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第一話 ミルクコーヒーと珈琲牛乳

「申し訳・・・ございませんでしたー!」


青紫の髪を気にせずクーリエは勢いよく九十度に腰を折った。


その目の前では、生徒会長デレゲが革張りの重役椅子にふんぞり返っている。

次代の勇者候補と言われる人物。

そして、今この瞬間に限って言えば、とても機嫌が悪い男だ。

原因は単純だった。

クーリエが買ってきた飲み物が気に入らなかったのである。

机の上には可愛らしい文字で『いちごみるく❤️』と書かれた紙パックが置かれていた。


「何故、この僕、そう、この僕が!このような下賎で卑猥な飲み物を飲むと思ったのだ!」


デレゲは頭を下げ続けるクーリエに唾を飛ばしながら怒鳴る。


「でも・・・いつものミルクコーヒーが」


「僕はミルクは嫌いだといっているだろう!僕がいつも頼んでいるのは珈琲牛乳であってミルクではない!」


「は、はあ・・・」


納得のいかないクーリエは困惑した顔をあげる。デレゲはいちごみるく❤️を手にとり、それをクーリエに放った。反射的にキャッチするクーリエを忌々しげににらみながらデレゲは紅茶のカップを手にとった。


「これだから無能は嫌いなのだ!生徒会結成に学園長が口を出してこなければこんな「伝令」役など入れなかったものを・・・」


カップが赤い光に包まれたかと思うと紅茶が沸騰する。さらさらとした髪を後ろで高いポニーテールに結んだ美女がデレゲのそばによる。副会長アミレーゼ。その美しく優美な見た目から学園三大美女、そして付合いたいランキングのトップを飾っている。・・・一応、クーリエも三大美女には数えられている。後者のランキングは、圏外だが。


「さすがデレゲ様!こんなにも簡単に紅茶を沸騰させてしまうだなんて!でも、怒らないでくださいな。貴方様の良さが失われてしまいますわぁ」


「ふん。どうせ、こんな女クーリエにこの僕の良さが伝わるわけないだろう」


それを聞き、新しい紅茶を用意するためにお湯を沸かし、茶葉を準備していたクーリエは目を伏せた。それを見て、満足気に頷くデレゲ。


(この女・・・。学園長が生徒会役員に、と押されたことで調子に乗っていたのだろう。ふっ、この世界で一番優秀で最強な僕が!そんな自信、砕ききってやる!)


アミレーゼはデレゲを見つめてほうと息をつく。そしてクーリエを睨みつけた。


(もう!本当に嫌だわぁ。クーリエ、だったかしら?デレゲ様の邪魔ばかりして!こんなにも魅力的で素敵な殿方はこの世の中に二人といないわぁ❤️)


生徒会の中でのクーリエの評判はすこぶる悪かった。勇者パーティーとしてそんな存在に気を回すことはできないのだ。クーリエは珈琲牛乳について語るデレゲを思い返していた。


「クスッ」


「何が面白い!」


「あっ。申し訳ございません」


クーリエは慌てて口元を引き締める。笑ってはいけない、笑ってはいけないと自分自身に言い聞かせた。アミレーゼがデレゲを指でなぞる。


「もおぉ。デレゲ様ぁ〜。こんな女放っておいて森、行きましょう?」


「そうだな。行こうか、アミレーゼ」


デレゲは立ち上がり、アミレーゼに手を差し伸べる。その手をとってアミレーゼはちらりともクーリエを見ずそのままバタンと音を立てて出ていく。クーリエは一人になった。


「はぁ〜。面倒くさ!何なの?!あの、デレゲ小僧!珈琲牛乳とミルクコーヒーに違いなんてほとんどないでしょ!もぉー!」


クーリエは沸騰したお湯をダンッ!と机に置いた。そして高級茶葉の缶を手に取る。赤い靄がクーリエの周りでふわふわとしている。


「どうせ、デレゲもアミレーゼも他の役員たちもしばらく帰って来ないだろうし、一服しますか〜!」


ポコポコと音を立ててお湯をカップに注いでいく。湯気とともに柑橘系の香りが広がる。視界がデレゲに放られてそのまま机に置きっぱなしにしていた「いちごみるく❤️」を捉えた。


