかった剣が、俺によって振り上げられる。
『シャキーン』と金属が擦れたような音を上げ、讃岐の剣が宙を舞う。
立ち上がりつつ振り上げた氷剣を、今度は体を落としながら振り下ろす。
俺の斬撃が、讃岐の首元から横腹へと抜ける。
だが、『パシャ』と音を立てて地面に広がるのは血では無い。
なんの変哲もない水。
振り下ろす寸前、剣身を水へと変化させたのだ。
何かに殴りつけられたような感覚はあれど、切り傷1つできていないはずだ。
「死んだか思たで......」
讃岐は振り上げられた両手を下ろしながら、ポカンとした顔でそう言った。
「始める前、俺も殺す気は無いって言っただろ?」
俺は氷剣を消し、立ち上がりながら言う。
「せやったか?」
そうだ。
そうだったはずだ。
多分......
あれ?
そうだったっけか?
言ってないような気がしてきた。
いや、言ってないな。
「悪い
言ってなかった気がする」
「そうやろな」
讃岐はニカッとはにかんだ。
素敵な笑顔だね。
勝敗が決まった。




