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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第七章 『最強』
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第七十四話 『その後』

「また来るからな!」


 男はそう言って、どこかへ行ってしまった。

 つい笑ってしまいそうになるほど在り来りな捨て台詞だ。

 ああ言ったやつのほとんどが、また来ることは無い。

 あいつもそういう奴だろう。


 無様に逃げて行く男の後ろ姿はボロボロで、一目見ただけでも圧倒的な力差で負けたのだと予想できる。

 まぁ、予想どころか彼をボコボコにしたのは俺本人である訳だが。


 俺が再度学校に行き始めてから数日が経った。

 噂というのはすぐに広がるもので、俺が学校を休んでいる間に生徒のほとんどが俺が最強になったということを知っていた。


 その話を知っているのは生徒だけではない。

 先生は当然の事ながら、地域の人だったり隣の学校の奴らにも知れ渡っているようだ。

 このペースで噂が広がれば、北方神国の国民全員がそのことを知るのはそう遠くのことではないだろう。


 ただでさえ話題性抜群の『新たな最強』という話題に、今回はおまけまで着いている。

 序列2位の最強だなんて、話題性抜群なんてもんじゃない。

 聞こうとしなくても耳に入ってくることだろう。


 実際俺も、校内で自分の話を聞いたことがある。

 最狂だとか最剹(さいきょう)だとか、そんな感じの話だ。

 2位が最強なんて狂っている、戦いの最中に笑うなんて殺戮の悪魔に違いない、そんな理由だった気がする。


 まったく、この世界の奴らは言葉遊びがお好きなことで。

 その話を聞いた時、思わず溜め息を吐いたことを思い出すな。


 というか、俺を最強にしたには神様だ。

 最終的に選択したのは俺かもしれないが、そもそもあんなものを選択肢があったとは言えない。

 狂っているとか言われても、知ったこっちゃない。


 でもまぁ、殺戮の悪魔については否定しない。

 戦いの途中に笑っていたらしいし、そう思われても仕方ないだろうさ。


 別に、他人にどう思われようが俺の知ったことではない。

 問題なのは俺が最強だと知られているということだ。

 俺が最強だということが広がったせいで、最近では来客者でいっぱいだ。

 最強になりたい奴らが、あっちらこっちらからやって来る。


 歴代最弱の最強である俺だが、その辺の奴より弱いわけではないのだ。

 最強として弱いと言う訳だ。

 それを勘違いした不完全ボーイたちが、俺に立ち向かってくるわけだ。

 たまにしっかりと強い奴もいるのだが、来客の大半は勘違いさん達だ。

 正直なところ面倒臭い。

 これだから最強にはなりたくなかったんだ。


 これから部活だと言うのに、邪魔しないでいただきたい。


「はぁ......」


 思わずため息が出てしまう。


「大変そうだね」


 突然、背後から知った声が聞こえてくる。

 さっきまで、俺の後ろには誰もいなかった。


 俺の後ろに現れたのは瞬間移動が出来る奴。

 瞬間移動どころか、なんだって出来る奴だ。

 『魔神』とかいう、魔力を自由に操ってすべての能力を使用することができるとかいうチート能力の持ち主だ。


「おい、いきなり背後に現れんなよ

 びっくりして殺しちゃうだろ」

「君に僕が殺せるとでも?」

「......」


 俺ととんでもない会話をしているのは神様だ。

 無論、俺はびっくりしたって人を殺すことはない。

 こいつにしか通じない冗談だ。

 なんとも物騒な冗談である。

 俺もこの世界の住人ってことかね。

 ここでの常識に慣れかけている。

 まぁ、慣れて行かないといけない訳だが。


「で、何しに来たんだよ」


 特に理由もなく現れることがある神様だが、一応なんの用かを聞いてみる。


「早速本題かい?

 まぁいいや」


 神様はそう言った後、わざとらしく咳払いをして続けた。


「その後、調子はどうだい」


 その後ってのは、俺の引きこもり事件の後ってことだろうか。

 それなら別段大したことはない。

 ただ、


「挑戦者が多くて困ってる」

「ははは、それも最強の仕事だよ

 頑張ってくれたまえ」


 誰のせいでこうなったと思ってんだ。

 笑ってばっかのあなたのせいですよ?

