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聞こえる音 感じるもの  作者: 近江 仙
2/6

大きな木

 

「この木の葉っぱが全て落ちたら…とか考えそうな木だよね。」

 病室の窓からちょうど見える大きな木を見て、姉は笑った。


「物騒なことを言わないで。入院しているのは私なんだからね」

 死を連想させることを言う姉に、私は抗議した。

 勿論、お互いに本気じゃない。雑談の延長線上だ。


 今、病室には私と姉がいる。

 入院している私の見舞いに姉が来てくれたのだ。

 ベッドに座る私と、ベッドの横に置いた椅子に座る姉。

 姉が見ているのは、大きな木と私を交互に見てる。


 私の部屋の窓からは、大きな木が見える。


 山の中にある小さな町の病院であるが、窓から見えるのは不思議とその大きな木が一本だ。

 枝が立派で、もちろん葉っぱは、もさりと繁っている。


「でも、本当に立派な木だね。…あの枝からこの窓に飛び移れそう。」


「確かに…そうだよね。」

 私は窓の外にある木を見た。


 姉の言った通り、木の枝は太い。

 位置的にも、登れば窓と高さが丁度合う。


「彼氏とか、登ってもらえば?」


「うるさいって!!」


 考えていると姉の冷やかすような声が聞こえて、揶揄っているとわかり、思わず声を荒げた。


「えー。何か無いの?病院で出会いとか…って、無いよね。」

 姉は聞きかけて直ぐに否定した。


 そうだ、姉の言う通りこの病院での出会いなんて期待できないのだ。


「木の枝から…ロミオ、ロミオって…ちょっとロマンチックでしょ?」

 姉は手を広げ、演技のようにわざとらしく言った。


「どっちがロミオなの?それ」


「…あ」

 姉は自分の言ったことに気付いたのか、目を丸くした。

 私と姉は顔を見合わせて同時に吹き出した。


 カサカサ…と


 私たちの笑い声に応えるように気が揺れているように見えたのは、気のせいだ。


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