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第34話 会長、お詫び会やりすぎ問題

如月学園 生徒会室。


朝のミーティング中、机の上には美しく束ねられた金色の封筒が置かれていた。


「……で、これは何?」

梓は眉をひそめる。凛は既に開封済みらしく、横で軽くため息をついた。


「それは、城ヶ崎結衣様からのお詫び会のご案内です」


「“お詫び会”? なにそれ新ジャンル?」


凛が無言で案内状を差し出す。そこには――



【結衣復帰記念】

“お詫びと感謝とちょっとだけ兄補給の会” 開催のお知らせ

日時:本日放課後

会場:結衣の独断で改装した生徒会室(!)

内容:甘味・兄様・謝罪・感謝

ドレスコード:可愛いもの好きな心



「内容がうっすら狂ってる……!」


「むしろ濃密に狂っています、会長」



放課後。

生徒会室のドアを開けると、そこには――


「ようこそ、お詫び会へ♡」


主役・城ヶ崎結衣が、ドレス姿で待ち構えていた。


白いレースに銀糸の刺繍。

髪には小さな花飾り。

肌の白さがさらに際立ち、まるで本物のプリンセス。

……ただし、背景にはなぜか兄・春の等身大パネルが大量に並んでいる。


梓「この空間がすでに間違ってる!!」

凛「パネルがこちらを見つめています……」

結衣「これ、全部“春様ver.”だよ♡ セリフもカスタマイズ済み♪」

パネル『君のこと、ちゃんと見てるよ』(音声付き)


梓「誰が望んだカスタマイズよぉぉぉ!?」



着席すると、目の前には立派なティーセットと――


「“結衣様の愛情で炊いた炊飯器プリン”……だと?」


器に山盛りのプリン。

一見美味しそうだが、サイズがどう考えても業務用炊飯器基準。


結衣「この中に“兄成分”がつまってるの!」

梓「何それ!?」

凛「どういったルートで抽出された成分ですか?」

結衣「昨日、春様が“プリンはカラメル多めが好き”って言ってたから、そこに注力した!」

梓「せめて具体的にしてくれ!!怖い!!」



会の本題――**「お詫び」**に入る。


結衣「結衣が風邪で休んでる間、二人ともがんばってくれたって聞いて……感謝とお詫びを込めて!」


凛「恐縮です。春様からも“今日は静かだった”と伺っております」

結衣「それが一番つらかった!!!」

梓「じゃあもっと静かにしてくれない!?」

結衣「できない♡」


結衣は、テーブルの下から“本日のお詫びアイテム”を取り出した。

•梓用:超高級ペンセット(名前刻印入り)

•凛用:春様AIスケジュール連動メモ帳(常に兄の動向を表示)


梓「ありがとう。でも複雑……」

凛「ありがとうございます。春様の出席確認が3秒短縮されます」

梓「便利だけど怖いよ副会長!!」



そして、会の締めに――


結衣「このあと、兄様動画鑑賞タイムだから!」

梓「締めも兄か!!」

凛「すでに10TBのデータが準備されております」

梓「データ量っっ!!」


結局、生徒会室は結衣のペースに巻き込まれ、

気づけば全員プリンを完食し、謎に満足していた。


 



その夜、春のスマホにはこんな通知が届いた。


【結衣様AI】

『本日、無断で等身大パネルの表情を笑顔に変更しました』

『春様は、いつでも笑顔が一番♡』


春「やめろぉぉぉぉぉ!!」


翌日。

梓と凛は、昨日のお詫び会の余韻に若干の疲労感を覚えながら、生徒会室に到着した。


扉を開けると――


「おはようございますっ!」


笑顔の結衣が、白衣姿で迎え撃ってきた。


梓「いや待って! なんで医者コスプレ!?」

結衣「だって昨日、春様が“最近ちょっと疲れてるかも”って言ってたの……」

凛「まさかとは思いますが、“診察ごっこ”ですか?」

結衣「その通りっ♡ というわけで今日は――“兄様診察計画”!!」

梓「もう“お詫び会”関係なくなってるよね!?」



さっそくモニターに表示される“春様・診察カルテ(仮)”。

血圧・心拍・眠気指数・癒し成分の摂取履歴――


結衣「ほらこれ見て! 春様、昨日の夜はおにぎり2個とプリンしか食べてない!」

梓「なぜそんなに正確に!? 監視してる!? してるな!?」

凛「春様のスマート冷蔵庫に結衣様が仕込んだ“栄養監視AI”のデータと一致します」

梓「何のシステム構築してんのよ!!」



そして次は“兄様の笑顔強化計画”。

結衣が準備したのは――笑顔反射トレーニングマシン・YUItype-R。


結衣「春様が笑顔になるきっかけを、全パターンで再現できる装置だよ♪」

梓「マシン作るな!!」

凛「試運転時、私が真顔すぎて反応がゼロでした」

梓「そういう問題でもない!」


モニターには、

・兄の好きな紅茶を差し出す妹モード

・“おかえり”の一言だけで心を溶かす妹モード

・黙って見守る静かな妹モード(※レア)

が順に再生される。


結衣「これを再現すれば、春様の笑顔が99.8%確率で引き出せるの!」

梓「0.2%のリスクが気になるわ」

凛「なお、残りの0.2%は“兄の胃腸不調時”との相関が確認されています」

梓「医療用語レベルの分析やめてくれ!!」



午後、ようやく落ち着いたと思いきや――

結衣がふいに、真剣な顔で語りだす。


「ねぇ、二人とも……本当は、昨日のこと……ちょっとだけ、寂しかったの」


梓と凛は視線を交わす。


結衣は、普段と違う静かな声で続けた。


「だって、結衣がいなくても、生徒会って……ちゃんと回ってたでしょ?」


「……うん。正直、静かで助かったわ」

「しかし同時に、“足りない”と感じたのも事実です」

「……そっか」


結衣が微笑む。


「じゃあ、これからも結衣は――うるさくて、やりすぎで、兄様バカなままで、いい?」


梓はふっと笑って、凛も小さくうなずいた。


「それが結衣でしょ」

「結衣様が結衣様であることが、生徒会の個性です」

「ありがとっ!」



その日の生徒会室。

お詫び会の名残はまだ残っていたが、

結衣がいて、梓と凛がいて――


そこには、ちょっと騒がしくて、でも心地よい日常が戻っていた。


結衣「さーて! 春様に渡す“兄専用リラックス毛布”の制作会、始めよっか♡」

梓「また始まったーー!!」

凛「なお、毛布には春様の香りデータが刺繍される予定です」

梓「刺繍で再現できる香りって何!?」


――そして、今日も如月学園の生徒会は、

結衣という“常識ブレイカー”のもとで、

とても賑やかに回っていた。


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