 まぁいいんだけどね。


「それで、本題はなんだよ」


 そう、俺が今気になっているのは本題だ。

 調子はどうだとか、話の前フリにすぎない。


「他所の国の最強が、近いうち君の元にやってくるよ」


 神様は真面目な口調で、笑いながら言った。

 いや、彼にとっては真面目な顔なのかもしれない。


「どこの国からだ?」


 最強が来るというだけでは情報が少ない。

 もう少し情報が欲しい。

 情報が多ければ多いほど、俺は戦いやすくなる。


「それは言えない

 というより、僕からはこれ以上言えない」

「どうしてだ」


 理解ができない。

 どうして、教えてくれないんだ。

 俺は最強としては弱いのだ。

 情報量が乏しければ、俺は負けてしまう。

 すなわち、最悪死んでしまうということだ。


 神様が、遊び半分に情報を教えてくれないと言うのなら、俺はなんとしてでも聞き出す。


「最強同士の戦いは、国の強さを決めるものだ

 僕が君に情報を渡せば、国と僕の戦いになってしまう

 なにせ僕の未来予知は正確すぎるからね」


 彼は自嘲げにそう言って、自嘲げに笑った。


 確かに、彼の言う通りだ。

 未来を知っている奴の助言なんて聞いたら、それはもう俺の力ではないだろう。

 だと言うのなら、彼からの情報は聞くことはできない。


「あと、......」


 彼は言葉を続けた。


「君はこれからも、他の最強と戦うことがあるだろう

 でも、君が他国へ向かう必要は無い

 向こうから、勝手にやってくるだろうさ」


 神様のその言葉に、俺は「分かった」と短く返す。


「最強について、何か質問はあるかい?」


 最強についての質問、か......


「なぜ俺を最強に選んだんだ」


 俺のその質問に、神様は首を傾げた。


「君が最も強いからだよ?」


 そんな、当然だろみたいな感じて言われても困るんだが。


「俺は序列2位なんだぞ」

「そういえばそうだったね」


 彼は、忘れていたとでも言うような返答をした。

 いや、本当に忘れていたのかもしれない。


「俺は、ネオにも負けたんだぞ」

「っ!」


 俺がそう言った途端、彼は何かを思い出したかのように会話を止めた。


「これからは、誰かに負けたことを言ってはダメだ」

「どうしてだ?」


 何となく想像は着くが、一応聞いてみる。


「ただでさえ序列2位の君が、他国の最強以外に負けたなんて噂が広がれば、今まで以上に反感を買いかねない」

「......分かった」


 だろうな。

 概ね、想像通りだ。


 できるだけ、この事実は隠し続けるとしよう。

 どこまで隠しきれるかは分からないがな。

 バレないよう、努力するとしようじゃないか。


「てな訳だから、気を付けてね」


 俺の質問を捻じ曲げた神様は、笑いながら手を振ってどこかへ歩いて行った。

 瞬間移動が出来るのにも関わらず歩いてだ。


 特に深い意味がある訳でもないだろう。

 ただ歩きたかったから歩いただけ。

 あの神様は効率よりも気分で動くことが多そうだし、理由なく無駄な行動をするのも別に変なことでもない。

 実際、俺もまったく気にしていないしな。

 どうでもいいことだ。



 ---



 神様と別れてすぐ。

 俺は部室へと急いだ。

 できるだけ人目を避けて。


 理由は簡単、次の挑戦者に会わないようにするためだ。

 それも最強に課された任務であるから挑戦者が来るのは仕方ないのだが、やはり面倒臭い。

 俺は早く部活がしたいんだ。



 てな訳で急いだ結果、俺は誰にも会わずに部活へとたどり着き、待ちに待った雑談を楽しんでいる。

 楽しんでいたのだが......


 何やら遠くから声が聞こえてきた。

 無論、遠くからの声はいつでも聞こえている。

 学校は、そんなに静かな場所じゃない。


 だがその声は少し違った。

 聞いたことのあるその声は、徐々にこちらへと寄ってくるのだ。

 厄介事を持って来そうな声だ。

 というより、声の主自体が厄介事だ。


「師匠ぉ!」


 そんな声。

 その『師匠』ってのが誰のことを指しているのかは分からない。

 が、もしそれが俺のことを指しているのであれば、俺のことを師匠と呼ぶ人物は1人しか思い当たらない。

 それでもって、遠くからでも大声で叫びつつ駆け寄ってくる非常識さ。

 これはもう確定したようなものだ。


「師匠!」


 能力研究部の扉を勢いよく開け、キラキラした顔でそう言ったのは自称俺の弟子、三上珀だ。


「師匠って呼ぶな......」


 俺はそう言いつつ、心中で面倒なのが来たと愚痴を吐いた。

 決して口には出さない。

 顔には出ていたかもしれないが。


「嫌ッすね

 俺は師匠のことを師匠と呼び続けるっす」


 元気いっぱいヤンチャボーイさんは、今日も元気いっぱいのようだ。


 ちなみに、俺が師匠と呼ばれることを嫌っているのは、俺が師匠とはほど遠い存在であるからだ。


 俺が知っている師匠は、飴と鞭の使い分けが上手く、教えるのも上手い。

 それでいて全てを細かく教えてくれる。


 俺にとってはそれが師匠だ。

 俺はそんなことできない。

 こんな俺が師匠なんて呼ばれたら、俺の中の師匠象が崩れかねない。


 だから、師匠とは呼ばないで欲しいのだ。

 それをこいつは師匠師匠と......


