第42話 妹、兄のために学校を“リアルRPG”化
朝の学園――
校門をくぐった城ヶ崎春は、思わず目を疑った。
「……看板、“如月学園”じゃなくて“ギルド本部”になってるんだが?」
校舎はツタの絡んだ石造りに変貌。廊下の壁には“魔物注意”と書かれた紙がベタベタ貼られていた。
「……また妹がなんかやったんだな?」
そう。この日は“兄さん感謝ウィーク”特別企画、妹・城ヶ崎結衣による【兄専用リアルRPGごっこ】の日だった。
⸻
「うわぁああ!? なんで通学路にスライム(着ぐるみ)が!? てか『話す』ってコマンド出てるんだけど!?」
春の目の前に現れたのは、しゃべるスライム(演:科学部部長)。
「冒険者さん! この世界を救ってください!」
「いや俺、通学してるだけだから!!」
廊下を歩くと、女子がバタバタと集まってくる。
「兄さん! 村が魔王軍に襲われています!」
「兄さん! 装備が足りません!」
「兄さん! 愛してます!」
「何のクエストだそれ!?」
⸻
春が教室にたどり着くと、そこはもう教室ではなかった。
「なんだこの内装……? テント? キャンプ風? てか黒板が“ステータス画面”に改造されてる……」
机の上には“所持金:0G”“装備:制服(耐久3)”と書かれた紙。
「しょぼッ!! もうちょい装備くれよ!!」
⸻
放送が鳴る。
『勇者一行はただいま、姫を救出する旅に出ました』
春「え? 姫? そんなイベントあったのか?」
『姫の居場所:理科室の塔』
春「ふーん、俺には関係な――」
『なお、姫=城ヶ崎春様です』
春「なんで俺がヒロインゥゥゥ!!?」
⸻
強制的に連れて行かれた理科室の“塔”では、白いドレス(結衣監修)を着せられる春。
結衣「兄さん、可愛い♡」
春「俺の自尊心がリアルタイムで崩壊していってるんだけどォ!?」
凛「春様……その姿、美しすぎて魔物が改心しそうです……」
梓「……くだらない茶番だな。だがこの世界、なぜか本当に魔力を感じる……」
春「世界観に入り込むのやめて! 戻ってきて、現実に!」
⸻
体育館が“魔王城”に変貌していた。
黒いマント姿の梓、生徒会を引き連れて演説する。
「我こそは魔王アズ=クリシマ。全ての妹信仰を討ち滅ぼす存在!」
観客(という名の全校生徒):『おおおおおお!!』
春(もう誰が悪役で誰が正気か分からん……!)
結衣「兄さんを守るため、我が勇者軍はこの魔王を倒すのです!」
凛「春様、必ず救い出しますッ!」
春「だから俺、救われる立場じゃなくていいから!!」
⸻
“兄姫”ポジションの春が吊られている(※理科室の天井から)。
ステージ中央では凛と梓が激突。
凛「これが私のスキル、“兄様アブソリュート・ラブシュート”!」
梓「ふざけんな!! 私は負けん!! “ツンデレ・エクスプロージョン”!!」
――爆発
春「誰かこの茶番を止めてくれ!!!」
そして結衣が静かに歩み出た。
「……この世界を創ったのは、私。兄さんを笑顔にしたくて、頑張ったの」
「気持ちは嬉しい! でも! この演出のせいで! 笑顔になれねぇぇぇぇ!!」
「じゃあ、もう一度、世界を作り直すよ♡」
「おいやめろ!!神様みたいなセリフ言うなァァァ!!」
⸻
放課後。
元に戻った教室で、制服に着替え直した春はぼーっと窓の外を見ていた。
春「……なんだったんだ今日……俺、何回着替えさせられた……?」
凛「春様、今日は本当に麗しかったです♡」
梓「……寝込みを襲う気力も、今はない」
結衣「兄さん、明日は“兄さん×動物着ぐるみフェス”だよ♡」
春「誰か俺をこのRPGからログアウトさせてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」