「これは・・・もったいないし、私がオヤツにもらっちゃおうかな?美味しいのに」

いちごみるく❤️を手にとって「ムフフ」と笑った。そしてコクリと紅茶を一口。

「はぁ。デレゲとアミレーゼがデートに出かけたこと、学園長に報告しなくちゃ」


また一口。強張った体が解れて、ソファーの背もたれに背中を預ける。と思い立ったように立ち上がって茶器などを片付ける戸棚まで行って中を探し始めた。


「・・・この前人気店のお茶菓子を買ったんだった!今日こそ食べるべき日だよね!・・・あれ?どこやったっけ?・・・あっ!あったあった!」


綺麗にラッピングされたシフォンケーキを見つけ出しそれをカットしてパクッと食べた!さらに!紅茶にお砂糖を・・・1、2、3、4杯!


「あの人達、本当にもったいないことするよね〜。パクっ!このお菓子も、もぐもぐ。今日で賞味期限切れるのに・・・。ゴグゴグぷはぁ~!おいしー!」


パクパクもぐもぐごっくんゴクゴク。スイスイとシフォンケーキがクーリエの口の中に吸い込まれていった。


「やっぱ、自腹で買わされたお菓子ってサイコーだわ!しあわせ〜・・・あれ?」


いつの間にか一口しか残っていないシフォンケーキのお皿を見る。クーリエのがさぁと青ざめる。


「あれ?あれれ?ま、まさか!泥棒?!」


クーリエは口の周りのシフォンケーキのかすをぺろりと舐め取った。そして軽やかにパクッ!と残りのシフォンケーキを食べる。


「もう!しょうがないなぁ。泥棒も美味しいもの食べたいもんね!それが自分の口だったとしても食べたいもんね!私は悪くなーい!」


あまぁ〜い紅茶を飲み干してクーリエは、


「ああ、おいしかったぁー!・・・さて、学園長のとこ、行くか。さぁ!動き始めるまで、3!2!1!GO!」


そのおもたぁ〜い腰を上げてちゃちゃっとカップを洗って、お皿を洗う。そして、いちごみるく❤️を片手に軽やかな足取りで生徒会室を出ていった。


クーリエはいちごみるく❤️に紙ストローを挿して飲みながら綺麗に掃除された廊下を歩く。いつの間にか腕には提出期限切れの書類、ファンレターが進むにつれて抱えられる。


「おい、パシリ!この資料を学園長に渡しておけ!」


「あら、生徒会の恥が歩いているわ。そうだ、伝言を頼めるかしら?わたくし、デレゲ様に、気持ちをお伝えしたいの!東屋で待っている、と伝言して頂戴!」


「えっ!ついに伝えちゃうの?頑張って!応援してるからね!」


「ならなら!私のお願いも聞いてくれるよね?このお手紙をアミレーゼ様に渡してくださらない?あんなに素敵で女性らしくて、キラキラと輝いてい・・・」


「あっ。はい。いいですよ、え?あ、デレゲ・・・様が好きなんですか。そうですか。あんなクズ・・・失礼しました。人の好みは星の数ほどありますからね」


ちょっぴり本音を漏らしながらも仕事をとりあえず引き受けて階段を上がっていく。学園長室の前についた頃には腕にたくさんの書類や封筒があった。荷物を落としたくないので足で・・・と足をあげかけて下す。そして肘を使ってノックした。


「はふぃれ(入れ)」

1話を読んでくださり、ありがとうございます!ブックマークやリアクションなどで応援してくださると嬉しいです!


次回:魔物?!・・・美味しそう!

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