「っ!」


 そんな感じで、俺が心の中でぶつくさ言っていると、三上は俺を見て息を飲み、目を見開いた。

 否、正確には俺の隣。

 俺と妙に距離の近い穂香を見て、だ。


「天使だ......」


 三上は静かに、誰にも聞こえないようにそう呟いた。

 実際、耳のいい俺以外には聞こえていないだろう。


 そう言葉を漏らした三上は、ゆっくりと穂香に近づいた。

 何かしでかすんじゃないかと心配していたが、お触りは無かった。

 そして穂香の目の前まで近づいた後、三上は『バッ』と膝まづいた。


 それを受けて、穂香は困惑の表情を浮かべる。

 心なしか、怖がっているようにも見える。


「俺と、付き合ってくれっ!」


 一目ぼれというやつだろうか。

 いや、違うだろう。


 彼女はこの学校では清楚系美少女と有名である。

 三上は前前から彼女のことを知っていて、思いを寄せていたのだろう。

 それが今ここまで近づき、ここぞとばかりのアプローチなのだろう。


「えっ......

 嫌です......」


 だが、穂香は三上のアタックに恐怖を覚えた。

 すぅっと、俺の後ろに隠れた。


 おい三上、お前だいぶ怖がられてるぞ。

 穂香、凄い体震わせているもん。

 お前、こいつに何したんだよ。


 だが三上は諦めない。

 とてつもないメンタルだ。

 俺はここまで拒絶されればトラウマもんだろう。


「じゃぁ、友達に!」


 三上はバッと顔を上げて言った。


「私、貴方の事あまり知りませんし......」


 どうやら友達になるのも嫌らしい。

 ホントお前、何したんだよ。


 でもまぁ、穂香の気持ちも分かる。

 こんなにオラオラ系の厳つい奴に、突然付き合えなんて言われたら怖いだろう。

 ただでさえ三上は『破壊神』という物騒な異名で有名なのだ。

 恐怖を感じるのも当然と言えよう。


 いよいよ悉く拒否された三上は、震えながら俺を見る。

 彼の震えは、穂香のものとは違うだろう。


「師匠......

 まさか、明蓮寺ちゃんと......」


 付き合っているとでも思っているのだろうか。


「違う」


 俺の言葉に悲しんだのは穂香だ。

 俺の後ろで、少し寂しそうな気配を感じる。


 悪いな穂香。

 でも俺は、お前が嫌いなわけではないんだぞ。

 むしろ好きに近い感情を抱いているよ。


「でも好きなんすよね!」

「嫌いじゃないな」


 俺の嫌いじゃないに対し、穂香から感じる雰囲気が少し明るくなった。

 それでいいのか?

 まぁ、彼女がいいのならいいだろう。


 そんな穂香に対し、三上はどうやら慌てた様子だ。

 どうしてお前が慌ててるんだよ。


「それだけ近づかれて好きにならないなんて、師匠はホモなんすか!」

「ちげぇよ!」


 俺はホモじゃない。

 変な疑いをぶつけてくるんじゃない。


 そんな失礼なことを言った三上はふと、小夏を見た。

 その後、なぜか納得のいったような顔をした。


「あっ」


 何に気づいたのだろうか。


「ロリコンなんすね!」


 こいつ、とんでもないことを口走りやがった。

 俺の全身から、血の気が引くのを感じる。


 俺だけじゃない。

 うちの部員全員の血の気が引いた。

 ただ1人を除いて。


「いやぁ、先輩がロリコンなら説明がつくっすよね

 明蓮寺ちゃんは、幼くは見えないっすもん」


 やめろ三上。

 これ以上罪を重ねるな。


「ん?

 なんすか?」


 俺が三上に哀れみの視線を送っていると、彼はそんなことを言った。


 お前、まだ気づいていないのか。

 すぐ後ろに迫っている恐怖に。


「あなた、今私を見てなんて言ったの?」


 小夏の低い声は、俺たちの身を震わせた。

 だが、どうやら三上は例外であるようだ。


「何って、ロリっつったんだよ

 お前の見た目、ロリそのもんだろ」


 こいつ、鈍感を通り越してバカなのかもしれない。

 いやまぁ、賢くはないと思っていたが。


「着いてきなさい」


 その声は低いと言うより、落ち着いている。

 落ち着いて怒っている。

 抑えているのであろう殺気が、溢れ出してすごいことになっている。


 だと言うのに三上は、殺気なんて感じていないように余裕綽々である。

 いや、実際に感じていないのかもしれない。


 こいつはこれまで、殺意を送ることしかしてこなかったせいで人からの殺気を受信しにくいのかもしれない。


 そんなことより、小夏の目が死んでいる。

 光が通っていない。

 怖い。怖いよお姉様。


「やだね

 俺には今お子ちゃまに付き合っている暇は......

 いでででで!」


 三上は耳を引っ張られ、部室の外へと連れ出された。

 痛そうだ。

 あれ、耳が伸びちゃうんじゃないか?

 エルフみたいにならなければいいな。

 俺も祈っておいてやるよ。


 ご愁傷さまです。

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