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第28話 女神と執事と風紀の女王

放課後の生徒会室。


梓「で?これは何のつもりかしら、城ヶ崎結衣」


椅子に優雅に座り、腕を組んだ霧島梓が冷たい視線を向ける先には、のんびりとお茶を淹れている結衣と、その隣で完璧に茶菓子を盛り付ける凛の姿が。


結衣「今日は“乙女の社交会”だよ、生徒会長。堅い顔してないで、はい、お茶どーぞ♡」


梓「ここは生徒会室なの。ティーパーティーを開く場所じゃないわ」


凛「しかし、結衣様は正規の副会長。会議が必要である以上、これは“打ち合わせ”の一種かと」


梓「お茶と焼き菓子で打ち合わせ?」


結衣「ちなみに焼き菓子は凛特製。某三ツ星シェフを2時間ほど説得して直伝のレシピを得たんだって。すごいよね〜♡」


梓(…本気でやってるのが怖いわ)


そして会議は、開始10分で「今日のカフェトレンドを語る会」に変わった。


梓「結局、何の議題もないじゃない」


結衣「あるよ。“学園での優雅なたしなみとは?”っていう今月のテーマに沿って話してるの」


梓「そんなテーマ、誰が決めたの」


結衣「わたし♡」


梓「……」


凛「議題資料はこちらにございます、生徒会長」


梓「用意されてるの!? 完璧なまでに無駄な資料が!?」


結衣「今日の議題は“女子力の高いお弁当のおかずランキング”だよ〜ん♡」


凛「一位:卵焼き(甘め)、二位:ミニトマト、三位:ブロッコリー、となっております」


梓「どこが生徒会の仕事なのよ!!」


結衣「生徒の幸せを守るのも、生徒会のおしごとだよ?」


凛「実際、今月の校内女子満足度調査では結衣様の提案した“おしゃれ弁当企画”が満足度92%という記録を出しています」


梓「くっ、データで来た……」


結衣「でね、生徒会長もぜひランキングに協力してほしいな〜と思って。梓ちゃんの好きなお弁当おかずってなに?」


梓「……梅干し」


結衣「しぶっ!!」


凛「渋くて素敵です」


結衣「っていうか、梓ちゃん、ほんとはこういうの嫌いじゃないでしょ? この前も、学食でスイーツフェアのチラシ、2分間見つめてたよね?」


梓「……見てただけよ。確認しただけ」


凛「ちなみに結衣様は15秒で突撃していました」


梓「フットワーク軽っ!」


結衣「えへへ〜、目に入ったら、買わなきゃ損じゃん?」


梓「……ほんと、あなたたちって自由すぎるわ」


結衣「じゃあ今度3人でスイーツ巡りしよ?」


梓「誰が行くって……」


凛「わたくし、先に店をピックアップしておきます」


梓「行く前提かーー!!」



結局その日、生徒会の議事録には「女子力とはなにかについて深い議論が交わされた」とだけ記され、生徒会長・霧島梓の心労ポイントは+7されたという。


昼下がりの生徒会室。静寂の中、書類を捌く音だけが響いていた。


「生徒会長、今月の予算案、確認をお願いします」


梓は凛に書類を差し出す。副会長となった凛は、すでに梓と対等に渡り合うほどの手腕を見せていた。


「確認しました。問題ありません。ただし――この備品費の内訳、『高級アイス試食費』って何ですか?」


「……城ヶ崎結衣さんの提案よ」


梓が静かに答える。そこへ現れる、件の本人――中学部から駆け上がるようにしてやってきた、天才中学生・城ヶ崎結衣。


「おまたせしましたー♡」


扉を勢いよく開けて、まるで自宅に帰ったかのような満面の笑顔で入ってきた結衣。手には高級アイスが三つ。


「ほら、生徒会って頭使うじゃない?糖分、大事。なのでわたし、研究と実益を兼ねて……このアイス、差し入れですっ!」


「……それは“研究”とは呼ばないと思いますが」


凛が呆れ顔で言うも、結衣は一切動じない。


「じゃ、実食開始~。感想は五段階評価でお願いね? あと梓さんはカロリー気にしそうだから半分こしよ♡」


「べ、別に私は……そんなこと……!」


梓の動揺に、凛が小さく笑う。


「……まあ、たまには甘いものも悪くありませんね」


三人は机を囲み、静かにアイスを食べ始めた。


――5分後。


「やっぱりこのピスタチオのやつ、香りと食感のバランスが完璧ですねっ!」


「わかる。濃厚なのに重くない……これはリピートしても飽きない類です」


「……っ! くっ……あなたたち……なぜそこまでアイスに情熱を……!」


気づけば、アイス試食会は本気のプレゼン大会になっていた。


結衣の目がキラリと光る。


「では! 次回の会議テーマは『学園スイーツ戦略会議』ということで♡」


「却下よ」


「早い!」


「ただ……学園祭でスイーツ企画を考えることは検討に値するわ。例年、女子受けのいいブースは成績も良好だし」


「さすが梓さん……!」


結衣が目を輝かせると、凛が不意に微笑む。


「でもその場合、予算の見直しが必要ですね。私が仕入れルートを調べます」


「おおっ、頼もしい……副会長!」


「なら、わたしが試食部門を担当しますね♡ ついで兄さんにも味見してもらって……むふふ……」


「その“ついで”が本命では……?」


「むっ、凛さん、バレてた!?」


「バレバレです」


そんなやりとりが飛び交う中、生徒会室の時計は静かに時を刻んでいった。


この日、学園最強の頭脳三人娘による「スイーツ企画会議」は――


まだ誰も知らぬ、伝説の始まりであった。


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