第24話 完璧ふたり組、ちょっとだけ隙を見せる日
放課後。学園の教室に、結衣と凛の姿があった。教室内には誰もおらず、陽が差し込む中、ふたりだけの静かな時間。
「凛、今日もありがと。あの副会長の仕事、完璧だったよ」
「当然です、お嬢様……いえ、結衣様」
「そこは“結衣ちゃん”でって言ってるじゃん、もう!」
「はい、結衣様」
「……絶対わざとでしょ」
「バレましたか」
結衣はふふっと笑う。凛はその表情を見て少しだけ口元を緩めた。学園では完璧副会長として通っている橘花凛だが、結衣の前ではどこか柔らかい。
「ね、今日はどこか寄ってかない? 兄さん、塾だし」
「よろしければ、例の高級スーパーにご一緒しますか? トリュフの特売日です」
「トリュフって、庶民派女子中学生には縁がないんだけど……」
「私は結衣様に相応しい食卓を整える義務がありますので。では、試食コーナーを制圧しましょう」
「やめて、何かの作戦名みたいに言うの!」
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【スーパー・試食コーナー】
「このチーズ、試食できますよ~」
「凛、落ち着いて。トング、トング離して、何で全部取るの!?」
「量を均等に確認するためです」
「説明になってないよね!?」
結衣は苦笑しつつ、凛の前に立って試食皿をガードする。ふたりのやり取りに、スーパーの店員が苦笑い。
「あのふたり……姉妹?」
「違うと思うけど、息ぴったりよね」
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【城ヶ崎家・夕方】
帰宅したふたりは、キッチンで夕食の準備を始める。
「トリュフ入りオムレツです。黄金比で焼きました」
「兄さん、今日いないのに何で気合い入れたの?」
「予行演習です。“お兄様に完璧な食事を出す”その日までに、私はミスをゼロにします」
「……この子、完璧だけど方向が時々おかしいのよね」
結衣はそう呟きながらも、凛の手料理をぱくっと一口。
「ん、美味しい!」
「ありがとうございます。では、私も……」
凛が自分で作ったオムレツを試食しようとしたその時、唐突に何かが落ちた音。
「凛、何の音?」
「……すみません、フォークを落としました」
「あの凛がフォークを!?」
「これは試練です。“落とさずとも、拾う心を忘れない”という教えですね」
「負けず嫌いなだけでしょ!」
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【夜】
ふたりはソファに座り、紅茶を片手にひと息つく。
結衣がぽつりと呟く。
「ね、凛はどうして私のとこに来てくれたの?」
凛は少しだけ目を細めた。
「……覚えていますか、あの日のこと」
「もちろん。私が“超合理的なスカウト”した日ね」
「“この学園を買収して支配したい。協力者、探してるの”って言われたときは、本気で頭のネジの心配をしました」
「なんで笑ってるの!」
「でも、興味が湧きました。完璧を目指してきた私の前に、もっと無茶な“完璧”を言い出したあなたがいて……それが、とても羨ましかったんです」
結衣は少し驚いた顔で凛を見つめる。
「ふふ、凛でもそんなこと言うんだ」
「今日は少しだけ隙を見せる日ですから」
「じゃあ、たまには私も甘えていいかな」
「もちろん、何なりと」
「じゃあさ……明日のお弁当、私が作ってもいい?」
「……」
「何その顔!」
「……食べられるものなら、ですが」
「そこは信じてよぉぉ!」
ふたりの声がリビングに響く。
完璧なふたりの、ちょっとだけ隙のある優しい夜だった。




